『おーい、碇ぃ!すまんけど窓口たのむわぁ!』

「はーい!」



カウンター400HIT記念&伝言板設置記念

エヴァ手話外伝『公僕なシンちゃん!!』







こんにちは、碇シンジです。今仕事中なんだけど・・・・・。え?なんの仕事してるのかって?ここは宇部新都市市民センターっていうところなんだ。20世紀風に言うと『市役所』だね。
つまり、僕はいちおー公務員なんだ。あ、でもエヴァンゲリオンに乗っていた時もネルフに所属していたわけだからいちおう国際公務員だったんだけど。まあ、1年足らずの期間だけどね・・・・・・。あのとき、すべてが終わってからネルフはほんとうの『世界再建の要・人類の復興の砦』として再出発をしたんだ。相変わらず父さんが仕切ってるんだけど・・・・・・・。ミサトさんたちもそのままネルフに残ってる。ほんとのことを言うと、僕たちネルフの関係者は他に選択の余地は無かったんだ。だってエヴァンゲリオンという、まかり間違えば世界を滅ぼしかねないモノを扱ってたんだから。そしてカヲル君もいまはネルフでリツコさんと一緒に生体工学の研究をしているんだ。カヲル君とは・・・・・・ほんとにいろんな事があった。詳しく知りたい人は『新世紀エヴァンゲリオン』のビデオやHPを見てね。
碇ゲンドウ




それで僕は今ネルフから出向の形でここ宇部新都市の市民センターに勤務してる。え?なんでこんな本州の西の果てに来たのかって?MAGIの判断なんだ。詳しくは機密事項だから言えないんだけどね。守秘義務ってやつさ。はじめは僕だけここに来る予定だったんだけど、なぜかアスカと綾波も一緒についてきた。綾波の勤務先は冬月副司令の紹介らしい。なんでも冬月さんが京都で大学教授をしていた時のコネクションなんだって。アスカは・・・・第3新東京大学の大学院に通ってたんだけどそこの研究室と共同研究をやってたのが山口大学らしいんだ。それでアスカの研究室から一人派遣されることになって、アスカが立候補したんだって。聞いた話によると立候補というよりもアスカが押し切ったらしいんだけど・・・・・。
冬月コウゾウ




それで住んでいるところは、まず綾波は市内の中心街にあるマンションに独りで住んでいる。あの頃みたいな殺風景なマンションじゃないよ!綾波の勤務してる短大に久保田先生っていう面倒見の良い女性の教授がいて、その人が綾波のマンションを世話したらしい。綾波も久保田先生を頼りにしているみたいだよ。
僕が住んでいるのは中心地から少し離れた住宅街にあるマンションなんだ。勤務先からは車で20分くらいかな。ミサトさんなら10分で着くかもね。
アスカは何処に住んでるのかって?さすがに今は同居してないけどね(笑)。実は・・・その・・・僕の隣の部屋なんだ。宇部新都市に来てはじめにアスカの住むところを探して不動産屋を何件かまわったんだ。何件か物件はあったんだけどアスカのやつ、なんだかんだ言ってなかなか決まらなかったんだ。それで8件目の物件でやっと決まったのが今住んでるマンション。ここよりも良い物件も何件かあったのに・・・・・。そういえば隣り合った2部屋が空いていたのはここだけだったような・・・・・。おかげでいまだにアスカの食事は僕が作っている。ま、ミサトさんのビールのつまみを作らなくてもよくなったのはいいんだけど、ミサトさん元気にしてるかな?飲み過ぎて加持さんに迷惑かけてなきゃいいけど・・・・ってこれもホームシックかな?
葛城ミサト加持リョウジ






14歳の時、突然父さんによばれて第3新東京市にくるまで僕は「家族」というものを経験したことが無かった。幼い時、母さんが死んでからは・・・・・。父さんとも一緒には暮らせなかった。お互い一緒にいると傷つけあうと思い込んで・・・・それが恐かったから・・・・・。その僕が「家族」と呼べたのはやはり葛城ミサト、惣流・アスカ・ラングレーという2人の女性だとおもう。ミサトさんは僕とアスカの上司であるとともに僕たちの姉であり、時には母親だった。少々ズボラだったけど。

そして起こったサードインパクト・・・・。一度は『無』となった世界。でも世界は再び動き出した。それが渚カヲルというヒトの力であることを知っているのは僕たちネルフの関係者でもごく一部の人間だけなんだ。だから内緒だよ。

