叫ぶ少年
少年がいる場所
エヴァンゲリオン初号機
『正に悪魔か』
戦略自衛隊員はそう言った
光の羽をはやした巨人
人々が恐怖を覚えた存在
だから悪魔かもしれない
でも
生命の実・永久の命を得られるS2機関
知恵の実・ヒトである碇シンジを得た初号機は
神に等しき存在だった
意味無き殺人の代償は
25・26話を振り返る+αな投稿作品 by緒方紳一
『事が始まったようだ・・・』
ゲンドウはユイに逢うために
レイを利用する
『私をユイの元へ導いてくれ・・・』
レイの右胸から腹部へ
アダムが存在する右手を沈ませる
レイの右腕は既に落ちている
ゲンドウによる、ゲンドウための補完が始まろうとしていた
叫ぶシンジ
助けてくれる者はいない
利用しようとする者たちがいた
ゼーレ
ネルフの裏組織
人類補完計画の源でもある
初号機パイロット・碇シンジをよりしろとするために
『我らが僕エヴァシリーズは、皆この時のために』
キール・ローレンツは言った
己の欲望を満たすためにエヴァまで造った
狂ってる
己が常に正しいと思いこみ
何も知らないヒトまで巻き込む
意味がないのに
ゼーレにとっては意味があるかもしれない
だが今の生活に満足する者に意味はない
人工進化
彼らは進んだ人間になることを望んだ
何を犠牲にしても
少年は叫んだ
初号機が叫んだ
ロンギヌスの槍
月に突き刺さったオリジナルが
初号機に呼応した
遂に我らの願いが始まる
『エヴァシリーズを本来の姿に
我ら人類に福音をもたらす真の姿に
等しき人の祈りをもって真の姿に
それは魂の安らぎでもある』
エヴァシリーズは持っている槍で初号機を刺す
十字架に張り付けにするかのように
そして時間がたち一人の戦略自衛隊員が自嘲気味に言った
『作戦は・・・失敗だったな・・・・』
爆発が起きた
生半可なモノじゃない
大爆発だった
真相を知らない人達を巻き込んで
痛みも苦痛も与えぬまま消していった
サード・インパクトの勃発を知らせる花火のように
『まだ物理的な衝撃波にすぎん、アブソーバを最大にすれば耐えられる』
副指令・冬月コウゾウは混乱を少しでも収めるために檄を飛ばす
まだ物理的な衝撃にすぎない
この先に何かがあることを指していたが
この場所でそれに気が付く者はいなかった
セフィロトの樹が上空に描かれ
起きた大爆発
ジオフロントの本来の姿
黒き月
リリスの卵、と冬月は言った
伊吹マヤは縋るように言った
『私たち、正しいわよね』
青葉は答えた
『分かるもんか・・・』
シンジの精神はもうズタボロに等しい
何も知らなかったのに
隣人を失った悲しみ、恐怖と不安と自分の無力さを味わった
まだ少女は死んではいないが
少年は絶望的だと思っていた
そして目の前に現れた白い巨人
シンジはレイを思い浮かべた
その白い巨人は目を瞑ったかと思うと開いた
その目は赤かった
綾波レイそのものだった
その綾波レイのようなモノに恐怖するシンジ
次に目にうつったのは
白い巨人の姿をした
渚カヲルだった
恐怖にさらされ続けたシンジの心は
カヲルの存在に安堵感を覚えた
そして回想する
小さかった頃のイメージを
その少し前に
ゲンドウはレイに裏切られた
当然の結果だったかもしれない
ゲンドウよりも優しい笑顔を持つシンジに寝返ったのは
そしてアダムを体内に取り込んだ
アダムとリリスの禁じられた融合が果たされた
レイは聴いた
『お帰りなさい』
という声を
そして巨大化し
シンジと再会した
生命の樹になった初号機は
神に等しき存在
しかし神に等しき存在は
自我を失いかけた少年の思うままに
公園にいた
砂場にいた
ここに来たら何かがあると思ってた
でも、良いことはなかった
おかしくなっていく
わからなくなっていく
母親を求めたシンジ
同様に母親を求めたアスカ
二人は似ていた
性格は違えても
その母親の代わりにはなれなかったミサト
彼女は家族を求めた
完全な他人なのに
完全に理解し合うのは無理なのに
混乱がシンジを
理解不能なモノがシンジを
寂しさ、恐怖、悲しみ、空しさ、無力感がシンジを襲う
そして他人の存在を拒絶した
拒絶の、不安のない世界を求めた
『このままでは、個体生命のかたちが維持できません』
叫ぶように青葉が言った
一つ一つの死体の側で
一人づつ、綾波レイが見守っていた
いや、見送った
レイは
最後を迎える者の望む姿となって
最後に甘き死を与えた
黒き月
ジオフロントは既に宇宙
ガフの部屋は開き
