骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは
表4
日本骨代謝学会が作成した原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版)を用いて、骨粗鬆症の有病率を男女別、年齢別に推計した結果から、日本における骨粗鬆症の有病率について次のような傾向がみられます。
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参考資料

          財団法人骨粗鬆症財団企画 『最新骨粗鬆症』より

      財団法人骨粗鬆症財団 ホームページ

      e治験ドットコム   ホームページ

      日本イーライリリー株式会社  ホームページ                                                                                           

 

骨塩量定量値

脊椎X線像

正  常

 YAM80%以上

 なし(骨萎縮なし)

骨量減少

 YAM70%以上~80%未満

 疑いあり(骨萎縮度I度)

骨粗鬆症

 YAM70%未満

 あり(骨萎縮度II度以上)

図3
X線吸収法
  骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、長年の生活習慣などにより骨の量が減ってスカスカになり、骨折をおこしやすくなっている状態、もしくは骨折をおこしてしまった状態のことをいいます。
 私たちの骨は18歳ごろをピークに、年をとるごとに少しずつ減っていきますから、骨量の減少それ自体は生理的現象ともいえます。
 そこで、骨量が2~3割も減り、骨の構造が弱くなって、その結果として骨折を起こしやすくなった状態ではじめて骨粗鬆症という病名がつくのです。
  骨量の減少は、おもに骨の中のカルシウムの減少でもたらされるものです。骨を壊す破骨細胞の働きでカルシウムを取り出す一方、壊された分の骨を骨芽細胞が作られますが、40歳ぐらいから二つの細胞のバランスが崩れ始め、壊される量に作る量が追いつかなくなって骨量が減ってきます.
また、骨全体が弱まって骨折してしまうため、折れてしまった骨が元に戻るまでに時間がかかるようになってしまいます。また、骨折が原因で日常生活行動(ADL)の低下、寝たきりの原因の第1位が脳卒中、第2位が老衰、第3位が骨粗鬆症による骨折であることから、高齢社会が抱える問題の一つとなっています。
 わが国の骨粗しょう症の患者さんは、女性が約800万人、男性が約200万人、合計1000万人と推定されています。これは、高齢化社会に伴ないさらに増加していく傾向にあります。
測定方法


骨のX線写真の濃度から測定する 
〈MD法〉
 MD(Microdensitometry)法では、階段状あるいは傾斜状に厚さを変えたアルミニウムとともに、手のひら(第二中手骨)をX線撮影します。アルミニウムの厚さによって変化するフィルム画像の濃度をものさしに、骨密度を算出します。フィルムの保存ができるので、データの長期管理が可能です。
 この方法は、
(1)骨折リスクの予知がある程度可能
(2)体幹部へのX線被爆がない
(3)X線撮影自体は短時間で済むので、多数例のスクリーニングに適している
  などの利点があります。しかしながら、この検査では、手の骨量から脊椎などの骨量をある程度推測できるものの、微量な骨量の増減を正確に測定することができないし、解析に時間がかかり、精度もあまり高くない、といった問題点もあります。
 そのため、撮影データをコンピュータに取り込んで解析したり、高性能のカメラを使用するなど、測定精度の向上や解析時間の短縮が図られています
YAM:若年成人平均値(20~44歳)
超音波を用いて測定する方法
 超音波が骨を通過する速度(超音波伝播速度:SOS)は、骨密度と骨の弾力性、を加味した指標として表現される。通過の際に超音波のエネルギーが減少した量(超音波減衰係数:BUA)は、骨強度に反映して測定します。これらのデータから、骨梁の3次元構造(分布状態)などの評価ができます。
 X線の被曝もなく、測定・結果の解析も短時間ですみ、装置が小型・軽量などといった特徴があるため、スクリーニング検査に適していると考えられています。
 この方法では踵骨(かかとの骨の95%は海綿骨が占める)が測定されています。
低周波超音波法
専用の小型CT装置も登場
〈pQCT法〉
 pQCT(PeripheralQCT)法は、前腕骨(橈骨)でのCT撮影で、専用の小型装置をもちいます。末梢骨の測定で体幹部の骨の評価ができる方法として期待されています。
 面積ではなく体積あたりの値が求められる、海綿骨と皮質骨の各々の骨密度がわかるなど、QCT法と同様の長所をもちます。そのうえ、QCT法と比較して被曝量がきわめて少ないなど、QCT法の短所も軽減されています。
広く普及しているCT装置での測定
 〈QCT法〉
 QCT(Quantitative Computed Tomo-graphy)法は、すでに普及しているX線CT装置をもちいます。ファントムとよばれる測定の基準となる物質を背中に敷いて撮影し、ファントムとの比較によって腰椎の骨密度を計測します。
 骨をある厚さにスライスした状態でみるため、【g/cm3】の単位で計測ができ、真の骨密度を求められるのが特徴です。
 また、海綿骨と皮質骨の密度を別々に算出できる、骨梁の分布状態の評価が可能、といった長所もあります。
 しかし、測定時間や精度、X線の被曝量が多いなどの問題点も指摘されています。

