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「点字の学習」学習指導案
広島県福山市立水呑小学校 教諭 粟村啓史
指導者 T1
粟 村 啓 史
T2 宮 澤 依 子
| 研究主題 |
|
| 点字を題材とした学習の場合、子ども達が福祉に対して興味・関心を抱いたり、自ら発展課題を設けたり、さらに調べてみたいという気持ちを抱いたりするようになるには、どのような指導が望ましいのか。 |
1.日時・・・1999年9月16日(木)
14:00〜15:00
2.学年・・・第4学年2組
(男子20名 女子14名、計34名)
3.題材・・・点字の学習
4.題材設定の理由
w 近年、社会全般的に、福祉に対する人々の意識レベルは、一昔前に比べるとかなり高まってきていると言える。事実、社会の色々な面において、障害を持つ方々に対する様々な配慮がなされるようになってきた。例えば、目の不自由な方々のために駅などに点字表示があったり点字ブロックがあったりするのもその一つの表れであろうし、身近なところでは、ビールやお酒の缶に点字表示がしてあったり、街の公衆電話に点字表示がしてあったりするのも同様であろう。また、近年国語の教科書(光村4年生)において、点字について幾分触れてある単元が設けてあるが、これなども、子ども達に点字というものに意識を向けさせる良き触発材であろうと思われる。
しかし、点字は一つの文字文化である。学習しなければ、読むことも書くこともできない。点字を目の不自由な方達だけの別個の文字としないように、私達一人一人が折に触れ点字を学習しようとすることは、福祉に対する前向きな考え方の一つの表れであると言えるであろう。
次の学習指導要領における総合的な学習では、例示的に「国際理解」「環境」「情報」「福祉・健康」という四項目があげられているが、これらは21世紀を嘱望する国家レベルの教育課題であると言えよう。特に「福祉」の項目においては「理解」と「体験」が必要であり、教育現場においては、障害や障害を持っている方々のことを正しく理解することと、障害のあるなしにかかわらず共に生きていくあり方を学ぶことこそ、最重要の学習課題であると考えられる。
以上のような理由から、第4学年においても点字を学習することは非常に意義あるものであると考える。点字になじめるようになるには、第1学年の子がひらがなを覚えるのと同じように、点字の基本文字(あいうえお)や基本的な原則(点の配列に関する原則・規則性)に着目していくことが大切である。なぜなら、それらは点字の文字文化を正しく体感していくための第一歩となり得るからである。
w 今年第4学年では、年間の取り組みとして、主として視覚障害者に焦点を当てた学習を積んでいきたいと思っている。児童は、一学期に「アイマスクの授業(アイマスクを使った体験学習)」や「走れ良司くん」というビデオ視聴を通して、視覚障害や視覚障害者について学習を積んできた。今回の点字の学習も、こういった一連の学習過程に位置づけて行いたいと思っている。
まず4年生の児童は、国語の教材文「手と心で読む」を通し点字と対面する。そして、漠然とではあるが点字という文字を知る。しかしそれだけでは点字を読むことはできない。これまでに4年生の児童は、点字に関する国語の教材文の学習の後、教材文から点字について分かったことを整理したり、まだ分からないことや知りたいことなどをノートにまとめたりしてきた。そしてその後、街の中や生活の中で目にすることのできる点字を集めてみようと努力したり、それらを画用紙に書き表してみようとしたりしている。今はまだ見つけた点字を書き写しているだけの段階だが、子ども達が点字になじめるようになるには、子ども達自身が、50音の土台となっている基本文字の「あいうえお」の点とカ行以降で加点される点との関連に着目し、基本的な原則(点の配列に関する原則・規則性)に着目していくことが大切である。そういった点字構成の基本原則に着目してそれらの規則性を感じていくことこそ、点字の文字文化を正しく体感していくうえで大切なことなのではないだろうか。そういう意味では、基本文字の「あいうえお」を理解することは点字学習の基本であると言えるであろう。前時、児童は、点字が六点で表されることを学んだり、基本文字の「あいうえお」だけの読み書きを練習したりしている。これまでのところ児童は、適度な難しさと適度な達成感を味わいながら、楽しみながら学習しているようである。
w 点字のつくりには「六点法」の基本原則があり、基本的な概念としては、ローマ字の表記法とよく似ている。基本的に50音は、母音と子音を組み合わせるというローマ字の表記法を基本概念として、六つの点を組み合わせることによってできている。また、これら六つの点の組み合わせによって、文字や数字、アルファベット、ひいては音符までをも表すことができる。
