<投稿>「話すこと」の指導の工夫
OCA で使える活動2種


 本校では、1年生が履修するOCAを、1講座20人で実施している。日々のOCAの授業で、生徒が比較的楽しみながら口頭練習し、自己表現活動へと進める活動を2つ紹介しようと思う。

1.カードをCueとして使うChain dialogue
 例えばWhy not ...?という機能表現を用いた会話練習を、下の会話例を使ってさせるとする。

 A: Why not [play tennis]?
B: Sure.I'd be glad to. When is it?
A: [Friday the 17th].
B: Yes, let's. / I'm sorry, but I can't.

 最初は、全員でModel Dialogue を使って練習し、申し出を承諾する表現と、反対に断る表現を学習させる。その後、20人の生徒を2つのグループに分け、10人の生徒を向かい合わせに机をはさんで立たせる。一方の列の5人の机の上にはAのパートの[ ]に入るもの(例えばgo shopping in Fukuoka / Saturday the 18th など)が書いてあるカードを置く。もう一方の列には"accept"または"decline" のいずれかが書かれたカードを置く。向かい合ったペア同士が、そのカードに書いてある指示に従って会話練習をする。その会話が終わると、1つずつ右(または左)にずれて、今度はまた違う相手と会話練習を行う。カード類はそれぞれの机の上に置いたままにしておく。そのカードが置いてあるところにきたら、必ずその指示に従って会話練習をしなければならない。行動を指示するカードは最低5種類は用意しておく。指示を補足する絵がカードに添えてあれば効果的である。生徒は最初の位置にもどるまで会話練習をしなければならないので、最低5回は尋ね、5回は答える練習をすることになる。会話の相手と内容を変えるので、単調になりがちな練習も楽しみながらできる。
 dialogueの量にもよるが、一巡するとたいがいの生徒はカードだけを「読む」のではなく指示を一瞥するだけで相手の目を見ながら「会話」するようになる。その後、自分たち自身のスケジュールを作らせ、自らの意志で誘ったり、承諾したり断ったりする会話へと進ませることもできる。カードで十分練習していると、生徒たちは非常にスムーズにこの活動を行う。
 指示を書いたカード以外にも、イベントのチケットを使ったり、貸し借りの表現を扱う場合であれば実際にペンや辞書などの実物も使うこともできる。

2.マーケティング・リサーチ
 「マーケティング・リサーチ」といっても狭い教室のなかで行う一種のロールプレイイングゲームである。相手の好みや趣向、体験などを尋ねる表現を定着させたいときに使う。生徒はマーケティング・リサーチ会社のスタッフの1人、ということにする。以下のような会話文を使って、男子5人、女子5人に尋ねなければならない、と設定しておく。生徒は適宜尋ねたり、尋ねられたりして「会話」する。

A: Excuse me, Mr/Miss.
B: Yes?
A: I am on the staff of H Research Service.
May I ask you a question?
B: Sure.
A: What would you like to eat for lunch?
B: I'd like to have some [ sandwiches ].
A: [Sandwiches.] Thank you very much.
B: You're welcome.

 下線部に入る選択肢を絵付きで提示しておくと、活動がスムーズに運ぶ。仕事として尋ねなければならない、という状況設定にしているので、よく知らない男子や女子と会話せざるを得ない。また、調査した結果を自分なりに分析させて、自分の考えをstaff meeting という場を設定し、簡単に発表させてもよい。聞き手の「調査員」たちも、仲間の発表をメモを取りながら聞く、という活動ができる。
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 以上述べた2つのアイデアは、教室内での口頭練習の発展形である。ただ単に、会話文を覚えて発表するのは苦痛を伴うことが多いが、この2つの活動は楽しみながら、会話文を繰り返し、重要機能表現を定着させることができる。
 各学期末考査発表後にALTによるインタビュー試験を実施しているが、その際、生徒は、既習の機能表現を使って発話し、コミュニケーションができるということを実感しているようだ。フリートーキングのレベルにはまだ程遠いが、今後はCD−ROMやクローズド・キャプション機能をもったビデオ教室なども使い、生徒の能力を向上させていきたいと考えている。

「英語教育」 1998年9月号 (大修館書店刊)掲載 (一部訂正)

補足:
カードをCueとして使うChain dialogue の活動例について
 この活動は、原則として一周して自分の席に帰ってくることで終わるが、時間が足りそうにないときには、「誘う」カードと「答え」のカードを交互に置いておく。そうすれば、時間切れで、この活動が終わっても、自分は誘う表現しかしなかった、とか答えてばかりだった、ということがない。続けて同じ表現を繰り返してやる方が、定着はするようだが、生徒の中には同じ表現を繰り返しやると飽きる生徒もいるので、臨機応変にやらせている。また、偶数のグループだと、途中でまた同じ人間と会話することになるので、わざと奇数のグループにする。1回休む場所を作ると、結果的に全ての会話の相手が異なってくる。また、休んでいるときに他の生徒達の会話を観察でき、それを生かして活動を続ける生徒も多い。 (2004年7月)