X線CT法
DTX-200
現在の測定法の主流はDXA法
〈DXA法:二重X線吸収法〉
 DXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法は、2種類のX線を使用することで、水で覆わなくても測定を可能にしたもので、現在の骨密度測定の主流となっています。すべての骨の測定が可能で、骨密度のほかにも、骨の形態学的測定や、体脂肪量、除脂肪体重といった体組成の測定もできます。
 問題点としては、データの結果が【g/cm2】(面積あたりの重量)で算出される点があります。体積あたりの重量ではないので、真の密度とはいえません。また、測定部位によっては毎回同じ姿勢での測定がむずかしく、加齢による影響など、変化の様子が見づらいのも問題点のひとつです。
 さらに、装置によって骨密度の算出方法が異なり、同一装置でも測定モードが変わると、値に誤差が出る可能性があります。経過を観察するような場合には注意が必要です
X線ビームの吸収率から測定する
〈SXA法:単一X線吸収法〉
 SXA(Single Energy X-ray Absorptiometry)法は、単一波長のX線ビームを照射し、骨の組織に放射線がどのくらい吸収されるかによって計測します。骨のまわりの組織(筋肉や脂肪)による影響を避けなければならないので、照射対象を水で覆います。このため、測定可能な部位が橈骨(ひじから手首までの骨のうち親指側にあるもの)や踵骨(かかとの骨)に限られます。
手(MD法など)
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骨密度の測定部位

日本代謝学会が作成した 2000 年度版「原発性骨粗鬆症の診断基準」では、「骨密度測定は原則として腰椎の骨密度( DEXA 法)とする。ただし高齢者において、脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には大腿骨頚部骨密度とする。これらの測定が困難な場合は前腕部、第二中手骨( DIP 法)、かかとの骨密度を用いる。」とされています。
原発性骨粗鬆症の診断基準

  低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず、骨評価の結果が下記の条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断します。
脆脆弱性骨折有り
  脆弱性骨折とは低骨量が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折とされ、骨折部位は脊椎、大腿骨頸部、橈骨遠位端、その他とされています。
また低骨量とは骨密度がYAMの80%未満、または脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合とされています。

脆弱性骨折の有無
  脆弱性骨折が認められない場合は骨密度がYAMの80%以上を正常、70以上80%未満を骨量減少、70%未満を骨粗鬆症としています。これらのカットオフ値は初期の骨粗鬆化である骨萎縮度 I 度例と骨萎縮なし例をROC解析で良好に分離できる値(YAMの80%)、椎体骨折例と非骨折例をROC解析で良好に分離できる値(YAMの70%)として設定されたものです。
脊椎X線像での骨粗鬆化の評価 は、従来の骨萎縮度判定基準を参考にして行います。

