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例によって、この文章はフィクションです。
智佳は、ビジネス・ホテルの受付をしている。
シフト制で、深夜勤務はないけれど、
日曜日休めると言うわけではない。
女性の受付は、3人しかいない、小規模のビジネスホテルなので、
連休もなかなかとれないそうだ。
英語の授業中は、ゴールデン・ウイークに、
「1日だけ休んで馬にのった」と言っていた。
授業が終わって。
「きょうはこれからどうするの?」
「今日は、休みでこれからは暇です。」
「じゃあ、ちょっとはなしてもいい?」
「別にいいですよ・・・」
で、近くのコーヒーショップに行った。
(晶と一緒に行ったところ)
「馬に乗ったって、どこで?」
「吉和(広島県廿日市市の山奥)のちかくです。」
「誰と?」
「兄と兄の彼女と友達と私です。」
「どうやって行ったの?」
「車ですね。」
「どんな車?」
「よくわかりませんが。」
「普通のセダン?」
「ちがいます。」
「ミニバンみたいなもの?」
「そうですね・・・」
「お兄さんの車・・・」
「そうです。」
「お兄さんっていくつ?」
「1個上で・・・」
「そんなこといわれると・・・」
「いいですよ。27です。」
「じゃあ、26?」
「ええ。」
「若く見えるね。」
「良く言われます。」
智佳はグレープフルーツジュースを飲んでいた。
僕は、ダージリン・ティーだった。
智佳は野球が好きで、カープフアンだった。
『広島でも、こんな女の子は珍しい。』
「カープは調子がいいと思う?」
「5割あるから、いいんじゃないでしょうか?」
「黒田(智佳が好きだと言った)
、巨人戦おしかったね、勝つと思ったけど。」
「そうですね。」
「昨日も(仕事から)帰って、ラジオを付けたら7-2で、
負けてるっていってったから、すぐ(ラジオを)切りました。
スポーツニュースも見ず。・・」
「勝ったら、スポーツニュースとかも見るの?」
「勝ったらですね。新聞も見るし・・・」
「どうして、カープフアンなの?」
「父親がカープフアンで、兄もカープフアンで、その影響で
私もカープフアンになったんですかね。」
「学生のころとかよく試合見に行ってました。」
「どこに座るの?内野、外野?」
「そうですね。外野の応援団の近くですかね。」
「応援団のお兄さんをチェックしたりしてました。」
「意外とかっこいいんですよ・・・」
「今は、仕事が忙しいんで、なかなかいけませんけどね。」
「そんなに忙しいの?」
「女の子は3人しかいないし。」
「男の人もフロントに立つこともあるけど、・・・」
「上司とか、あんまり好きじゃないですね。」
「どうして?」
「『たまに、おまえ、何年ホテルつとめてるんだよ!!』
と思うときがあります。」
「接客がわるいってこと?」
「そうですね。」
「どうして、英会話学校に入ったの?」
「仕事で、使うことがあるんです。外国人のお客様とかいるんで。」
「つい最近までは、すごくレベルの高い女の人がいて、
その人が同じ英会話学校にいたんですが、その人が、
今は外資系の、会社に移ってしまって、
私が、外国人担当みたいになって。」