でもそのおかげで僕はすこしづつだけど、父さんとコミュニケーションをとることができるようになった。さすがに一緒に住むことはできなかったんだけど・・・・・。父さんは今リツコさんと一緒に暮らしてる。二人の間に何があったのか知ったのは、サードインパクトの影響が無くなって世の中が落ち着き始めた頃だった。

ある日突然父さんが僕のところに来て『シンジ、おまえに話すことがある。』っていうんだ。そのとき初めて母さんの事、セカンドインパクトの事、リツコさんとリツコさんのお母さんの事、ミサトさんのお父さんの事、加持さんの事、アスカの両親の事、そして・・・・・綾波レイの事を知った。父さんのこと、今までは好きになれなかった。けど、そのとき初めて父さんの素顔を少しだけ見たような気がした。だから父さんがリツコさんと暮らすって言った時、僕は『父さんがそう決めたのなら、僕はいいよ。』って答えた。
赤木リツコ







今にして思えば、僕は父さんを好きになれなかったんじゃなくて好きになろうとしなかったんだと思う。『逃げちゃだめだ!』が僕のアイデンティティだったはずなのに、結局僕は父さんから逃げていたんだ。父さんが『人類補完計画』なんてばかなことに手を付けたのも、母さんが死んでしまった事を認めるのが恐くて逃げていたからかも・・・・って思えるようになった。だから父さんがリツコさんと暮らす事を決意したのは、たとえそれがリツコさんに対する贖罪の気持ちがあったとしても、母さん・・・碇ユイはもうこの世にいないという現実を正しく認識することが出来たからだと思うんだよね。あたりまえのことだったんだけどさ。


あ、ごめんね。自分の事ばっかりしゃべっちゃって。うん、アスカも今じゃずいぶんとやさしくなったよ。あくまでむかしと比べればだけどね。アスカの子供の頃の事を父さんから聞かされた時、僕は今までいかに自分の事しか考えてなかったか思い知らされた。アスカのあの気性の激しさは、自分のアイデンティティを守るためのいわばATフィールドだったんだ。だから決して他人を受け入れようとはしなかった。他人を受け入れない方法が僕とは正反対だったんだ。結局似た者同士だったのかな、やっぱり僕たち。それまではたとえ一緒に住んでいたとはいえ、はっきりと家族っていう認識はなかったんだけど、サードインパクトのあと再びミサトさん、アスカ、そして僕の3人が顔を合わせた時『ああ、これが僕の家族だったんだ・・・・・』って、はっきりとわかった。それから僕とアスカはいろんな事を話せるようになった。そして・・・・・僕たちはそれぞれの生い立ちを話し合った。アスカの事はその前に父さんから聞いていたけど、彼女が僕に直接話してくれたのがうれしかった・・・・・・・。





それから、やっぱり綾波の事だよね。綾波の出生については・・・・・やっぱり一口じゃあ語れないけど・・・・・・でも、いまは綾波レイという一人の女性として生活しているんだから、それで良いと思う。過去を忘れちゃいけないけど、いつまでも過去にとらわれていたら未来はやってこない。綾波もずいぶん努力したから今の彼女があるんだとおもう。だから綾波にはほんとうに幸せになって欲しいと思うよ。でも、綾波が手話をやってるって聞いた時には正直驚いたなあ・・・・・・。そんなことなにも聞いてなかったんだよ。

あれは父さんに用事があってジオフロントに帰ったときのこと。用事を済ませて宇部新都市に帰ろうとしたら、ちょうど研究室からでてきたリツコさんとカヲル君にであったんだ。それで3人で途中まで帰って、リニアの出発まですこし時間があったから駅のちかくの喫茶店でお互いの近況を話してたんだ。リツコさんと父さんは結構上手くやってるみたいだった。ミサトさんと加持さんは相変わらず喧嘩ばっかりしているらしい。おもわず『困った二人ですね』っていったらリツコさんに『あら、シンジ君とアスカもでしょ?』って切り替えされてしまった・・・・・・。
そんな話をしていたら若いカップルが店に入って来たんだ。ウエイトレスの女の子が注文を取りに行くと、カップルの女の人の方がバックから携帯の端末のようなものを取り出して、何かを入力するとウエイトレスに見せていた。『なんだろう?』と思ってみていたらリツコさんが『あれはトーキングヘルパーと言ってね、言葉や耳の不自由な人が使うコミニュケーション補助装置なの。』と説明してくれた。注文を取り終えてウエイトレスがカウンターの方に戻っていくと二人が今度は手話で会話を始めたんだ。僕はこの時初めて手話というものを実際に見たんだ。悪いかな?とは思ったんだけどしばらく二人を見ていたんだ。なんだかとっても不思議な雰囲気だった。もちろん手話だから二人の声はないんだよ。でも話の雰囲気って言うか、そんなものが伝わって来たような気がしたんだ。そしたらカヲル君が急に

