Baby-Pro REPORT(2) [マシュマロJフィックス サーモの効果] |
サーモメディカルシステムの放熱効果の実験 | |
サーモメディカルシステムはベビーカーにも搭載されていますが、同じ名前でもカーシートのベンチレーションはその目的が大きく違うようです。それらの解説と実際の効果について、レポートします。 <はじめに > 展示会でこの商品を見たとき、ベビーカーなら背中にたくさんの穴を開けている当サーモメディカルシステムですが、通気口が側面だけで、背中には何も変わったところがなかったので、ふと疑問に思いました。これで赤ちゃんの熱は効果的に放出できるのだろうか・・・。メーカーに尋ねると目的がベビーカーとは違うと説明されました。 真夏でなくとも、車の中はすぐに温室効果で高温に至ることを皆さんご存知だと思いますが、熱せられたカーシートは、エアコンを入れてもすぐには温度が下がりません。今回のサイドのベンチレーションは、熱がこもりやすく逃げにくい本体側面部に封じ込められた熱を効果的に放出する効果があるといいいます。 その効果とはいかほどのものなのでしょう・・・ |
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実験内容 | |
・7月 外気温28度 曇り時々晴れ ・使用車両 トヨタ グランビア ・使用座席 2列目 ・使用モデル サーモ マモール898 ・開始時 室温54.2度 ・エアコンの状態 フロントのみ使用 手動設定で風量最大にセット (風向きをすべて天井に向け直接カーシートに当たらないように配慮) ・その他 車両の方角は北向 日光が偏ってあたらないように配慮 念のためカーテンも閉じる 計測時間5分ごとに一時間 ・観測方法 室温の経緯とカーシートに4箇所ずつ配した温度計を10分ごとに記録 温度計ごとの固体誤差をあらかじめ測定し、修正して記録 |
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同じグレードのサーモフルマモールを2列目座席に頭を内側に向けて設置。(実際にはこのスタイルでの設置固定はサイズ的に無理ですが、条件を揃えるためです。) |
複数の同一規格の温度計と室温変化を計測するデジタル温度計を用意しました。 |
温度計は肩ベルト穴から差込み、赤ちゃんの肩部と頭部に当たる部分と股ベルト部分、および本体側面部の状態を計るためヘッドレストと本体サイドが密着する部分を計測。 ※いずれの部分も温度計の測定部が外気に触れず、中からの温度変化だけ影響する部位に配慮して設置。 @本体サイドとヘッドレストの密着部分 A頭部(肩穴から生地の裏に挿入) B肩部(同上) C股ベルト部 |
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片方のベンチレーションは閉じて、片方は全開に。 | |
実験start! | |
(細い線がベンチレーションを閉じたもの、太い線が開いたもののデータです) |
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実験結果 | |
実験開始時、カーシート本体は計測上限(50度)を超えており、実際の各部位の測定はエアコン投入後5分経過してからのものになりました。(曇り空のもとでしたが、本当に熱くなるものですね) 測定開始時、すでに温度差があります。@とCは他より高いですね。@は「カーシート本体部は熱がこもりやすい」といったメーカーの言葉を裏付けています。 Cはバックルの樹脂部分に半分接していたため、温度が高かったと考えます。 多少の誤差はあるものの、ABCの各点はさほどの違いなく両者とも変化しています。Cはベンチレーションに全くかかわりのない部分で、開始時、終了時とも同じ温度に落ち着きました。(実験の公平性を立証) ABはともに肩ベルと通しの穴に近い部位だったので、風の流れがあるのでしょう。どちらも同様にスムーズに下がっていっています。Bは肩ベルトカバーが邪魔をして流入が悪かったのか、頭部のAの方がスムーズに温度が下がりました。 問題の@の部位は直接ベンチレーションの影響が出るはずの部分で、実際に違いが現れています。ベンチレーションのすぐそばでは面白くないので、わざとヘッドレスト側にずらして測定しましたが、一時間後の温度差は3.5度。他の部位とは明らかに下がり方が違うのがグラフからもわかります。 計測にあたっては、温度計を奥深く差しましたので、ベンチレーションによる本体サイド部全体の温度変化が影響して結果に出ていると考えます。 Cは最初は温度が高かったのですが、独立した比較的小さなパーツだったうえ、上部に突き出した風のあたりの良い位置だったので、効果的に温度が下がりました。が、比較の対象ではありません。 |
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総評 | |
実際に赤ちゃんを乗せての実験ではありませんので、その点はご勘弁いただきたいのですが、比較実験としては良いデータが拾えました。 結果的に背中の部分はすでにたくさんの肩穴があいており、もとより放熱効果があることがわかりました。逆にこうした穴のない本体部(今回の場合側面部)は、背中部位よりかなり熱がこもりやすく、また放熱もされにくいことが分かりました。(実験最終データで頭部との温度差は4.5度) サーモシリーズのベンチレーションを開くと、本体側面部の熱も、背中部分と同様かそれ以上のスピードで降下していきます。 これらのことから、サーモメディカルシステムは、赤ちゃんの背中部への効果は直接期待できるものではありませんが、夏場のカーシートの高熱を、エアコンの利用によって効率的に放出し、全体的に快適な状態に移行しやすい仕組みとして一定の効果はあるといえます。 側面のベンチレーションだけで全体的な効果は、期待する方が間違っていると改めて思いましたが、その部位が最も熱のこもりやすい部位であることがわかると、なるほどあってもいいなと感じます。実験によって出てきた3.5度の温度差に予算が妥当かどうか良くご検討下さい。 |
< あとがき > この実験はBaby Proの独自の実験です。専門の学者ではありませんから、内容の正確さは?ですが、可能な限り厳密に行いました。結果、理にかなったデータが出たので、ほっとしています。正直、効果が全く計測できなかったらどうしよう・・・とも思いましたが、裏づけのないものは販売できるわけもなく、アップリカの威信は保たれました。 「エアコンをカーシートにダクトで直結しようか」といったとっぴな案さえもあったそうですが、それくらいメーカーはカーシートの熱のこもりを気にしているわけですね。 結果を見て、サーモはそれなりの意味があることが分かりましたが、その部分に高い予算を回すほどではないことも同時に分かりました。言い換えれば、サーモ機構に感じる魅力以上に安い旧モデルがあればお買い得ということです。旧モデルは時間の問題でなくなっていきますが、掲載があるうちは平行して検討下さい。 毎年夏になるとカーシートによる低温火傷が話題になります。熱もこもったカーシートに寝かせてしまうと、乳児はどうすることもできず、ひどい場合は肌が炎症を起こし、火傷と同じ症状が現れます。 エアコンを入れればカーシートも徐々に温度は下がります。完全に下がりきるには実験データが示すように1時間近くかかってしまいますが、風を直射できれば、もっと早く下がるでしょう。夏場は直射日光を避けるシェードを使ったり、ちょっと早めにエアコンを始動したりする余裕がほしいですね。 |
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