智佳は、美咲が言っていた。
年末にlevelが上がった女の子だった。
僕は、2から3回しか一緒に授業を受けてなくて、
「優秀な女の子だな・・」と言う印象しかなかった。
「できれば、もっと英語のlevelをあげて、ほかのところにでも、
いけるようになりたいですがね。・・」
「海外旅行とか行ったことあるの?」
「1回だけ、香港ですね。」
「3泊4日で友達と行きました。」
「どっかほかに行きたいとこは?」
「今の状況では、無理ですね。まとまった休みとれないし・」
「行くとしたら、会社やめるときですかね・・・」
「行くとしたら、どこ行きたい?」
「イタリアかな?」
「とにかく、あんまり考えたことないです。・・・」
「ずっと、広島にいるの?」
「そうですね、今は舟入ですけど(広島市中区)、
観音(広島市西区)
竹屋町(広島市南区)とか、ずっとですね。」
「高校は?」
「基町(広島市中心部の県立高校)です。
本当は国泰寺(広島市中心部の県立高校
-全国的にはこっちの方が有名-)に行きたかったんですけど。」
「僕は、五日市で、市内6校は無理な人だった。」
「大学は差し支えなければ?」
「修道です」(普通レベルの私大)
「一応英文科ですよ。」
「そうなんだ。」
「今日は本当にいいの?」
「別にいいですよ。」
「休みの日とかはどうしてるの?」
「そうですね。友達と会ったり、食べたりしてます。」
「友達って、休み一緒なの?」
「同じようなシフトの勤務している友達がいて、
同じ日に休みをとってあったりしてます。」
「今日は?」
「その人といつも会うわけじゃないから・・・」
「じゃあ、ちょっと、ウインドーショッピングでもしない?」
「なんかやりたいことがあれば、言ってくれるとありがたいけど。」
「ないですね別に・・・」
『何が好きなのか?』
この期に及んでわからなかった。
興味のありようがわからないのは、
かなり、扱いづらい印象をもった。
でも、付き合ってくれるというのだから、
ありがたく受け入れなければならない。
「買い物するときはどこ行くの?」
「うーん・・・」
「パルコ?」
「そごう・・ですかね」
「そうなんだ、じゃ、そごうでいい?」
「別に構いませんけど・・・」
本通りから、紙屋町までは、シャレオと地下街を通っていく。
目に着いたもので、彼女との会話の糸口になりそうなものを
見つけだして、振ってみる。
『この子は何に興味があるのだろう?』
まず、目に付くのは服だ。
「どんな服がすきなの?」
「かわいい服ですかね?」
「具体的にどんな感じ?」
「わかりませんね、可愛いと思える服って。」
「好きな(ファッション)雑誌とかあるの?」
「本屋で、ほとんどすべての雑誌を立ち読みしますね。」
「情報を集めるために。」
「どんな感じの服が今欲しい?」
「どうですかね・・・重ね着みたいなのがいいかな?」
地下1回とかには、食料品とかあった。
「何か好きな食べ物ってあるの?」
「チーズ好きですね。」
売り場の中で、チーズを探してみた。
チーズがたくさん並んだ売り場があって
いろいろなチーズ(主に輸入品)を見ていた。
「チーズだけ、一杯食べますね。
母親から、あんまり食べないように
って言われますけどね。」
「好き嫌いとかあるの?」
「かなり嫌いなものありますね。」
「果物とかもだめなのあるし、
チョコレートも嫌いだし。」
「果物ってどんな果物きらい?」
「苺とか、キューイとか、焼いたり、
干したりしたものも嫌いですね。」
「豆とかもだめだし。」
「好き嫌い多いんだ。」
「そうですね・・・」
1階にいくと、化粧品の売り場があった。
「化粧とかするよね?勿論。」
「今もしてますけど・・・」
「そうだよね・・・スッピンの訳はないよね・・」
智佳が少し苦笑したみたいだった。
「でも、あまりきっちり化粧はしませんね。」
「化粧品とか選ぶの?」
「化粧部員のひとに、すすめられるままに・・・」
指を見ると、何も塗っていないように見えた。
「マニュキアとかは?」
「仕事中はしませんね。あんまりいいこととは思われてないし。
ひどいのは、注意されます。」

それにしても指を見ると無造作に見えた。
「ネールアートとかする人もいると思うけど」
「そうですけど、私はあまり好きじゃないですね。]
「今日も何も塗ってないし・・・」
「ただ、磨いてもらったりはしてもらいますけど。」

エスカレータで2階にあがるとブランド品の売り場があった
「ブランド品とかに興味があるの?」
「そんなにないですね。」
「なんか、選ぶ基準とかあるの?」
「あんまりないですね。」
「どうやってきめるの?」
「なんか、いいなと思って、それで、どうしようか悩んで・・」
「決めるのに時間がかかるんだ・・・・」
「そうですね、なかなか、決めませんね・・・」
アクセサリーとか、宝石とかのショーケースが目に入った。
「アクセサリーとかはほしい?」
「あんまり好きじゃないですね。」
「イヤリングとかも、『重い』とかと思っちゃうし。」