今回の授業においては、自分達で集めた点字を解読するということを目標にグループで協力して、一文字でも多くの文字を明らかにしていくように探究活動させる。そしてその後の活動として、基本的な原則(点の配列に関する原則・規則性)に着目させ、加点による規則性を発見させたり、点字の基礎的文字(50音)の読み書きを体験させたりすることを目標としている。尚、加点による規則性については、次時で詳しく扱い再認識させようと思っている。
また、指導に当たっては、「学習点字ペン」を使用させ、実際に点字を作る活動を体験させる。ここで使う「学習点字ペン」とは、点字を作る体験用学習教具であり、小中学生の児童生徒が点字を初めて学習するのに非常に適した学習教具である。
今回の授業では、以上のような学習指導や学習活動を基に、児童に点字の文字文化を正しく体感させることを目標としたい。そして児童が、これらの点字の授業に触発され、本当に点字に興味や関心を抱き、点字についてさらに調べたいという気になったり、目の不自由な方々への福祉活動に関心を抱いたり、いずれ自分もそのような活動に参加してみたいという気持ちを芽生えさせたりすることを期待したい。こうした過程を経ることによって、児童は真に自分の中に課題を設定し、自ら進んで調べようとするようになるのだと考える。
そしていずれは、目の不自由な方々のことだけでなく、広くいろいろな障害を持った方々のことも考えることができ、共に生きていこうとする心情や態度が育ってくれることを期待したい。
尚、第二次と第三次の点字の学習においては、障害児学級のA君もこの教室での学習に参加する。A君は、人が多く集まったり見知らぬ人がいたりすると、緊張感や不安感が高まったり、精神的に不安定な状態になったりしやすいが、4年2組の子ども達と一緒に活動するのは好きである。授業に際しては介助の教師が一人付き、A君は介助の教師と共に学習する。尚、A君には、点字の点のふくらみを指で何度も体感させたり、「学習点字ペン」を使って点や絵を描かせるなど、楽しんで活動させたいと思っている。
5.指導計画
・第一次・・・・・国語教材文「手と心で読む」(3時間)
・第二次・・・・・点字あつめ
(3時間)
・第三次・・・・・点字の学習「あいうえお」 (1時間)
・第四次・・・・・点字の学習「50音」 (2時間:本時1/2)
・第五次・・・・・点字の学習「発展課題」 (3時間)
6.本時の目標
@集めた点字を解読しようと取り組む過程で、できるだけ多くの点字を探究する。
A点字を解読しようとする活動に、充実感や達成感を味わうことができる。
B点字の文字文化に興味・関心を抱き、自分で更なる発展課題を抱くことができる。
評価の観点 |
評 価 基 準 |
学習意欲・態度
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「点字の学習」に意欲的に臨み、積極的に学習活動に取り組もうとしている。 |
表現・処理
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できるだけ多くの点字を探究し、分かりやすく整理することができる。 |
充実感・達成感
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点字を解読しようとする活動に充実感や達成感を味わうことができる。 |
発展意欲・態度
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点字の文字文化に興味・関心を抱き、自分で更なる発展課題を抱くことができる。
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7.本時の準備物
*教師・・・「あいうえお」一文字ずつの点字カード、点字50音作成プリント、一文字ずつの黒板掲示カード、点字作業プリント
*児童・・・筆記用具、学習点字ペン
8.本時の展開
学習活動(内容) |
主な発問と児童の活動 |
指導上の留意点と評価の観点 |
発表活動
本時学習の確認
解読する活動
発表活動
50音の整理
50音空所の考察
学習点字ペンを
使って書く。
授業後の感想
次時予告
|
{見つけた点字を発表する。
街の中や生活の中で見つけた点字を発表しましょう。
{本時の学習内容を確認する
何て書いてあるのか、解読していこう。
{自分達が集めた点字の解読
グループで協力して、自分達が集めた点字を解読しよう。
自分達が集めた点字にはどう書いてあったのか、分かったことを発表しましょう。
{解読した点字を発表する。
{50音表に整理する。
調べた点字を分かりやすく整理してみましょう。
{50音空所の考察。
空いているところの点字は、どんな点になるのだろうか。
{学習点字ペンを使って書く
学習点字ペンを使って点字を書いてみましょう。
{授業後の感想や、次に知りたいことや、今後やってみたいこと、調べてみたいことなどを述べる。
|
・それぞれが集めたものをグルー プごとに発表させる。
・見つけた場所や予想、分かったこ と、疑問に思ったことなどを発表 させる。
意欲的に活動しているか。
