1999年山口県名人戦:優勝への散歩道


・・・・・その道程はたとえていえば散歩のようなものであった・・・・・

 発端はその一週間前に、アマ名人戦の周防地区予選があると聞きこんだことであった。 まあ、このあとは当分でかい大会はないそうだし、様子見にでてみるか、そんな気持ちで 藤田は予選大会に臨んだ。
 周防地区予選の当日の会場は予想以上に参加者がいたが、その大半はB,C級で、A級は20 人強、くじ運良く、それだけでベスト16であった。
 ざっと、様子をうかがっていると、A級の中でもそれほどの豪の者は少なそう。それもそ のはず、後で知った話では、私ともう一人を除いてはすべて3段クラス以下であったのだ。 参加者の中で気になるのは、年配の一人、少年、若者、それともう一人、これは見覚えが あった。北村六段である。幸い少年もしくは北村六段とは決勝まで当たらない。だが、緒 戦の相手は年配の一人、周りの噂ではかつてはかなりの実績を持っていたらしい。しかし、 心配することはなかった。やってきた戦形はがちがちの4枚の居飛車穴熊、こんなのは ノーマルの風車の好餌である。
 早くも準準決勝となったが、その相手が最初に気になった若者である。しかし、これ も心配はなかった。居飛車穴熊から四手角、盤上英雄伝説外伝で書いた加賀屋五段との一 戦と同じ5筋交換型風車の一戦と同じ戦形である。思ったとおり相手はそこそこ指すよう で強襲をかけてきたが、受ける展開はこちらの望むところ、程なく完封となった。ちなみ に新聞記事によると卒業したばかりの山口大のポイントゲッターとのことである。
 準決勝の相手は問題外、なんとツノ銀中飛車に7三桂戦法である。問題外の割に危なか ったという話しもあるが(^^;まあ、表面上は何事もなく決勝へと散歩道を進んだのであった。

 さて、決勝の相手は北村六段である。記憶違いでなければ、北村六段とは以前に「山口県 東部地区職団戦」という超ローカルな大会で当たったことがある。そのときは飛車の素抜き で勝ったが今度はそうはいくまい。まあ、県大会の代表権はすでにあるから気楽だ。
 こちらの中飛車に対し袖飛車、こちらも袖飛車に。角道を歩で止めてきたので持久戦、風車 対矢倉に移行。
 玉を固めにでた北村六段。ここをチャンスと見て左翼を伸ばす。さて、どう対応してくるか。 ・・・・・あれれれ?簡単に一歩得、押さえ込み体制になっちった。玉頭の歩のあわせはさす がに強いが、そんなところは放棄!何時ものごとく王様を逃げ出す私。・・・・
 大優勢だったが・・・・・・調子にのったのが良くなかった。北村六段の反撃に歩を叩いた のが余計。金取りに打った桂に対し銀取りの桂!一発でしびれた・・・・・・。

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 ふむ、他の将棋も見た感じ、さすがにねじり合いは強いが、見落としは結構あるし序盤戦は さほどでない。勝ち越すのは難しくとも勝てない相手ではないと見た。北村六段より強いのが いないとすると、これはひょっとして・・・・・・。

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 などと考えつつ県大会。山口県の方式はちょっと変わっていて、周防、長門両地区で、A級、 B級から2名ずつ、計8人が代表である。これに本来、支部名人・アマ名人が加わるのだが、 今回は欠席。4人ずつのリーグ戦の一位どうしで決勝戦となる。
 緒戦は長門地区のB級の1位。対局終わって、即、帰ろうかと思った。(^^;
 たれ歩に飛車を浮いて受けた手が悪く、一見無筋の重い銀打ちでアウト。教訓:おっさん 将棋は攻めさせたら怖い(T_T)

 くそう、まあ、しかたない。あとは気楽にさそうや・・・・・・・・・そうしたら残りす べて勝った。

 さすがに周防Bの2位には勝つ。長門A級1位は観戦記者の重本五段。すべての棋譜を見て いたとみえて、腰掛け銀で中飛車を外される。しかし、飛車先を伸ばしてから6五歩の仕掛 け?これはいくらなんでもない。なんとか、同率決戦にもちこんだ。

 同率決戦は3人トーナメント。緒戦、長門地区のB級の1位。先の教訓を生かして攻めこ んだ!少々無理な仕掛けであったが、あっさり受けを間違えてくれる。
 もう一度重本五段。いくら散歩気分とはいえ、さすがに疲れてきた。急戦調の出だしから 持久戦へ移行。風車から盛り上がって押さえ込み!まあ、いろいろあったが、結局は角を一 枚盗んで、得意の駒得から時間勝負の展開であった〜〜〜。

 決勝戦、相手は再び北村六段で私は後手番。作戦の予定は陽動振り飛車か居飛車風車。 まともに中飛車にするより、序盤戦での作戦勝ちを目指しやすいと考えた結論である。
 しかし、北村六段は7八飛・・・・弱った。左美濃はやられそうだし、急戦は論外。 三間飛車に位取りはやる気がしない。しかたない、ここは熊か・・・・・。

 ともかく銀で蓋をする間に、北村六段の作戦は・・・へ?急戦向かい飛車????
 片美濃に組んでて中央が薄い上に一手損だし、対穴熊に良い戦法とはおもえんがなあ。
 まあ、8筋来る間にこちらはもちろん中央を。あれま、角銀交換の駒得の上中央突破で龍。 なんか大優勢だ。いやあ、やっぱ居飛車穴熊やっても中飛車は心地よいのお〜

 ・・・・・・うっ、こ、こ、こ、これにこのまま勝つとひょっとして優勝だ〜・・・・ 受けにまわりたいのを必死にこらえて玉頭を攻める、攻める、攻める。
これで一手勝ち、詰む筈だ、う、おちつけ、まだ時間は半分以上15分は残ってる。 うむ、5五龍で詰みだ・・・・・


 ・・・・・・・・という次第で、散歩してたらいつのまにかの優勝でした。よもや、この私に かぎって居飛車穴熊での決勝とは、夢想だにしてませんでしたねえ。
 

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