全てを知った少年は
逃げてきた現実に再会し
現実に恐怖を抱いて叫んだ
少女は目を覚まさないまま
今も現実から逃げている
大人は現実に悩まされ
子供達は現実に苦しめられた
君と僕があるために
第4話 苦悩の先に
鈴原トウジ
フォース・チルドレンとして選出されるが、左足を欠損
彼の搭乗予定だったエヴァ3号機は、第壱拾参使徒・バルディエルに占有され
ダミープラグを起動した初号機に使徒として処理された。
初号機がエントリープラグを握り潰したために、左足が潰れてしまった
そして、チルドレンとしての登録は抹消されてはいなかったが乗る機体もないため疎開に出たが、チルドレンに関しての問題によって再びネルフへ招かれた。
送迎車でジオフロントまでやって来て
車内で付き添いの男は
「足があったほうがいいかい?」
と尋ね、少年は頷いた。
これを同意と見なし、その5分後、E計画の某研究室に於いてオペ開始
17時間後に終了、LCLプラントに移される。
その3時間後、神経接続が完了。左足は完全に復活
そしてジオフロント到着から24時間がたって、ようやく葛城ミサトの所へたどり着く。
「まぁ、ホンマに良かったですわ・・・。起きたらこんなもんが生えとって・・・・」
自分の左足を叩きながら見せるトウジ。
さすがに筋肉が落ちているために両足で立てない。それゆえに松葉杖をついて発令所のミサトの所までやって来た。
「しっかし、シンジも惣流もえらく辛かったんやろなぁ・・・」
トウジの級友としての言葉。
『自分は今は何もできない、今はあの三人に頼るしかない』
そう感じ続けた少年の言葉だった。
「しかし加持さん?」
「なんだい?」
「今、シンジ達は幸せでっしゃろか?」
少し考え込む加持
彼・トウジの言いたいことは分かっている
「ワシは今は不幸ではない、むしろ幸せですわ。足も復活するとは思うても見んかったもんで・・・・」
「でも、シンジ君とアスカは今は苦しい立場にある。この世界を苦しく、辛く思ってるだろう。」
「なにか・・・・ワシらに出来る事はないんですか?」
「アスカに対しては祈ること・・・。シンジ君に対しては・・そうだな、君が徹底的に話し掛けてやればいいだろう。」
「どないしてですか?」
「ま、やってみなくちゃ分からない。結果は神のみぞ知ると云ったところか・・・・」
トウジ、理解に苦しみ、困った顔をする。
加持は笑ってその場を去っていった。
付属病院病棟303号室 碇シンジ
薬品投与によって、今は眠りについていた。
体のどこが悪いというわけではない
『現実から逃げようとして
逃げ切れなくて
改めて現実を直視して
心を閉ざした』
だからここで眠っている
ただ、薬品を使って眠らせているのは、彼が恐怖のために暴れるのを抑えるため。
マヤはとまどっていた
MAGIの中に怪しいhtml形式のファイルを幾つか見つけたからだ。しかもその量が半端ではない。合計で300メガバイトは超えていた。
たかがテキストファイルなのだが、そのhtmlファイルだけで300メガを超えていたのは異常だった。
試しに、インデックスと名付けられたファイルを開いてみる
『困り果ててるマヤへ
よくこのファイルを見つけたわ、流石マヤね。
マヤがこのファイルを開いているということは、私は既にこの世にはいないわ。
その時のためにMAGIの最適な運用方法と裏コード等、マヤが知らない部分を含めたその殆どをここに記しといたわ。
多分マヤなら十分理解できる範囲だから大丈夫でしょう。』
その下からは数字とアルファベットの集合体だった。
それでもマヤには理解できたらしく、呟いた
「ありがとうございます・・・・先輩・・・・」
白衣を身に着けた少女顔の女性は、久しぶりに涙をこぼした。
誰にも見られることなく・・・・
その頃、街の再開発は素晴らしいスピードで進んでいた。
今月末には十分首都としての機能を果たせるほどに。
商店街・ビジネス街は復興し
主要幹線道路も大部分は整備されていた。
12月4日
未だ目を覚まさない少女の誕生日
少女は心の扉を閉ざしたまま
同時刻
少年は久しぶりに起きていた
目は虚ろだったが
言葉はハッキリしていた。
暴れることもなく
