目覚めた少女は
3つの選択肢を与えられた
日本に残るか
ドイツへ戻るか
アメリカに渡るか
少女に与えられた条件は普通では考えられないようなモノばかりだった
だが、少女は言った
「少し時間を下さい・・・・・」
君と僕があるために
第7話 君の願いは
12月4日
目覚めた途端に「アスカの誕生日兼復活記念祭」を開くネルフには圧倒されっぱなしだったアスカは、以前のようなトゲが無くなっていた。
「大人になった」のか、それとも「ただのフリ」なのかは本人しか分からない。
宴も終わり、皆が退散した頃にアスカはベットの上で自問自答していた
『アタシが起きても、相手にしてくれない人はいなかった』
『何をそんなに恐れていたの・・・・』
『アタシは捨てられるのが怖かった・・・・・』
『でも、みんなは見てくれていた』
その惨劇?の後は今でも病室に残っていた
『だから・・・・大丈夫よね』
区切りをつけて目を閉じた
暗い闇の中で、少女の脳裏に色々な顔が浮かんだ。
シンジは部屋を出てから、発令所の方へ加持と共に向かっていた。
冬月からのお呼び出しがかかっていた。
冬月専用の部屋の扉をノックする。
扉の横にあったスピーカーから冬月の声が聞こえた
『入りたまえ。』
シンジと加持が入室すると、既にミサトが中にいた。
「シンジ君、急に呼び出して済まなかったな。実は相談なんだが・・・・・」
冬月の相談
それは、目覚めたアスカのその後のことについてだった。
世界各地にあったネルフの支部は解散が決まりつつある。
だが、アメリカ政府とドイツ政府が『アスカを帰国させて欲しい』、と主張。
世界を救った少女をダシにしてイメージアップやその他諸々を企んでいるようだった。
アメリカは『戸籍は本国にある』と主張
ドイツは『彼女自身はドイツで育ったから』と無茶な主張
勿論、ネルフとしては彼女の意見を尊重するつもりであった。
それに関しては両国からの了解も取れていた。
アスカはまだ子供ではあるが優秀な能力を持っており、各国の研究機関からも『招待』の誘いは来ている。
勿論、研究機関としてのネルフとしては彼女は欲しい人材だ。
だが、今までのことを考えると、ネルフの呪縛から解放したいと云う気持ちもあった。
「それは、アスカ自身に任せた方がいいと思います。」
シンジは冬月に対し、ハッキリと答えた。
ミサト、加持もそれに同調した。
時間はまだあるということ・・・・・
12月5日
アスカは退院した
ノリの良い病棟職員に見送られて
そして、彼女も冬月に呼ばれ、自分の周囲の状況を伝えられた。
その事実に、アスカは喜んだ。
『自分を必要としてくれる人がまだいる』
その事実に対して
だが、嫌でもあった。
「ここ」第3新東京市を離れたくないという気持ちが芽生えていたから
「少し時間を下さい・・・・・」
自分の中に芽生えた戸惑いは簡単に消えてくれそうもなかった。
国民栄誉賞モノの待遇でその国に迎えられるのなら、以前のアスカなら間違いなく話を受けていただろう。
だが、迷った。
かりそめの家族といえど、この国には彼女の「家族」がある。
姉のような「母の役」がいて
弟のような頼りない「姉弟」がいて
自分がいた。
そこから離れたくない
その気持ちがハッキリと分かった。
アスカはその日、家に着くまで冬月の話で頭が一杯だった。
だが、そんな話も簡単に頭から消えた。
新しく教えられたマンションに行くと、既に部屋の中からシンジが、あの『悩殺敵に母性本能をくすぐる笑顔』で出迎えてくれたからだった。
『家には帰りを待っていてくれる人がいる』
これはミサトが望んだ事でもあったが、アスカもとても嬉しく思った。
「お帰りっ。」
そう言われることの幸せ感に浸ってしまい、アスカの意識は一時的にトリップをした。
「お帰り」と言ってくれるヒトが居るのは嬉しいこと。
「一人ではない」そう教えてくれる。
