祝・成人の日
アスカの通訳日記
Hi!惣流・アスカ・ラングレーですっ!
今日は1月15日、成人の日。アタシは宇部新都市の市民ホールで手話通訳をやった。そう、成人式だったのよ。ま、元旦はレイが第3新東京にも帰らないで通訳で待機していたしさ、たまにはやることやっとかないとね。創さんみたいになっちゃうもん。
式が始まるのは午前11時、終了は12時30分の予定。え、一時間半もひとりでやったのかって?ううん、いくらなんでもそれはねぇ。っていうよりも、ふつう手話の通訳はだいたい20分くらいを目安に交代でやるの。もちろん特別な場合や、緊急の時にはそういうわけにいかないこともあるんだけどさ。手話通訳には頚肩腕症候群っていう、やっかいな病気がついてまわるの。まあ、アタシ達みたいな駆け出しの通訳はともかく、仕事として手話通訳をしている専任通訳者なんかは、つねにこの病気と隣り合わせなの。だから、少しでも通訳者の負担を減らすために交代でやるってわけ。おわかり?
今日アタシと一緒に通訳をやったのは、米城さんっていう同じサークルの女性。市内の歯医者さんに勤めてる人なの。手話歴は20年近いんじゃないかなぁ・・・、サークルではやさしいお姉さんって感じかな?わかりやすく言えば、ミサトと正反対の性格の人。年齢は・・・・・いちおうサークルでは年齢不祥ってことになってるの。だいたい、レディに歳を聞くもんじゃないわよ!
米城さんの手話は、みていてとっても優しい感じがする。だから、男女を問わず若いろうあ者に人気があるんだ。性格もすごく優しい人だしね。そういえば、レイの手話も同じような優しさがある。レイって米城さんの影響をうけたのかなぁ。アタシはどっちかっていうと、佐藤さんのようなダイナミックな手話が好き。でもそのなかにやっぱり女性らしさを感じるのよね。佐藤さんの手話を見るたびに女の強さっていうのかな、あんなふうに表現できるといいなぁって思っちゃう。
それで、10時に米城さんと市民ホールの前で待ち合わせして、一緒に教育委員会の青少年課の人の所へ行った。要するに主催者との打ち合わせってわけ。そういえば、この時初めて米城さんから聞いたんだけど、この市民ホールの館長さんはアタシ達のサークルの大先輩なんだって。びっくりしちゃった。そのうち要約筆記の人たちもやってきた。要約筆記っていうのは、通訳の内容をモニターやスクリーンを使ってほとんど一言一句もらさず映し出すボランティアのこと。だって一口に聴覚障害者って言っても、手話のわからない人もいれば、反対に文章を読むのが苦手な人だっている。それに、ここのホールのように大きな会場だと、遠くにいる人は手話が見えないでしょ。もちろん、前もって通訳の必要な人は前の方に座ってもらったりするんだけどね。
そしていよいよ本番!アスカ、いくわよ!
って本当は初めに米城さんがやったの。へへっ。まあ、実際こんな大きな会場で通訳をやるのは初めてだったしね、それに米城さんの通訳を見ていたおかげで、あまり緊張しなくてすんだの。開式の言葉のあとは、市長と教育長のあいさつ。ハッキリいってこういう『あいさつ系』の通訳は、そんなに大変じゃあない。だって話の内容なんて、そんなに大差ないんだもん。だから、ある程度どんな話になるか予想がつくってわけ。まったく、日本人てぇのはねぇ・・。
問題はその後の記念講演。だいたいこういう記念講演っていうのは、スポーツ選手とか、作家とか、芸能人とか、そういう人たちがやるじゃない?その場合、専門用語が出てくると困っちゃうのよねぇ。もちろんある程度は前もって調べておくんだけど、専門用語を手話に置き換えるって結構大変なの。今年はなんとか言う名前の全日本のバスケットの元選手。アタシも米城さんもバスケは詳しくなかったし、まわりにバスケのことをよく知ってる人もいなかったから、アタシは鈴原のところに電話した。そしたら、あの熱血バカ!調子に乗って聞いてもいないことまで説明してくるの!だれもNBAのことなんて聞いてないてぇの!おかげでえらい長電話になっちゃった・・・。それでも、だいたいのことは教えてもらえたんだけどね。ちょっとだけ感謝してあげるわ。ヒカリのために。
そのあとは、新成人の誓いの言葉や、ゲームがあって成人式は無事に終わった。
式が終わって、米城さんとホールの外に出たら、振り袖姿の女の子が二人立ってたの。見たら、今年成人式を迎えた聴障会の青年部の女の子だった。いつもと違う服装だから気がつかなかったのよね。でもふたりとも、すっごくかわいかった!なまえはリョウコちゃんとミサキちゃん。ふたりとも市内の大企業の特例子会社に勤めているの。特例子会社っていうのはね、身体障害者雇用促進法っていう法律によってさだめられたものなの。しってる?従業員数が一定の数を超える企業は、その何%かは身体の不自由な人を雇わなくてはいけないの。特例子会社っていうのはそのために作られた会社なのよね。といっても身体の不自由な人だけじゃあないの。一般の会社員も一緒に勤務してるんだから。彼女たちの仕事は印刷の仕事。そういえば、印刷の仕事と耳の不自由な人との歴史って結構古いんだ。むかしの聾学校では職業訓練で印刷をやってたこともあるらしいの。いまでこそ、印刷はコンピューターでパッパッとやっちゃうけど、昔は活字をいちいちひらってたんだって。その活字をひらう仕草が『印刷』っていう手話の語源になっていたのよ。古い手話なんだけどね。このあいだ研修会で習ったの。
すぐに話がそれるわね。
それから、アタシと米城さんと新成人の女の子二人は一緒にNeonらいぶに行ったの。成人式のことをマスターに話したら、お祝いにってアタシ達にケーキをサービスしてくれたんだ!マスター、ありがとう。
それから、アタシ達はいろいろなことを話したの。ま、女の子が4人集まれば、だいたいなにを話すかは決まってるわよね。やっぱり、洋服のこととか、食べ物のこととか、好きな男の子のこととか、結構長い時間らいぶに居座っちゃった。てへへ、ごめんなさいマスター。
結局アタシ達はそこで解散することにした。リョウコちゃんとミサキちゃんは今晩初めて友達と飲みに行くらしい。晴れて大人の仲間入りってわけね。あんまり飲み過ぎるとミサトみたいになっちゃうわよ。
おわり
あとがき
成人の日はとっくに終わっていますけど、記念品ということでUPします。通訳の様子をもう少し詳しく書いた方が良いかな?とも思ったんですけど、あまり手の内を見せるとネタが無くなるもんで・・・。