『手話は良いねえ、リリンの生んだ文化の極みだよ。そう思わないかい?シンジ君』

『え?カヲル君、手話がわかるの?』

思わずカヲル君に聞いてみたんだけど、カヲル君はニコニコしながら

『帰ったらレイにこのことを話してみるといいよ。』

としか言わないんだ。そんな僕らをリツコさんも微笑みながら見つめていた。そのうちリニアの時間が近づいたんで、僕たちはその喫茶店を後にした。




宇部新都市に帰って来てアスカと綾波にその話をしたら、綾波が手話の勉強してるって言うじゃない。カヲル君、綾波の事知ってたんだな・・・・・・。僕もアスカも知らなかったのに・・・・・・・。


























「あの、碇さん・・・・碇さん・・・・・いかりさん

「へ?あ!すみません!なんでしょう?」

おっと、自分の世界に入ってた。あ、福祉課の人だ・・・・。

「申し訳ない。また手話通訳お願いできますか?ちょっと窓口で込み入った相談らしいんで。」

「いいですけど、創さんは今日はいないんですか?」

「いやね、彼から言われてるんだ。手話通訳が必要な時は出来るだけ碇にやらせてやってくれって。」

「ええーっ!そんなぁぁ・・・・」

「とにかくたのむよ。じゃあ」


まったく・・・・・なんだよ・・・・もう。創さん、最近じゃ仕事にかまけてサークルにも顔を出さないくせに。そんなことじゃ、いまにサークルをクビになっちゃうよ。『逃げちゃダメだ!』、創さん!

さて、じゃあ行ってくるかな。係長にことわっとかなくちゃ。

「係長、そんなわけで福祉課まで行って来ます。」

「ああ。問題無い・・・・」




思わず僕はコケそうになってしまった・・・・・・・・・。






おわり


あとがき

こんにちわ、ひさしぶりの『エヴァ手話』UPです。今回は第壱話『瞬間、心重ねて手話でポン!』のサイドストーリーを書いてみました。ほとんど何も考えずに始めたこの『新世紀エヴァンゲリオン手話劇場』ですが、物語のバックグラウンドがはっきりとしてなかったもので。ここではじめてシンジ君が宇部新都市で何をしているのかが判明しました(笑)。実は今の今迄決まってなかったんですけど・・・。あ、第弐話でシンジ君が喫茶店を手伝っていますが、『公務員がアルバイトをしてもいいのか?!』などとつっこまないでください。あくまでふいくしょんですので・・・・・・・。

『新世紀エヴァンゲリオン』の本編は、とてもこんな雰囲気の無いシリアスな物語ですが、それはそれとしてこれからもエヴァ手話をよろしくお願いします(ぺこぺこ)。



登場人物の補足

碇ゲンドウ
シンジの父親。特務機関ネルフ司令官。
冬月コウゾウ
ネルフ副司令。シンジの母、碇ユイは彼の教え子。
葛城ミサト
ネルフ作戦部長。階級は三佐。家族に恵まれなかったシンジとアスカを自分のマンションに同居させて世話をしていた。ただし自分の家の家事はすべてシンジに世話をしてもらっていた。お酒大好きなカーキチお姉さん。
加持リョウジ
ネルフ特殊監査部所属。ミサトの恋人。
赤木リツコ
ネルフ技術部長。スーパーコンピューターMAGIは彼女の母親が基礎理論を構築し、彼女がシステムUPした。ミサト、加持とは学生時代からのつきあい。



おまけ

リリン
人類のことだと思ってください。
ATフィールド
Abusolute Terror Field。絶対不可侵領域。『君たちリリンも気づいているはずだ。ATフィールドは誰もが持っている心の壁だという事をね・・・・(byカヲル)』






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