興味を持って臨んでいるか
・自分達が集めた点字を解読しよ うという意欲を持たせる。
・「手で見る学習絵本テルミ」や その他自分達で用意したものを駆使して、自分達が集めた点字を解読する活動をさせる。
・できるだけ多くの字を探究させ、黒板掲示カードに点字を書くグ ループ活動をさせる。
・児童の活動を支援する。
活動の意欲が高まっているか
・自分達が集めた点字をカード化して提示させ、発表させる。
・全グループに発表させ、発表させた点字カードは黒板に残す。
興味を持って臨んでいるか
・分かりやすく整理する方法を考え させる中で、50音表にまとめることのよさに気づかせたい。
・児童に整理する活動をさせたい。
・児童の活動を支援する。
意欲的に活動しているか。
・上の活動で解明できなかった50音空所の点字を考え させる。
・加点に関する規則性に着目 させたい。
・加点に関する規則性を見つけたら発表させる。
・見つけられなかった場合は次時 へつなぐ。
興味を持って臨んでいるか
規則性や50音空所の点字を考えることに意欲的か。
・自分が集めた点字をまず点字作業プリントに鉛筆書きさせ、その後、学習点字ペンを使って書かせる。
・時間があれば、50音を使って自由に言葉づくりをさせ、鉛筆書きの後、学習点字ペンを使って書かせる。
・早く終わった子には、学習点字ペンを使って50音を書かせる。
・時間があれば紙に書かせ、発表させる。
今日の学習活動に充実感や達成感を抱いているか。
点字の文字文化に興味・関心を抱き、自分で更なる発展課題を抱くことができたか。
・次時、加点に関する規則性に着目して50音表を再確認することを伝える。
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9.前時の展開
学習活動(内容) |
主な発問と児童の活動 |
指導上の留意点と評価の観点 |
1学期の学習想起
意識の集中
本時学習の確認
既習事項の確認
六点法の学習
文字の学習
読みの練習
学習点字ペンを
使って書く。
授業後の感想
次時予告
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{目の不自由な方々のために配慮がなされていることを考える。
目の不自由な方々のために
日頃の生活の中でどのような気配りがなされていますか。
点字は、どんなところに使われていますか。
{点字に意識を集中させる。
ビール缶の点字にはどう書いてあるのか分かりますか。どちらから読むのか分かりますか。
{本時の学習内容を確認する
{説明文の学習を想起する。
「手と心で読む」という
説明文を勉強して、分か
ったことは何ですか。も
っと知りたいことは何で
すか。
{点字の基本、六点法を学習
する。
{「あいうえお」の学習をする。
「あいうえお」の点字表示を見て、思ったこと、気づいたことを言いなさい。
{二文字単語を読む。
これらは二文字単語です。それぞれ何と書いてあるのでしょう。
{学習点字ペンを使って書く
今書いたものを学習点字ペンを使って書きなさい。
{授業後の感想を述べる。
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・1学期のアイマスクの学習を想起させ、点字ブロックや点字表示などについて意識を集中させる。
・点字の表示物などを教室に
持ち込みたい。
・見たことがあるなどの経験 を数名に語らせる。
関心を持って臨んでいるか。
・ビール缶の点字を提示し、
身近な物への点字表示に関
心を持たせる。
・読みたい、分かりたいとい
う気持ちを誘発する。
・この場では正解を告げない
関心を持って臨んでいるか。
・50音の基本である「あいうえお」 を学習する旨を伝える。
・説明文を読んで、分かったこと、 もっと知りたいことなどを発表さ せる。
・六つの点を使うこと、点には番 号がついていること、点字は六 つの点の組み合わせでできて いることなどを知らせる。
・六つの点の位置と番号を対応し て覚えさせる。
興味をもって臨んでいるか。
・「あいうえお」の点字カードに点 を付けさせ、提示した後、「あい うえお」は@ACの点のみを使 うことを押さえる。
・指書き、空書きさせた後、手元 の作業プリントに書かせる。
積極的に学習しているか。「あいうえお」の表記法が分かったか。
・「あいうえお」の5文字のみからできる二文字単語を一語提示し、読ませる。その後は子ども達に作らせ、発表させる。 (「あい」「あお」「いえ」「うお」など)
・手元の作業プリントに書かせる。
「あいうえお」を読んだり書いたりできるか。
・「あいうえお」の5文字と各自作 った単語を、学習点字ペンを使 って書かせる。
・児童の活動をしっかり支援する。
・次時、50音について学習するこ とを伝える。
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点字50音学習後の児童の感想文