むしろ、目的のために冷静だった
その少年の傍らには
黒色で袖に3本の白いストライプが入ったアディダスのジャージを着た少年がいた。
二人の少年は少しだけもめていた
「シンジぃ、久しぶりやなぁ・・・オマエ、ホンマに大丈夫かぁ・・・・」
「大丈夫だよ・・・それよりトウジ、その左足は・・・・・」
「あぁ、コイツか。知らん間に付いとった・・・だからもう気にすることもないンや」
「でも・・・・・」
「気にすることやないったらない!それでいいんやわかったな、センセェ。」
「う・うん・・・・。」
「で、ホンマに今から行くんか?」
「うん・・・約束だから・・・・・。それに今日中に行っとかないと後で何言われるか分かんないし。」
「ホンマ律儀やなぁ、センセは。コレ、加持さんからや」
ジャージの少年は持っていた紙袋をシンジに渡す。
受け取った少年は微笑んでトウジから受け取る。
その笑みに、前のような反則的な魅力はなく
トウジにはただの疲れた少年の笑顔にしか見えなかった。
中身は長袖の服だった。
ジーパンとシャツとセーターだった
シンジはトウジに聞いた
「なんで長袖なの?しかもセーターまで・・」
「そういや、シンジは寝てたからワカランかもしれんが、今は冬なんや。」
「えっ?」
「ホンマや。お陰でジャージだけだと寒いんや。」
「本当に・・・冬かぁ。」
「でも、良かったわ。センセが思ったより元気で・・。」
「う〜ん、何というか『諦めがついた』っていうのかな。
今を無理矢理変えようったってどうしようもないし・・・。
それに、記憶を失っていた間にいいこともあったんだ。
眠ってる間になんか、区切りがついたみたいで・・・・・。
今、アスカが大変だろ。
だったら、僕までダメになってちゃ不味い気がして。
それに、僕も男だし・・・。
もう逃げないって決めたんだ。」
「ま、難しい話はワシにはようわからへん。ほな着替えたら発令所の方へ行こか。加持さんが待っとるからな。」
「・・・うん。」
途中、アスカの病室に寄った。トウジには先に行って貰って
「誕生日、おめでとう」
それだけを
眠ったままの、心を閉ざしたままのアスカに言うために
アスカの首を見た
とたんにシンジの手に
アスカの首を絞めた感触がした
「ごめんよ、アスカ・・・・ごめんよ・・・・ぅぅっ・・アスカぁ・・」
突然崩れて少年は泣き出した
少年の少女に対する謝罪
砂浜で
二人きりだったときに
少年は
少女の
首を絞めた
そして少年は泣いた
少女は一言だけ喋った
「気持ち悪い」
少年は気を失った
少女は感じていた
少年に対する母性本能が働いたことを
少年を哀れんでいたことを
そして
違和感を
少年も分かっていた
だから逃げた
でも
もう逃げない
だから少女の病室へ来た
そして
涙を流した
少年が涙を止めたとき
部屋を出ようとしたとき
少女の頬を
涙が伝った
無表情のままでも
少女の心の扉が開きだした証拠だった
緋室はモニタで部屋の様子を見ていた
そして呟いた
「やっぱ、人の心は不思議だねぇ。」
宇治茶を啜りながら・・・・
彼の歪な湯飲みに書かれた文字は
『夢』
だった。
続く
緒方です
今回はここまで
次はシンジの心の中を掘り下げます。
まぁ、『説明が足りねえ』と思う方もいるでしょうが
今回はここまででご勘弁を。
とにかく、シンジが急ピッチで復旧しています。
ここまではシナリオ通り(ニヤリ
シンジはとても強い少年だと思います。
だからこそ簡単に復活して貰いました。
彼に復活して貰わないと話が続かないんで
トウジの言葉遣いには気を使います。
間違ってるのもあるかもしれませんが、教えていただけたら嬉しいッス。
次の公開は少し遅れます。
なんせ明日から学校があるからです。(爆
1999年 8月22日完成 write by 緒方紳一
創さんのこめんと
いよいよ連載も第4話になりました。だんだんと役者が揃いつつあるのかな?それにしても、300メガバイトのhtmlファイルとわ・・・(汗)
嗚呼、アスカさんの復活はまだなのかい?>創@アスカにん
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