もし、君が泣いているなら
 
 僕も一緒に泣こう
 
 もし、君が笑っているなら
 
 僕も一緒に笑おう
 
 
 でも、君が心に閉じこもってしまったなら僕には何もできない
 素顔を見せてくれなきゃ、理解しあえないんだ
 だから、僕を信じて欲しい
 みんなを信じて欲しい
 僕は君のことを信じてる
 みんなも君のことを信じてる
 
 前は僕もそうだったから
 
 
 
 君と僕があるために
 第9話 滅びゆくモノ
 
 
 
 久しぶりに警報は鳴り響き、一般住民よりもネルフ職員の方が落ち着かない。
 そんな中での初陣を迎えるフォース・チルドレン、鈴原トウジ。
 しかも機体は訳のわからないものを再利用
 だが、彼の目は何の考えも迷いもない兵士のように澄んでいた。
 
 「いい、トウジ君?」
 ミサトが声をかける
 
 しかし、トウジは無反応だった
 ただ、呟くように言った
 
 「早うあげてくれっちゅーねん・・・・」
 
 
 『一刻も早く暴れたい』
 その思いがトウジの中で繰り返され
 
 何かがトウジの中で囁く
 
 『全部潰ちまえ』
 
 『理由をこじつけて簡単に子供を殺す汚れた世界なんか無い方がいい』
 
 
 心の中に閉じこもっていたはずのトウジはエヴァとのシンクロに成功した
 何かが働きかけたかのように
 
 
 
 
 「エヴァンゲリオン七号機、リフトオフ」
 
 葛城作戦部長の発令
 
 久しぶりにこの言葉を口にしたことをミサトは思い出した。
 できればもう使いたくない言葉だったが、状況によっては使わなければならない
 だから、いい気分ではなかった
 
 それは他の職員も同じ
 『また子供に頼らなければならない』
 自分の無力感を嫌でも感じなければならないため
 
 
 
 鎖から放たれたエヴァ七号機は、直ぐに翼を広げ、その場から飛び去った
 ミサトはまだ何も指示を出していない
 『トウジ君、何してるの?』
 しかし、返事は帰ってこない
 
 
 「だめです、通信は全面的にカットされてます。」
 
 「なんですって・・・・」
 
 トウジに通信の遮断方法を教えた記憶はない
 第一、トウジがあの分厚いエントリープラグの機器類の操作方法を予習しているはずがなかった。知っていても必要最低限のことばかり
 
 だが、通信はカットされている。
 
 しかし、理由は直ぐに出た
 
 「エヴァ七号機のプラグ内からATフィールドを確認、パターン・・・・・・」
 モニターにATフィールドの発生が表示され、それを見た日向の声が震える
 
 
 しばしの沈黙、後
 
 
 「・・・、使徒ですっ!」
 
 モニターには「13th ANGEL」の赤い文字が表示される
 
 
 「どういうことなの・・・・」
 ミサトの『信じられない』といった表情
 
 どの職員も、信じられないといった表情でモニターに目を向ける
 
 
 「かまわん、今は目標の殲滅を最優先だっ!」
 不意に、冬月が叫んだ
 
 それにより、直ぐに平静に戻る発令所
 
 
 「いいのですか・・・司令?」
 マヤは冬月に問いかける
 
 もし、放っておけば何が起こるかわからない
 
 「今はまだ何もわからん。それよりパイロットたちが早く来ないと・・・・」
 冬月はわかっていた。
 
 エヴァシリーズは単体ではインパクトを起こせないことを。
 
 だが、問題はトウジの乗ったエヴァ量産機型の中から使徒の放つATフィールドが確認されたところにあった。
 
 
 使徒の覚醒
 
 
 「もし、第壱拾参使徒との戦闘に於いて、搭乗者のトウジ君に使徒からの何らかの接触があったのなら・・・考えられます。」
 
 マヤが冬月の考えていたことを代弁した。
 だが、検査でも全く検出されなかったその原因は、どこにいたのか
 
 
 
 「プラグの射出信号、早くっ!」
 ミサトの的確な指示
 
 3号機の時のビデオでは、射出信号は受けたものの、プラグは何らかの粘着物によって射出ができなかった。
 
 「信号を送信・・・ダメです、受け付けませんっ!」
 
 今回は信号を無視
 これをどう考えるか
 
 
 
 プラグの中のトウジは、至って冷静だった。意識もある。
 3号機の時のように無意識ではなく、むしろハッキリしていた。
 
 もう何もない砂浜に降り立つと、翼を閉じた。
 
 その時、なにか囁くような声が聞こえた
 
 
 『力が欲しいか・・・・』
 
 
 『なんやねん・・・・一体』
 どこから聞こえてきたかわからない、通信も先程からいっさい聞こえてこない。
 
 
 『今一度問う、力が欲しいか』
 もう一度聞こえた、しかもハッキリと。
 
 『一体何じゃっちゅーねん?』
 訳がわからない
 
 『欲しければくれてやる、力が欲しいか?』
 
 
 『おうっ、あった方がええわ。ワシは負けたらアカンのや』
 
 『ならばくれてやる・・・・』
 その直後、トウジの中に何かが入り込んだ気がした。
 
 それと共に、何かせり上がってくるような感覚がトウジを襲った
 
 
 
 トウジの意識はそこで途絶えた
 
 
 
 一方、緋室が運転するマクラーレンF1 GTRは素晴らしい速度でコーナーというコーナーを抜け
ミサトがカートレインを利用するより早い時間で到着した。
 
 ミサトのマンション〜ネルフ本部間の新レコード樹立
 
 
 だが、チルドレンの二人はエヴァへの搭乗により速度感に馴れているため、気絶できないまま恐怖にさらされていた。


続く



後書き

ども、緒方です。
遅くなりましたが、本日中に送れました。
今回はトウジのことばっか書いてて終わってしまいました。
次回もそうなると思います。
でも、次回は長くなると思います。


創さんのコメント

緒方さんの第9話です。

「滅びゆくモノ」ですか・・・

せっかく復活したアスカさん、立ち直ろうとするシンちゃん、キレまくりのトウジ・・・

チルドレンの明日はどっちだ・・・

緒方さんへのメールはこちら

緒方さんのHP「KEEP on RIDING」

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