| 詩の授業 |
| はじめて小鳥がとんだとき |
| 教材文 |
| はじめて小鳥がとんだとき (原田直友) はじめて小鳥がとんだとき 森は、しいんとしずまった。 木々の小えだが、手をさしのべた。 うれしさとふあんで、小鳥の小さなむねは、 どきんどきん、大きく鳴っていた。 「心配しないで。」と、かあさん鳥が、 やさしくかたをだいてやった。 「さあ、おとび。」と、とうさん鳥が、 ぽんと一つかたをたたいた。 はじめて小鳥がじょうずにとんだとき、 森は、はく手かっさいした。 |
| (指示1) 全員立ちなさい。声を出して各自この詩を二回読みなさい。 読み終わったら座って黙読をしておきなさい。 |
全員が読み終わったのを確認して、各自に音読発表をさせた。各列ごとに立たせ、一人一人に読ませた。その間、句読点に着目して間の取り方に注意すること、「 」の中は感じを込めた読み方を工夫することを指導した。
その後、教材の中身の分析に移る。
| (発問1) 小鳥は何回とんだのですか。 |
ほんの一瞬であったが、子どもたちには「絶句」の状態があった。緊張感のある思考活動が始まったことが伺える。
全員に発表させた。23名中、22名は「二回とんだ。」と言った。1名だけ「一回とんだ。」と言ったが、修正段階では「よく分からない。」と表現した。
子どもたちは、文章表現に着目し、「二回とんだ」ことの根拠を明らかにしようとする発言を繰り返した。
| (発問2) 小鳥のとび方に変化はありましたか。 |
約半数の子が発表した。要約する。
☆一回目はあまり上手じゃなくて、二回目は上手にとんだんだと思います。
☆一回目はあぶなっかしい感じで、二回目は立派だったんだと思います。
| (発問3) 一連と三連に出てくる「はじめて」の意味の違いを言いなさい。 |
これはほとんどの子が発表した。要約する。
☆第一連の「はじめて」は、「生まれてからはじめてのこと」というような感じで、第三連の「はじめて」は、「上手にとんだのがはじめて」
ということだと思います。
☆最初の「はじめて」は、はじめて羽をひろげたということで、次の「はじめて」は、「上手にとべたはじめて」だと思います。
| (発問4) とんでいる小鳥は、どこを見ていたと思いますか。 |
しばしの沈黙があった。考える目をしている子が多かった。次のような発言があった。
☆一回目はあまり上手じゃなくて、心配だから、木の枝とか、すぐ近くを見ていたと思います。二回目は上手にとべたので、目は遠く方を見ていたと思います。
☆最初はこわくて、どこも見えないくらい自分のすぐそばを見ていたと思います。上手にとべたときは、目はずっと上の方を向いていたと思います。
目線を考えることで、小鳥の心情面にまで考えが及んでいる。
| (発問5) 話者の目は、どのように流れていますか。 |
話者の目の位置を問う発問である。次のような発言があった。
☆第一連と第三連では、話者はちょっと遠くから小鳥を見ています。第二連では、話者は小鳥親子のすぐそばから見ています。
☆第一連と第三連は、森全体から小鳥のことを見ているけど、第二連では、かあさん鳥やとうさん鳥のすぐそばにいて小鳥を見ていると思います。
| (発問6) 対比されている言葉を言いなさい。 |
この問いに対しては、かなりの反応があった。
☆とんだ・・・・・・・・・・じょうずにとんだ
☆しいんとしずまった・・・・・・・・・・はく手かっさいした
☆手をさしのべた・・・・・・・・・はく手かっさいした
☆木々の小枝・・・・・・・・・・森
☆うれしさ・・・・・・・・・・ふあん
☆小さな・・・・・・・・・・大きく
☆かあさん鳥・・・・・・・・・・とうさん鳥
☆かたをだいて・・・・・・・・・・かたをたたいて
☆やさしく・・・・・・・・・・ぽんと
☆心配しないで・・・・・・・・・・さあ、おとび
| (発問7) 小鳥の気持ちの変化をいいなさい。 |
次のような反応があった。
☆最初は不安でいっぱいだったけど、とべそうな気がしてきて、最後に成功したときは自信がついたと思います。
☆こわい気持ちがあってビクビクした感じだったけど、やってみて、ちょっとできそうな気がして、上手にとべたときはすごくいい気持ちで、嬉しくてしようのない気持ちだったと思います。
☆心配で暗い感じの気持ちだったのが、嬉しくて明るい気持ちに変わっていったと思います。
| (発問8) かあさん鳥、とうさん鳥の、顔の表情の変化を考えなさい。 |
次のような反応があった。
☆最初はすごく心配そうな顔で、後からとても嬉しい顔になったと思います。
☆最初はすごく心配だったので、真剣な顔だったと思います。小鳥が上手にとべたときは、安心して明るい顔になったと思います。
※この詩を授業してみて、次のようなことを感じた次第である。
※この詩の第一連と第三連は、話者が外から眺めているような表現形態をとっているが、実際は小鳥の心情を暗喩する表現となっているものと思われる。
例えば、
★第一連の「森は、しいんとしずまった」では、
初めてとぶときの不安な気持ちから、何も聞こえないくらいの極度の緊張感があった、ということの暗喩表現である。
★第一連の「木々の小えだが、手をさしのべた」では、
不安な気持ちから、目線は「自分のすぐ近くのものしか見ていない。」ということの暗喩表現である。
★第三連の「森は、はく手かっさいした」では、
上手にとべたとき、森全体のいろんな音が聞こえるくらい気持ちに余裕ができたということの暗喩表現である。