大柿町では町制45周年記念事業として、平成12年1月、「大柿町海辺の生き物調査団」を発足させ、町民自らが身近にすむ生き物を調べていく中で、自然に親しみ、自然に学ぶ活動を行いながら、大柿の海辺の自然をまとめた記念誌を発行するための調査活動を行いました。
 
  調査団とは
  活動内容
 調査団の活動には、大柿町の海辺の生き物について、その現状を把握するという調査研究的な側面と、活動を通じて身近な自然に関心を持ってもらうという教育的な側面がありました。調査活動は、毎月1〜2回、大潮の干潮に合わせて町内各地の海辺を中心に調査会を開き、生物採集や写真撮影を行いました。調査はすべて町民主体のボランティアを募って実施し、近隣市町村からの参加も可能としました。あわせて、野外観察の指導、スケッチの描き方、科学研究の指導などの研修会を開き、学校教育との連携をはかりながら環境学習の支援を行いました。また、調査団の活動状況や学校でのとりくみ、海辺の生き物の話などを掲載した「ニュースレター」を月2回発行し、町内全戸に配布するとともに、調査団ホームページを開設して、町内外に広く情報発信を行いました。
  活動実績
 町内外の教職員が中心となりながら、小中高校生をはじめ地域の住民が参加した調査団には、大人169名、中学生以下86名のボランティアスタッフ登録がありました。調査活動は町内15ヶ所で行い(ただし、カブトガニ産卵調査は江田島湾内で行ったため、町外の海岸も調査しました)、調査回数も30回を越えました。県の希少種に指定されているハクセンシオマネキやスナガニがすむこの町での調査では、オノミチキサンゴ、ウスユキミノガイやタマノミドリガイなどの発見に加えて、カブトガニの産卵(2000年7月31日)を確認することが出来るなど、豊かな大柿の海を実感すると同時に、マスコミにも取り上げられ話題となりました。調査会で採集した生物は標本資料として保管し、約650種、4500点を越える標本数となりました。
 平成13年3月には中間報告として、海辺の生物写真集「Marine Life」と生物写真・月の満ち欠け・干潮の時刻と潮位を載せたカレンダーを作成しました。さらに、平成14年3月には町制45周年記念誌として、2年間の調査結果を図鑑としてまとめた調査報告書「大柿町の海辺の生き物」、及び、活動の記録であるニュースレターなどをまとめた歩み編「大柿町海辺の生き物調査団 その歩みとドラマ」を刊行しました。
 このような活動の中で、町内の各小中学校にはそれぞれ水槽が設置されるようになり、身近な自然を題材とした「総合的な学習の時間」などが展開されるようになりました。また、児童生徒だけでなく地域の人たちにとっても、以前に比べて海が身近なものとして感じられるようになりました。調査団の活動を通じて、町民自らが、地元の自然をとらへ、理解し、守り、活用し、地域・学校・行政が連携した環境教育となりました。