イヂワル英語!?ってか?

それは、雨の夜だった。教科指導やホームルーム指導とは、全くカンケーのない学校の仕事で相当遅くなり、ヨタりながらようやく帰りついたときだった。電話がなった。取ってみると、「英語教育」のSさんからのTELだった。Sさんは、3年ばかり前、「オールイングリッシュで授業を!?」という特集記事でお世話になった編集の方である。なんでまた私に電話、なんで自宅の電話番号がわかるの??(ちなみに前回の原稿依頼は学校のほうにかかってきた)などと思っている間に、Sさんが話し出す。「あの、このたび増刊号で「★*☆◇英語」という特集をですねえ企画しておりまして、センター入試等を考えましても最近この傾向が強い出題となっていますので、先生が日頃の授業で工夫しておられることがありましたらぜひ紹介していただきたいのですが・・・」「・・・あのう、よく聞こえなかったんですけど・・・イヂワル英語・・・ですか・・・?」「・・・いえ、ヴィジュアル英語、でして・・・」「・・・(汗)」

センター試験やその演習などでよく見るイラストや図表を用いた授業内活動・・・「ああ、やっていますよ。自分で絵を描くので・・・」・・・疲れ切っていたとはいえ、気安く返事をしてしまった私。Sさんのほうも、執筆者探しによほど困っておられたのだろう(まあ頼んだほうとすればココでイヤとは言えないのだろう)、是非掲載を、と言われる。私の方はうろたえ気味に「まあ、描いた絵をコピーして送るのでそれを見てからから決めて下さい」とお願いして電話を切る。

翌日、自分で描いたワークシートを改めて見直して、身がすくむような思いがしてきた。こんな素人の描いたこんなもんが記事として成立するのか??イヤイヤ、大事なのは、この場合、画力ではなくアイデアの方だろう、と思いなおし使用状況や生徒の様子などをおもいつくまま簡単に書き添えて、コピーと一緒に発送する。2,3日後、Sさんからメールが届き、正式な原稿依頼をする旨を知らせてきた。思いの外、彼には気に入ったようである。

「英語教育」誌に書くのは初めてではない。このHPにも過去の原稿を載せているので、これを読んでくださっている方は、私がどのような物をどのくらい書いているのかよくご存じだと思うが、今回の原稿依頼には、はっきり言ってとまどい、うろたえてしまっている。今までのものに関しては、いわゆる自分の「言語表現力」を駆使(?)して、状況や自分の考えを伝えることを心がけて書いてきた。今回は「画力」(?)が加わり、自分の英語力や授業構成力やそれを支える発想力よりも「絵がうまいか下手か」というところにより焦点が当たるように感じられ、なんだかヘンな感じである。

思えば高校時代、英語の勉強なんかよりはるかに絵を書く方が好きだったし、文章は読むのも書くのも好きだった。でもそれでは食っていけないので、英語を高校生に教えることを生業としたわけだが、新任のころ、ツラかったのは自分の英語がヘタくそで、なおかつ英語に夢中になれるわけでもなかったことだ。高校時代、損得抜きに打ち込んだことが、こんな風にいまの仕事に生かされるとは全く思っていなかった。これっていわゆる高校の進路指導上の「自己実現」?の一種なのだろうか??だとしたら、いや、そうでなくても、自分の「損得抜きで打ち込める何か」を仕事で活用でき、なおかつそれを広く知っていただく機会を得た私は、本当に幸せ者である。

で、こんな事を書いているうちに、Sさんから正式な原稿依頼と他の執筆者および各原稿のタイトルが送られてきた。うーーーーん。やっぱ「ヴィジュアル」となると、他の執筆陣はソウソウたるメンバー、内容も超充実、ってカンジ。やっぱり書くのやめようかな、でもドタキャンは信用失墜だしな・・・まあいっかぁ、枯れ木も山のにぎわいってことで・・・などとなかなか吹っ切れない私・・・。

いずれにせよ、「英語教育」2006年10月増刊号、乞うご期待(笑)!

(2006年7月)