「一人だけの孤独」に恐怖していたアスカにとっては丁度良かった。
部屋は全く手が付けられてなかった。前の部屋をそのまま持ってきたような感じだった。 『きっとシンジがやったんだろう・・・・』
そう思ってベットに倒れ込んだ。
『暖かい・・・・』
何に対して暖かいのか。
布団の温もりか
暖房の暖かさか
心のぬくもりを感じたからか
『太陽の匂い・・・・』
布団を干したためだったらしい。
晴れてるからこそ出来る芸当にアスカは感謝した。
そして、そのまま深い眠りに陥って行く・・・・・
シンジは玄関でアスカを迎えると、アスカの笑顔に安堵した。
本当に嬉しそうな笑顔でアスカが
「ただいまっ・・・て言うのよね?」
と、返事をしたときは本当に嬉しかった。
ミサトさんもいた方が良かったと感じた。
その頃、ネルフ本部では拾ったエヴァシリーズによるシンクロテストが行われていた。
被験者はフォース・チルドレンの鈴原トウジ
コアとパーソナルデーター3号機の物を復元しての使用
ただ、今までと違うのが
・ネルフで造られたエヴァではないということ
・伊吹マヤ二尉が責任者だということ
だった。特にエヴァシリーズはネルフで造られたモノではないため、怪しさがどうしても心に残っていた。
しかし、実験は始まっていた
『第一次神経接続開始』
トウジは久しぶりにエントリープラグの中にいた。
パイロットとしてやって来たはいいが、彼はまだ仕事をしていなかった。
やっと彼にきた仕事が『シンクロテスト』だった。しかもいわく付きの機体での
『エントリープラグの中は馴れへんわ』
トウジは素直にそう思った。
だが本人も理由は分かっていた
それはLCLの血の匂いのせいだということを
目を閉じたトウジ
モニターを喰い入るように見つめるスタッフ
無事を願う葛城ミサト
多くのヒトの思いが交錯する中
シンクロテストは無事終了した。
トウジのシンクロは40を越えていた。
何が彼にそうさせたかは分からなかった。
伊吹マヤは吐いていた
自分のしたことに対して
それは
3号機が来たときに、回復しつつあったトウジの妹を殺し、コアとして使ったことだった。
トウジはそのことをまだ知らない。
ましてや、死んだことも知らない。
純粋な少年に対し、自分が直接でないにせよ関わったことを呪い、悔やみ、嫌悪し、泣いた。
『何故そこまでして私はここにいるの?』
そう思うと涙が出てきた
涙は止まらなかった
力無く呟いた
「誰か・・・助けて・・・・・」
トウジは不思議な感覚を味わっていた。
なにか、よく覚えている感じがした魂に触れた。
とても身近なヒトをその魂に感じた。
その魂と一つに重なった気がした。
最後に聞こえた気がした。
「ここにいるから・・・・」
その声が聞こえたと思った瞬間。想像がついた
涙が出た
これで一人なのか・・・・と
シンジはフライパンを軽くスナップをきかせて中の野菜を炒めていた
不意に、シンジの後ろにある食器棚から皿が一枚落下していった。
そして、悲しい音を立てて皿は割れた。
続く
後書き
緒方です。お久しぶりです。
今回はちょっと詰まってしまいました。
休みが明けて忙しかったてのもありましたが、おおむね良好です。
ペースは何とか週1を目指そうと思ってます。
では、次にご期待下さい。
創@Rockin’ onのこめんと
台風一過、緒方さんから第7話が届きました。アスカも復活して、さあこれからはしあわせいっぱい夢いっぱいと思いきや、なんだかすっげー暗くなるような予感(汗)。トウジの妹も死んでいるし・・・。
ちょっと!!なんでうちが死なんとあかんの?!>特別出演 鈴原カナエ@エヴァ手話
緒方さんへのメールはこちら
緒方さんのHP「RIDE on AIR」
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