  1. 内分泌性:性腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、Cushing症候群、糖尿病
  2. 栄養性:栄養不良・不足、高ナトリウル摂取、アルコール過剰摂取、カフェイン過剰摂取、壊血病、たんぱく質欠乏
  3. 薬物性:副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、免疫抑制剤、コルチコステロイド、ヘパリン
  4. 先天性:骨形成不全症、ホモシスチン尿症、Ehlers-Danlos症候群、Marfan症候群、Wilson病、Menkes病、乳糖不耐症
  5. 不動性:全身性(臥床安静、対麻痺、宇宙旅行)局所性(骨折後等)
  6. その他:慢性関節リウマチ、糖尿病、肝疾患、胃切除後、慢性閉塞性肺疾患
続発性骨粗鬆症
  骨粗鬆症の原因が薬剤や他の疾患などにあるもので、原因別に内分泌性、栄養性、薬物性、不動性、先天性、その他に分かれます。それらの中では、特にグルココルチコイドの投与により誘発されるステロイド骨粗鬆症の予防と治療が重要な課題となっています
  1. 特発性骨粗鬆症
    ●若年性骨粗鬆症
    ●妊娠後骨粗鬆症
  2. 退行期骨粗鬆症
    ●閉経後骨粗鬆症
    ●老人性骨粗鬆症
  3. 原発性および続発性副甲状腺機能亢進症
  4. 骨軟化症
  5. 高度な変形性脊椎症
    (脊椎の骨量減少や骨折の有無の判定に困難を来す場合)
  6. 慢性関節リウマチ
  7. 悪性腫瘍の骨転
  8. 明らかな外傷
  9. 下記の疾患に伴う続発性骨粗鬆症(二次性骨粗鬆症)
原発性骨粗鬆症
  原発性骨粗鬆症は特発性骨粗鬆症と退行期骨粗鬆症に分類されます。
特発性骨粗鬆症には若年性骨粗鬆症と妊娠後骨粗鬆症があります。前者は思春期前期に発症し、その後3~4年で自然軽快するものです。後者は胎児による大量のカルシウム摂取や出産後の急激なエストロゲンの分泌低下が原因で起こります。いずれも発生率はきわめて低く、妊娠後骨粗鬆症の報告例は国内外で100例に満たないとされています。
 退行期骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症と老人性骨粗鬆症に分類されます。
閉経後骨粗鬆症は閉経によるエストロゲン欠乏により骨吸収が亢進し、骨量が急激に低下することで発症します。病型は骨吸収と骨形成がともに亢進する高代謝回転型とされます。
 老人性骨粗鬆症は60~65歳以降にみられる骨粗鬆症で、老化に伴う腸管や腎機能の衰えによる血中カルシウム濃度の慢性的な低下がPTHの分泌を促し、これに老化による骨芽細胞の機能低下も加わって骨吸収亢進と骨量低下を招来するとされます。病型は骨形成と骨吸収がともに低下した低代謝回転型とされますが、高代謝回転型のものもみられます。

骨粗鬆症の分類

図2-4:骨量の経年的推移の男女差
人間の骨量は思春期後期から20歳頃にかけて最大値(最大骨量、peak bone mass)に到達し、以後40歳半ば頃まで最大骨量は維持されますが、それ以後は加齢に伴い減少します。
特に女性では、閉経に伴う女性ホルモンの喪失後、骨量の急速な減少がおよそ10~15年続き、以後加齢に伴い、緩やかな減少に移行します。一方、男性ではこのような急激な減少はみられず、加齢とともに緩やかな減少が進行します。骨粗鬆症の有病率の男女差の背景にはこのような骨量の変化の男女差があり、加齢は男女に共通する骨粗鬆症のリスクファクターですが、女性においては特に閉経後の女性モルモンが最大のリスクファクターです。
  • 有病率は男女とも加齢に伴い増加します。
  • 女性の有病率は閉経期(50歳前後)を境に増加が始まり、以後も継続的に増加します。70歳代後半以降は2人に1人が骨粗鬆症です。
  • 男性では60歳代後半以降に次第に増加していますが、急激な増加傾向はみられません。
  • 男女比は約1:3で、女性に多い。
有病率