詩の授業 |
忘 れ 物 |
※これは、分析批評を知ったばかりの頃の、分析批評の「まねごと」のものである。全く話にならない恥ずかしい中身であるが、自分にとっては、背伸びをしてでもとにかくやってみようとしていた頃の懐かしいものである。
教材文 |
忘れ物 (高田敏子) 入道雲にのって 夏休みはいってしまった 「サヨナラ」のかわりに 素晴らしい夕立をふりまいて けさ 空はまっさお 木々の葉の一枚一枚が あたらしい光とあいさつをかわしている だがキミ! 夏休みよ もう一度 もどってこないかな 忘れものをとりにさ 迷い子のセミ そびしそうな麦わら帽子 それから ぼくの耳に くっついて離れない波の音 |
プリントを配布し、指示する。
(指示1) 全員立ちなさい。各自この詩を三回読みなさい。読み終わった人は座って黙読をしなさい。 |
全員が読み終わったのを確認して、次の発問をした。
(発問1) 作者は誰ですか。 |
全員が声をそろえて言った。
☆高田敏子さんです。
続いて次の発問をする。
(発問2) 話者は誰ですか。 |
この反応はおもしろかった。
☆「話者は作者です。」とする子22名。
☆「話者は“ぼく”です。」とする子1名。
その後の討論の末、「作者説」は消え、話者は「ぼく」であると納得した。大逆転である。
発問を続けた。
(発問3) この詩は“いつ”の場面を描いているのですか。はっきり何月何日と解釈してご覧なさい。 |
次の反応があった。
☆「夏休みはいってしまった」と書いてあるから、もう夏休みは終わっているので、夏休みの終わった次の日のことだと思います。
☆「けさ」と書いてあるし、「あたらしい光」と書いてあるので、夏休みの終わった9月1日のことだと思います。
全員、異論はなかった。
(発問4) この詩は、何日間のことが書いてありますか。 |
次のような反応があった。
☆最初が8月31日のことで、次が9月1日のことだと思います。だから、2日間のことが書かれてあると思います。
全員納得である。
そこで、次の発問をする。
(発問5) 8月31日は、どこからどこまでですか。 9月1日は、どこからどこまでですか。 |
これは確認のためである。
☆8月31日は、「入道雲にのって」から「素晴らしい夕立をふりまいて」までだと思います。
☆9月1日は、「けさ 空はまっさお」から「あたらしい光とあいさつをかわしている」までだと思います。
☆9月1日は、「けさ 空はまっさお」から「忘れ物をとりにさ」までだと思います。
9月1日については二つの意見に分かれたが、状況説明という観点で、「あたらしい光とあいさつをかわしている」の所までだという意見でまとまった。
(発問6) この詩は、何時頃のことを表しているのだと思いますか。 |
9月1日を、さらに細かく分析する。
☆「けさ 空はまっさお」と書いてあるから、朝早いときだと思います。
☆「けさ」と書いてあるし、「あたらしい光とあいさつをかわしている」と書いてあるので、「あいさつをかわしている」時間だから、6時頃か7時頃だと思います。
☆「あいさつをかわしている」と書いてあるから、たぶん子どもたちが学校に行くくらいの時間だと思うので、7時から8時くらいのことだと思います。
朝の雰囲気を、存分に感じ取っているものと思われる。
(発問7) 忘れたものは何ですか。 |
子どもたちの反応は、
☆「迷い子のセミ」と「さびしそうな麦わら帽子」の二点で終わっている。不十分である。
続いて次の発問をする。
(発問8) 忘れ物をしたのは誰ですか。 |
子どもたちの反応はこうである。
☆忘れ物をしたのは“ぼく”です。
再度、反応を促す。言葉に鋭く着目するよう指示した。
☆「もう一度 もどってこないかな」と書いてあるし、「もどってこないかな」と思っているのが“ぼく”なのだから、その“ぼく”が忘れ物をしたのではないと思います。
☆「忘れ物をとりにさ」と思っているのも“ぼく”なのだから、自分に「取りに来てほしい」と思うのはおかしい。いってしまった夏休みに、「取りに来てほしい」と思っているのだと思います。
☆「だがキミ! 夏休みよ」と書いてあって、夏休みに対して言っているので、忘れ物をしたのは、夏休みだと思います。
この後、再度発問7をした。
☆「迷い子のセミ」と「さびしそうな麦わら帽子」と「ぼくの耳に/くっついて離れない波の音」と、子どもたちは反応した。
発問7と発問8との順番はこれでよかったのだろうか。逆の方がよかったのだろうか。