智佳の耳には、ピアスの穴すらなかった。
勿論、イヤリングなどはない。
「ネックレスとかもいやなんですよ。」
「首が圧迫されているような感じがして・・・」

エスカレータとか上がっていると、
4階には水着があった。
「海とかいくの?」
「あんまり行かないけど、泳ぐのは好きです。」
「どんな水着着るの?」
「泳ぎやすい水着ですかね。」
「まさか、スクール水着じゃないよね?」
「そうじゃないですけど、セパレートの方が泳ぎやすいですよね。」
「僕も泳ぐの好きで、毎週金曜日の朝は泳いでいる。」
「今日は、面接があったから、泳がなかったけど、
泳ぐのは好き。」
「運動とかするの?」
「あんまりしませんね、」
「高校とかではクラブ入ってたの?」
「文科系クラブですね。放送部とか・・・」
5階には、舶来雑貨、ぬいぐるみがならんでいた。
「ぬいぐるみとかは?」
「可愛いのは好きですけど、あんまり置きたくないですね。
部屋せまいし。」
「部屋って自分の部屋?」
「そうですね。」
「あ、そうだ、家って一軒家?」
「マンションです。」
「マンションにみんな住んでるんだ?」
「そうですね。両親と兄と弟と・・・」
「3人兄弟?」
「そうですね。」
「珍しいね・・・」
「そうでしょうね・・・」
「お兄さんって?」
「優しい人ですかね。
「わたしお兄ちゃん子だったから・・・」
「どういう意味?」
「子供のころから、お兄ちゃんと遊んでました。」
「ふーん、女の子は君一人?」
「そんなこともないですね、友達にも兄弟がいて、
その中に女の子もいたし・・・」
「じゃ、何して遊ぶの?」
「野球とか、サッカーですかね?」
「えー、男の子と一緒にやるんだ・・・」
「そうですね。でも、私年下だから、
手加減はしてくれると思います。」
「また、『ままごととかしたい』と言ったらしてくれるし。」
「ままごととかもするんだ・・」
「そうですね、その頃はしたかったんですね・・・」
花があった。
「好きな花とかあるの?」
「花はあまり知りませんね・・・」
「部屋に花飾ったりとかしないの?」
「面倒くさいですね・・・」
「面倒くさいのか・・・」
「私マイペースで、かなりのんびり屋で優柔不断なんです。」
「部屋は広い?」
「そんな広くないです。」
「ベット?布団?」
「ベットです。」
「机とかは?」
「パソコンを置くラックみたいなものはあります。」
「内装とかは?」
「マンションなので、そんなにいじれません。」
「カーテンとかは?」
「自分で決めました。」
「何色?」
「ピンクかな、白にちかい。」
「寝るときはパジャマ?」
「そうですね、ジャージの時もあるし。」
「部屋にいるときは、どんな格好してるの?」
「T−シャツ、ジャージ、楽な格好が多いですね。」
「ようやくわかったよ、君は、自然体で楽なのがいいんだね。」
「そうでしょうね。」

眼鏡売り場があった。智佳は眼鏡をかけていた。
「眼鏡はいつもかけてるの?」
「そうですね、いつもかけてます。」
「コンタクトにしたいとか思わないの?」
「思いませんね、恐いですね・・・
レンズの手入れも大変だし。」
「(裸眼)視力はいいほう?」
「悪いですね、0.01?0.02ぐらいですかね・・」
「その眼鏡は何年ぐらい使ってるの?」
「もう3,4年かな?」
「私の友達で、目をレーザー手術した人がいます。」
「それで?」
「今は、裸眼で、正常に生活していますが。」
「手術したい?」
「ちょっと恐いですね・・・」
「保険もきかないらしいしね・・・」
「その人は、知りあいにその手術をする人がいて、
その人の実験台(?)になったみたいですけど。」

