OCAの評価アラカルト(山口県立光丘高等学校英語科)

1.本校の指導体制について
 平成6年度より、本校ではOCAを第1学年で実施している。OCAの指導を効果的なものにするためにとっている指導体制の特徴は、次のようなものである。
(1)1つのクラス(40人)を2つに分け、20人ずつの少人数クラスで実施している。1学年は6クラスなので、OCAの講座数は12講座になる。
(2)複数の教師で複数の講座を持っているため、指導案や教材を共有化している。ALTを中心に教科書だけでは不足しがちな活動について、補助教材等(ゲーム、ペアワーク、ロールプレイなど)を作成し、授業中の言語活動を活発にするよう心がけている。そのため、週に1度、担当者が集まり、教材やその扱いについてのミーティングを行っている。
(3)評価については、各学期末考査で実施する筆記試験(年3回)、各考査(中間、期末)の前に実施するALTによる面接試験(年5回)、さらに平素の授業中の活動に対する平常点の3つを合わせて、総合的に評価している。その割合は、筆記試験6割、面接試験2割、平常点2割である。
 本校は「OCAの評価アラカルト」ということで、(3)の評価について、平成7年度に実施したものを示しながら、できるだけ具体的に述べていこうと思う。

2.筆記試験
 試験問題そのものは100点満点で作成している。そのうちlistening comprehention が30点程度、残り70点が運用力、表現力等をみる問題である。時間的には、試験時間50分中の始めの10〜15分程度をlistening comprehention にあてている。
 試験は常に、「開始5分後に一斉に放送が流れるので、それまで問題をよく読んで解答の準備をしなさい」という指示から始めている。当然、放送でも設問については日本語で指示するが、問題用紙にも指示を印刷しておき、それを放送の前に読ませることによって、生徒達の緊張をほぐす。また、これから放送される設問について、自分である程度予測させ、「聞くこと」に集中させる。また、解答方法も、できるだけ簡潔で分かりやすいものを、と心がけている。
 次に運用力、表現力等を見る問題も、文字以外の情報(絵や写真、図表など)を適宜いれたり、会話の行われている状況をできるだけ明確にして作成するようにしている。
 自己表現力をみる問題も作成している。そのような問題においては、内容を優先し、綴りの間違いについてはあまり減点の対象とはしない。その他の記述的な解答を要求する問題では、問題を作成する段階で、できるだけ高校1年生が知っているべき語彙の範囲内で答えられるものにしようと配慮している。

3.面接試験
 240人の生徒に対して面接試験を実施するためにとっている方法は、次のようなものである。
 ・各考査(中間、期末考査)の直前の1週間の授業時間内で実施する。1日平均3講座の生徒が受験する。特定の講座がいつも早かったり、また逆にいつも遅かったりすることがないよう、時間割には気を配っている。
 ・1人のALTが、自分の持ち点(20点)の中で評価する。1学期、2学期については中間、期末の2回ずつ実施するので、各10点満点となる。学年末については20点満点とする。
 ・試験の始まる2週間ほど前に、試験内容と試験日時を公表する。試験内容は、ほとんど授業で扱った活動の延長である。
 ・面接試験用の部屋を確保している。隣り合った2つの教室で、1つは試験場所、もう1つは生徒の待機場所である。
 ・4人ずつの生徒の名前と写真が貼ってある面接試験用の評価票を使用する。グループやペアで試験を使用することが多いので、混乱を避けるために、JTE側で作成し、ALTに試験の前に渡す。
 平成7年度に実施した面接の内容は下記のとおりである。
 (1)グループ面接
 (2)スピーチ(自己紹介)
 (3)Potluck Party のロールプレイ
 (4)電話での会話(個人面接)
 (5)ファーストフード店での客と店員の会話
 以下は、その詳細である。
(1)グループ面接
 1学期の最初の面接試験と、学年末の2回実施した。いずれも4人1組で入室させた。授業中にペアワークやグループワークで十分に練習させた機能表現や言い回しが定着しているかどうかをみた。
 最初の面接試験では、ALTが生徒に一方的に質問し、生徒はそれに答える、という形をとった。授業で扱った「紹介」や「出身」「趣味」「性格」「家族」などを話題とした。質問は各グループ5〜6問だった。評価票を見ながら、ALTが生徒の1人に質問をし、その生徒が答えた後、他の生徒にも同じ問を発する。ALTは、特定の生徒が常に最初に答えることがないよう、適当に指名する順番を変えた。時間的には、1グループ10分程度だった。
 学年末では、生徒からの質問を、1人1問ずつ用意させた。グループ内で同じ質問をしないよう、事前にグループで話し合って準備させた。生徒→ALTの会話が終わった後、時間の許す限り、ALT→生徒の会話が行われた。試験が終了したグループには、自分がした質問とそれに対するALTの答えを日本語で書いて提出させた。
 1学期の最初の面接試験では、生徒が緊張してしまい、ALTがにこやかに"Nice to meet you." と話しかけても、ふるえるような声で"Nice to meet you, too."と答えるのが精一杯という光景が見られた。しかし、学年末ともなると、生徒もALTもかなりリラックスしていたようで、楽しそうな笑い声が試験場から漏れてきたのが印象的だった。
(2)スピーチ
 授業中に書かせた自己紹介のスピーチを、クラスの前で発表させた。スピーチ後、ALTに、内容に関して1〜2の質問をしてもらった。スピーチとその質疑応答ぶりをALTが評価したが、どの生徒もよくできていたように思う。スピーチがあまり長くなかったため、1人2分程度で実施できた。
(3)Potluck Party のロールプレイ
 使用教科書の中にPotluck Party について扱った課があり、それに関連した表現(招かれた客が到着して、ホストと玄関先で交わす会話、遅れた場合の表現、食事をすすめる、料理について尋ねたり答えたりする、料理をほめる、別れるときの挨拶の表現等)を使って、授業中にグループそれぞれのシナリオを作らせて、練習させた。JTEが用意したシナリオの枠の空欄に、生徒はそれぞれの状況で使うことができる表現(ALTが複数用意し、生徒に配付)から自分たちの好きなものを選んで、会話をすすめるのである。4人1組で1人はホスト、あとの3人は客で、そのうち1人は遅れてくるという設定だった。
 授業中に各グループで、どの役も十分練習させた。面接試験用には、新たな4人組のグループをくじを引かせて決め、そのグループ内でその役もできるようによく練習しておくよう指示しておいた。
 試験当日、試験教室に入室させる直前に、どの役をするか、再びくじを引かせる。そしてパーティーに持参する料理の写真(授業中にも使用)を選ばせ、パーティーを始める。試験教室はテーブルセッティングをし、雰囲気をだした。あまり練習していない生徒が一番発話の多いホストの役を引いてしまい、ALTのhelpを仰ぐこともあったり、会話の自然さという点では多少不満が残るが、1グループ6〜
7分もかかるロールプレイをどの生徒もよくやったと思う。ALTの評価点も高かった。
(4)電話での会話(個人面接)
 試験教室をスクリーンで仕切って相手の顔が見えないようにし、ALTと1対1で内線電話を使って会話させた。電話での挨拶表現から始め、双方の手元にある同一の地図や写真なども利用しながら会話を進めていく。当初1人2分程度で終わると考えていたが、初めての個人面接ということや、相手の顔が見えないことから生徒は緊張した。また、地図で道筋を指示する課題が難しかったため時間がかかった。しかし相手の顔が見えない電話でのコミュニケーションの難しさがわかり、生徒には良い経験だったと思われる。
(5)ファーストフード店での客と店員の会話
 学年末のグループ面接の前に、4人組の中の2人ずつを入室させ、その場で役割を与えた。授業中に"What do you recommend?" というtarget sentence を含んだ買い物をする時のdialogue を練習させたのだが、それを使わわせたのである。店員として何をすすめるか、また客として何をいくつ買うかは本人達がメニュー(5種類)を見て決める。買い物表現は1学期の既習事項であったこと、また、選んだりすすめたりする対象がメニューに載っている物に限定されていることから、生徒にとっては比較的容易だったようだ。グループ面接の前のwarming upとしては、適当であったと思う。

