楽しんだってイイじゃん

防府高校に勤めて8年。1年を持つたびに、OCとTTに関わってきた。

転勤したてのころは、以前の勤務校でのOCの指導しか頭になかったので、同じ教材では、レベルが低くて、生徒が本気でやらないのではないか、と思っていた。しかし、実際やってみると、生徒の取り組みはとてもよく、反応の良さに感激したことを思い出す。前任校でも、OCのTTで楽しい思いをしてきたが、ここ防府高校でも、結構楽しい。また、つくづく、語学教育における「知識として知る」ということと「身につけて運用する」ことって違うし、それぞれ重要だ、ってことを実感する。やっぱ「運用し」「英語を楽しむ」機会を生徒に与えなくっちゃダメだなあ。

現在、本校はALTのベース校になっており、OCを中心にTTを行っている。2年生の文系4クラス(こちらはライティング)と、1年の普通科の全クラスを2分割にして、1クラス20人の少人数クラスで実施している。TTの授業案は、学年共通のものを使っているが、私自身は、授業案を作る時には、勝手ながらいくつかの柱を設けている。以下、思いつくまま、列挙すると
(1)大学入試を念頭に置いている生徒が多いので、入試によく扱われる一般的な話題や、定型表現をできるだけ扱う。
(2)1回のTTで消化できる質と量にする。前時に、TTの準備をさせたり、次時に、TTの教材の続きをやったりしないですむような。いわゆる「ワンショット」。
(3)Warm-upを入れる。ただし、できるだけその日の授業の主活動に関連したものにする。主活動がレストランでの会話なら、warm-upでも食べ物の名前をあつかうなど。
(4)Information Gap のある活動にする。
(5)ALTにはアイデアは求めるが、授業案は作らせない。
(6)生徒には授業時間中に1語でもたくさん発話させる。本校の3年間のカリキュラムを考えると、生徒が授業中に「話す」機会が1番多くもてるのが1年のOCのTTであるので、その機会を逸したくない。
(7)カード、マップなど、ビジュアル情報を多く提示し、活動の説明をスムーズにする。
(8)中学校の教科書を確認する。買い物、道案内、電話など、中学でも扱った話題については、既習事項を確認する。
(9)Teaching Planは出来るだけ細かく作り、他の教員との授業の質の同質化を図る。ALTが英語で主に進めていくようにする。

私には私のいろんな「目論見」があるのだが、それはさておき、1年間に1回程度の頻度で、TTの授業の後、生徒の方から、こちらのモチベーションがアゲアゲになるリアクションがある\(^O^)/生徒同士が「今日の授業あっという間に終わったよね」と話していたり、「先生、今日の授業、ホントに楽しかったです」と生徒が言ってきてくれたり。中には、「ああやっぱOCが一番おもしれーー」 と叫んでくれたり(ホントです、複数の目撃証言あり)・・・小さくガッツポーズというより、諸手をあげてバンザーーイって感じ。 生徒が評価してくれるほど、ウレシイことはない。授業がウマクまわって、おまけに生徒が楽しんでくれると、マジで泣きそうです。

で、失敗例。
教材が生徒にうまくハマると、お互いに幸せなのだが、そうでないときもある。前任校での経験。LL教室でヘッドフォンをつけて電話の対話練習をさせていた時のこと。ペアの会話をモニタリングしていると、男子が、「あああ、早く終わればいいのに」と、相手に愚痴っていた。当時、私は今よりずいぶん若く、やる気もあって、私の目にはどの生徒もLLの機器を使って楽しそうに会話しているように見えた。それもあって、かなりのショックだった。自分が楽しいと思っていても、当の生徒たちには苦痛だったりして。まあ、常に万人においしい料理はない、ってことですか。

この最近は、以前使った教案、教材をそのまま使うので、以前の生徒の反応を思い出しながらその教材を使うことが多い。が、生徒の質(というよりも中学で受けてきた英語教育の質)が変わってきているせいか、以前は好反応だったものが、そうではなかったりする。また、中学校間での、英語を使った活動に対する温度差をはっきり感じることも多い。以前の生徒が楽々運用していた表現の定着が悪く、真面目に取り組んでいるのに、楽しそうでない場合もある。
Readingの教材で「定点観測的な」教材も必要では、と以前書いたように記憶しているが、OCの教材も「定点観測」をすると、生徒の運用能力の比較ができて興味深い。ただ、生徒の興味やレベルに合わせて、適宜「お直し」が必要だ。上記の「私自身のOCのTTの柱」に(10)を付け加えるとすると、
(10)生徒の英語力に合った活動を設定し、運用能力を高めることを目標にする
って、トコかな。

「学習者中心の英語教育」・・・と声高に叫ぶつもりはあまりないケド、同じ時間と空間をともにしている授業者と学習者が共に学習を通じてタマには「楽し」んだってイイじゃん。

(2009年 11月)