個体生命はLCLとなって溶けていった
ユイと再会を果たした後、初号機に首を喰われたゲンドウを除いて
エヴァシリーズは
ロンギヌスの槍を更に突き刺す
体液が地球に降り注いだ
それを引き金に
魂を表す十字架が地表に一斉に浮かんだ
リリスこと綾波レイは
恍惚とした表情を浮かべていた
生命の樹・初号機は
リリスの中に入っていった
逃げ込んだ場所
他人の拒絶
混乱
そして
夢の終わり
リリスの首の左側がもげた
血のような液体が吹き出る
LCLの海の中で
全てが一つになった世界の中で
レイとシンジは体を重ねていた
そしてシンジは望んだ
もう一度元の世界を
自分の心の中でレイ、カヲルと再会した。
希望
分かり合えるかもしれないと云う
シンジは言った
『僕は、もう一度逢いたいと思った。
その時の気持ちは本当だと思うから』
皆の姿が浮かんだ
リリスの目から飛び出し
吼える初号機
黒き月は割れた
血のような液体を振りまいて
魂を地球に注ぐ様に
再生しようとする中で
シンジはユイと再会した
エヴァは無限に生きてられる
太陽すらなくても
たった一人でも生きていけたら
ヒトの生きた証と共に
それがユイの望み
それを知ったシンジは
母に言った
『さよなら、母さん・・・・・。』
肉体を捨て、魂が一つになるための入れ物だったリリスと黒き月は崩壊した
依代だったシンジがそれを望まなかったから
そのシンジは海の中にいた
LCLの海の中から地球の海の中へ帰ってきた
『ヒトの姿をイメージできれば誰もがヒトに戻れる』
綾波が言ったことを思い出す。
岸に上がってシンジが見た光景は
瓦礫の山と化した都市
時間がたてば元通りになるだろう
一度LCLと化した人もある程度は帰ってくるだろう
母の言った言葉
『生きていこうと思えばどこだって天国になる』
を信じて
砂浜に寝転がり
目を閉じた
サード・インパクト
欲深き者達が
己の正当性をこじつけ、主張して
今の人類を消すために利用しようとした
自分の理想の世界のために
滅びへの道を新生への道と言い換えて
人類を滅ぼそうとした結果
滅びの道を自ら進もうとした結果
無駄な死者が多かった
巻き込まれた人達が多かった
もし、いつか人類が滅ぶなら
その時に滅びへの道を選べばいい
新生への道を選んでもいい
人間が自分で神を創ろうとした結果
必要ではない死が多かった
神がいてもいなくても同じだろう
大事なのは生きようとすることだから
無駄な死は必要ない
無理に進化する必要はない
新たな世界に足を踏み入れるなら
そのまま新たな世界に進めばいい
進んでからでも
進化は出来るから
サード・インパクトは起こらなくてもよかった
むしろ必要なかった
セカンド・インパクトだけで
人類への警告は十分だった
それなりに意味はあったかもしれない
意味のない殺人は
命の尊さを後になって教えてくれるから
「もう十分だよ・・・」
そんな冬月の声が聞こえた
終劇
続劇決定?
あとがき
どうもこんにちは。学校の勉強もおろそかにこんな物書いてる緒方紳一です。
書いてて頭がおかしくなってきたのはご愛敬です。
で、書いてる途中で電波が飛んできて私の脳の中に入り込んでしまい挙げ句の果てに洗脳されてしまいました。
そして無謀にも連載をこの続きで始めようというプランが・・・・・。
さて、今回の投稿は『個人的に劇場版を振り返って』だったんですが
難かった
これが感想です。
最後の方に至っては混乱しながら書いてました。(笑
で、出来の方は読んでくれた皆さんが判断して下さい。
最後に創さん、ありがとうございました。使っていただいたことに感謝します。読んでくれた方にも感謝。
この続きを急遽やりたくなってしまったので、場所を探したいと思います。(爆
創さんのコメント
さっそく後編が届きました。緒方さん、おつかれさま!
EOE(The End of Evangelion)の解釈については、あの映画を見た一人一人の心の中にそれぞれがいろんな解釈を持っていらっしゃると思います。あえてそれに挑戦した緒方さんにまずは一言でも感想を送ってあげてください。
ところで、『続劇』決定とありますが、もしこのHPでよかったら、いくらでも場所は提供しますぜ。(にやり)
緒方さんへのメールはこちら
緒方さんのHP「RIDE on AIR」
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