 1日3講座ずつ、1週間もかけて実施する本校の面接試験に対して、その評価の信頼性に疑問を感じる方もおられるだろう。本校の聡明なALTは、日程の早い生徒には比較的甘く、遅い生徒にはやや厳しく評価していたが、テストとしての厳密な信頼性について検討の余地があることは確かである。しかし、「面接試験」の形をとりながら、上に述べたようなさまざまなコミュニケーションの場面を生徒に与えることには、大きな意義があると思っている。20人の少人数であるとはいえ、生徒が授業中にALTと直接接する時間はわずかしかない。ALTが週2日しかおらず、TTは各講座で2週間に1回程度しか回ってこない本校の現状ではなおさらである。さまざまな状況で、自分(達)の英語力だけでコミュニケーションができたという体験は、OCAを学習する上での最高のmotivation の1つになりうるだろう。

4.平常点
 平常点は、主に、各課の終了後に実施する復習テストと授業中の活動の評価との2つからなっている。
 復習テストは、その課で扱った言語材料を用いたlistening や重要機能表現を問うものである。問題の漏洩を防ぐために担当者が個別に作成しているが、テスト問題は他の担当者にも目を通してもらい、担当者間でテストの難易の差がでないよう努力している。
 授業中の活動の評価は、主にペアワークやグループワークのdemonstrationについて行っている。平成7年度には手つかずの課題だったが、8年度においては、各課の評価項目(暗記、流暢さなど)について担当者間で合意をみた。しかし評価尺度(どのようにレベル分けし、何点与えるか)については未解決のままである。OCAの指導の最も根本的な部分だけに、早急に解決すべき問題であることには違いない。酒井(1996)は、教員が学校の同僚と、評価尺度を体得する研修会をもつことを提唱しているが、週に1回、教案及び教材のミーティングをするのが精一杯の現状では、荷が重すぎる感じがする。実施するには、せめて、核となる教員ーーー生徒の英語力を正しく評価するための専門的なトレーニングを受けた教員ーーーがいなければ無理であろう。近年、アルクや英検で評価者養成のワークショップや認定試験が実施されているようだが、学校現場でも、このような人材を育成するための研修の場が必要とされているのではないだろうか。
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 以上、OCAの評価について、本校の取り組みを紹介した。解決すべき問題点はまだまだあるが、学年当初、相手の目を見て握手しながら発話することもままならなかった生徒たちが、学年末には"Here you are." と自然にメニューを見せ、楽しそうにコミュニケーション活動をしている姿を見ると、本校の取り組みは一応の成果をあげているようだなあ、と実感する次第である。

<参考文献>
酒井志延 「「チョベリグ」評価法を求めて」 本誌1996年 12月号 

「英語教育」 1997年7月号 (大修館書店刊)掲載