6階には、本屋があった。
「何か興味あることある?」
「世界史とか、古代文明に興味ありますね。」
「どこでもいいの?」
「ローマ時代とかいいですね。」
そういいながら、ローマ時代の本とか、手に取ってみていた。
「古代史とかも昔は興味ありました。」
「これも、お兄ちゃんとか、母親の影響ですかね。」
「学校の勉強は、そんなにできませんでしたけど、好きでしたよ。」

その階には、パセーラとの連絡通路があって、
virgin mega store(レコード屋があった)
「好きな、アーティストとかいるの?」
「ゴスペラーズ好きですね。有名になる前から好きでした。」
「友達も好きで、ファンクラブに入っていて、
今度沖縄に行くとか言ってました。
私も誘われたけど、仕事が仕事だから、断っちゃいました。」

ゴスペラーズのエリアを見つけて、見ると
10枚ぐらいのCDがあった。
「ほとんど持ってますけどね・・・」
「コンサートとかも行きました。」
「どこでやるの?」
「NTTクレド・ホールとか、それから、
毎年、サウンドマリーナ
(広島の海辺でやる野外コンサート、
たくさんのアーティストが参加する)でもでてて、
私も行きました。」
「どんな感じ?」
「クレドホールは、ここでコンサートはしないでって感じですかね。」
館内放送で、時報が聞こえた。
『何時かな?』と思って携帯を見ると
16時だった。
『もうこんな時間なんだ・・』と思った。
「もう4時だね。チーズケーキでも食べる?」
「おやつということで・・・」
「別にいいですが・・・」
「どっかチーズケーキのおいしいところ知らない?」
「そうですね、アンデルセンのチーズケーキ好きですね・・・」
「じゃ、アンデルセンまでいこうか?
大丈夫、だいぶ長く歩いたけど?」
「いいですけど、」でもなんか考えていた。
「つらい?」
「『いいえ、近くに、おいしいチーズケーキ屋さんがあったかな?』と思って」
思いつかないので、アンデルセンに行った。
アンデルセンはもともとパン屋で、本通りの中央にあった。
で、歩いていった。
アンデルセンに行くと、
チーズケーキが丁度2つのこっていた。
『人気商品なんだ・・・』
「これだけ種類があっても私が食べられるのはこれ
(チーズケーキ)だけ。」

あと、ぼくは、アイス・ティー、
智佳は、フレッシュ・オレンジ・ジュースを頼んだ。
「飲み物にも好き嫌いがあるの?」
「コーヒー、紅茶はだめですね?」
「普段何飲んでるの?」
「日本茶ですかね。」
「日本茶?苦くない?」
「苦くはないですよ。家族がいつも飲んでいたから
たぶんなれたんでしょう・・」

チーズケーキは全然甘くなくて、さっぱりしていた。
本当にしつこくなくて、
『これって、本当にケーキ?』と思うほどだった。
でもおいしいとは思った。
「今日は疲れた?だいぶ歩いたけど・・」
「少し疲れました。」
「大丈夫?」
「勿論大丈夫・・」
「疲れた時とかってどうしてるの?」
「そうですね、マッサージとか受けますね?」
「女の子が1人でマッサージ?」
「友達とですかね、××××(名前が思い出せない)に
良く行きます。」
「どこにあるの?」
「あちこちにありますね。」
「それと、カイロプラクティックなどもしてもらいます。」
「へー、そうなんだ。」
「マッサージは脚だけですかね?立ち仕事なもので。」
「そうだったね・・・」
「首が少し曲がってたみたいなんですよ。」
「カイロプラクティックに行って、まっすぐにしてもらったら、
気分が良くなりました。」
「そうなんだ。」
食べ終わると、
「ちょっとチーズ買います。」と言って
チーズのブースに行く。
四角いチーズ(100グラムぐらい)が固まりでラップされていた。
それを丁寧に見比べながら、念入りに品定めをしていた。
本当に真剣そうなまなざしだった。
それで、3つぐらいの固まりを買っていた。
『全部今日中に食べるのかな?』と思うような量だった。
それで、智佳は広島市の中心部なので、バスで帰った。
「今日は、どうもありがとう、つきあってくれて。」
「別にいいですよ・・・」