(1)「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。」
チャイムが鳴りました。5時間目が始まります。
今日はいろいろした。みんなが調べてきた事を発表したり、あわ村先生が持ってきてくれた点字のきかいや点字の本を見たり・・・すごく楽しかった。
でも、わたしが今日一番心にのこったのはみんなの発表だった。
みんなそれぞれ調べてきた物を、がようしに書いてちゃんと説明までしてくれた。わたしはそういうみんなの発表を見て聞いて、すごく分かりやすかった。
ポストに点字があった。ビールにも点字があった。公しゅう電話にもあった。てすりのところにもあった・・・。みーんないろいろな物を調べていて、「あー。こんな物にもあったんだー。」と初めてしった事や、「うんうん、あるある。」と、わたしもしっていたけど・・・。「えーっ!!そうだったんだー。」と、しっていた物でしらなかったところなどたくさんあった。みんなの発表は、これから一ヶ月間ぐらい休むみやざわ先生にもとどいたと思う。
わたしは点字をすらすらと読めるようになりたい!。だから、これからもたく さんの点字の勉強をしていきたい。
(2)今日、点字の勉強をあわ村先生とやりました。私は、全員の先生にみてもらう ので、「ドキドキッ。」と心の中で言っていました。でも私は、いつものようにがんばって勉強しました。最初に、私たちが点字を見つけて書いた発表をしました。私たちの班は三番でした。私は、いつもよりできるだけ大きい声で発表しました。今まで練習していたときは、ずぅっと言う事をまちがって、つまってしまっていたけれど、今日はつまらずに言えてよかったと思いました。先生たちが「パチパチッ」とはく手をしてくれた時は本当にうれしかったです。今日はいい勉強になったと思います。それは、「あ」の行ではどこかの点をかくすと点字の「あ」になるという事です。少しはずかしかったけれど、せいこうしてよかったです。
(3)今日は点字について勉強しました。みやざわ先生が入いんすることになったので、あわ村先生一人でやりました。
たくさんの先生が入ってきました。すごくきんちょうした。だから、うまくはっぴょうできるかなぁと思って、不安になった。発表がはじまり、きいていると、どのはんもじょうずだなぁと思った。そして、わたしたちの
はんの じゅんばんがきた。ドキドキした。りさちゃんがいって、わたしのばんがきた。めちゃめちゃきんちょうした。まよわないで発表できたので、よかったです。
今日の勉強をしてわかったことは、点字はみじかな所にあることと、たて3列、よこ4てんの12てんであらわせるものがあることです。もっともっと、調べていきたいです。
(4)今日点字を勉強しました。たくさんの先生の前でしました。ぼくらのはんは、一番最初に発表しました。大きな声でハッキリ発表しました。くわしく説明したりもした。どこのはんも大きな声でくわしく発表していました。「あいうえお」のほかにいろんな文字をおぼえました。ふつうの文字はたて3点横2列で6点ですが、だく音はたて3点横4列の12点でした。みんなもきづいたこと、わかったことなど言っていました。点字はいろんな物についていて、目の不自由な人にとてもやくだつと思います。お酒や公しゅう電話、シャンプーなど、いろんなものについています。
点字を学習して
点字の50音を学習した後、さらに知りたいことや今後やってみたいことなどを国語のノートに書かせた。以下は、それらを箇条書きにまとめたものである。
{さらに知りたいこと
・点字はどうやってできたのか。
・目の不自由な人は、どうやって点字を覚えたり練習したりしているのか。
・点字は、どうやってでこぼこにできるのか。
・ローマ字など外国の字は、どうやって点字にするのか。
・濁音や拗音や漢字はどうやって点字を作るのか。
・音符や数字はどうやるのか。
・50音以外の字。
・「、」や「。」のつくとき。
・( )やのばす音のとき。
・点字があるものを選んで、一日に何人の人がその点字を使うか調べてみたい。 ・点のつく文字(濁音)や丸のつく文字(半濁音)。
・点字をすらすら読めるように、もっと知りたい。
{やってみたいこと
・実際に点字を打つ道具を使って、点字を打ってみたい。
・点字での文通。
・目の不自由な人に点字でお手紙を書きたい。
・点字で文を書き、本を作ってみたい。
・普通の文を点字に書き直してみたい。
・点字の本を借りて、全部読みたい。
・点字を全部読めるようになりたい。
・何でも読めて、手話も使えるようになりたい。
・目の不自由な人、耳の不自由な人にあっても困らないようにしていきたい。
・点字で書かれた本を読む。(長いお話を読んでみたい。)
・絵を描いて、目の不自由な人に分かってもらいたい。
・点字で投票してみたい。
・みんなで点字を読み合いたい。
・濁音、ローマ字、音符、数字などの勉強。
・点字で書いて、それを当てるゲーム。点字しりとり。

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