私はコンピュータ将棋に関してはあくまで素人ですから、こういうのは例えば山下 宏さんのような本職のかたがお答えするのがベストとは思いますが、わかる範囲で お話しさせていただきます。
私は「極め2」との対局で棋力を磨いていますが、金沢将棋とYSS7・0との対局
棋譜を途中まで入力してみたところ
先手の疑問手7五歩では「極め2」のハイパー3では8三金打でした。その後コン
ピュータ同士の対局で進めたところ、先手が龍で必死をかけたところから、後手の
ハイパー3は何と35手の王手の連続で勝ってしまいました。
「極め2」は「金沢将棋2」よりも強いのではないでしょうか。このソフトは学習
機能もついていて、勉強になります。
まず、その局面までもっていく技量も必要です。それに悪手を指すには悪手を指す
なりの背景があって、例えばコンピュータや人間の高段者がよく陥るのは、中途半端
に先が見えすぎるゆえの悪手です。
結局、どのソフトが強いのか決するには実際に対戦させてみるしかありません。さ
らに、ソフトどうしの相性もあるので、コンピュータ将棋選手権のように、総当たり
かせめてスイス式トーナメントでなければ決めることはできないのです。
大会は市販ソフトを用いているのではなく、金沢将棋もYSSも大会用に特別調整 したソフトを使っています。さらに、この2者は当時最速のアルファ500MHz、 最速のパソコンの2倍以上の能力のマシンを使用しています。極め2のハイパー3と いうのがどういう強さなのかは知りませんが、大会は30分の持ち時間の制限もつい ていますから、たぶん吉川さんがご使用になっている環境では大会を勝ち抜けないの ではないでしょうか。
なお、「AI将棋2」には学習機能はついていません。山下さんは、現時点では学 習機能があっても大した実力向上には結び付かない、と考えているようです。
ただ棒銀に対して必ず端歩をついてしまうという致命的な弱点があります。「AI
将棋2」ではその点どうなのでしょうか。
実際のところでは、じっとしてるとそのうち突いてくるようです。山下さんの発想
は、序盤は何とか適当にやりすごして読みと大局観がものをいう中終盤で勝負!とい
うものですからはっきり言って「AI将棋2」の序盤にはあまり期待しない方がいい
です。
この発想は、たぶん山下さん本人の経験に基づくもの。山下さんは大学の将棋部で
アマ4段の実力を身につけ、東北地区の学生大会でベスト4に入る戦績を残していま
すが、その序盤知識は貧弱、彼より定跡知識の多い初段はいっぱいいます。序盤知識
なぞ真の実力とは関係ない、というわけです。
山下さんの最終目標は羽生や谷川を負かすソフトを創ること。それは、定跡に頼る
のではなく、新たな定跡を創るようなソフトでなくては到底不可能です。彼は、いず
れコンピュータ将棋が進化すれば棒銀の変化を読み切って端歩を突かなくなるはず、
と考えていると思います。
私は今年初めてコンピュータ将棋選手権の観戦に出かけたのですが、それぞれのソ
フトが様々な発想で創られているなと感じました。
YSSの発想はここまで述べているように読みと大局観で中終盤勝負。山下さんは
特に読みを重視していて、今回、画期的アルゴリズムを採用したといってました。
金沢将棋は中盤の手作りに特徴があり、中盤の攻めの強力さは他のソフトの及ぶと
ころではありません。山下さんもなぜあのような手が発生できるのかわからないと言
ってました。反面、大局観は未熟で遊び駒の評価が甘いようです。YSS、AI将棋
2なら、たぶん、7五歩も8三金も指さないような気がします。
柿木将棋は吉川さんのご要望にもっとも近いかもしれません。柿木さんは日夜多く
の定跡書を研究してソフトに組み込んでらっしゃると聞きました。YSSや森田将棋
は、柿木将棋のような序盤知識重視のソフトに対し、いかに定跡を外すかに腐心して
いるようです。
森田将棋はどうやら大局観重視のソフトのような気がします。いずれ進歩したあか
つきには大局的に判断して棒銀に対して端歩を突かなくなるようなソフトになること
を目指している、と感じました。
以上、思わぬ長文になってしまいましたが、ご参考になるでしょうか。
せっかく時間をかけて書きましたので、よろしければご質問のメールと共にHPの 方に掲載させていただけませんでしょうか。m(_ _)m
97/06/29(日) 16:08 藤田 勉(KHF07332@niftyserve.or.jp)