姿勢による骨折、骨量測定誤差の発生
一般外来の椎体X線撮影における頻度

三洋骨粗鬆症研究所、くすはら外科、整形外科、上野整形外科
岡本純忠、桐山健、岡本純明、今井弘子、上野武久

[はじめに]
 「患者が管球に対して正しい姿勢をとった時にも。X線が体内の胸腰椎に正面から入ることは殆どない」と我々は強調してきた。この姿勢要素は椎体骨折判定や腰椎DXA測定の頻度、再現性に極めて重大な影響を持つ。水平回旋のみでも腰椎DXAの場合、偽側弯の頻度は高く、時に10%を越える誤差を生ずる。標準的は一般外来でのDXAと胸腰椎X線撮影における姿勢要素を検討した。
[対象及び方法]
 市街地にある整形外科医院の一般外来登録患者32900名の中で、1995年1月からの12ヶ月間に第3腰椎を中心に前後、側面撮影をした1440名のX線写真で椎体の姿勢解析を行った。X線は正、側面とも臥位で経験17年の放射線技師が撮影した。解析は全例単一の測定者が判断した。また他の市街部の骨粗鬆症専門内科クリニックで1996年度後半にQDR1000あるいは4500にて撮影したDXA340例の姿勢偏位の頻度と対比した。患者姿勢は両方とも十分な注意の下に管球に対し正面に向けていた。側面X線は姿勢把握の容易な第12胸椎から第4腰椎で検討した。
[結果]
 腰椎DXA測定で管球に対し患者が正面を向く体位をとっても、70%の高率で水平回旋は防げず偽側弯様の撮影像が生じる。DXA画像が粗の場合にはこの偽側弯も発見が困難であり再撮影が行われない。一般整形外科のX線撮影では偽側弯出現の頻度はやや高いがほぼ一致し、回旋率も同様であった。X線正面像から個々の椎体で側弯角度の計測を行った。これは正面と側面で姿勢変換をしていないので可能であった。管球からの入射角度は、大四ツの辺縁では約7度となる。椎体のレーザー光立体モデルと三角法の検討から判定し単独で12°以上の斜方射あるいは8°以上の斜方射に5°以上の水平回旋の複合があれば新規骨折発生の計測は極めて困難でほぼ不可能と計算できた。その出現率を確認した。新規骨折発生の肉眼判断に困難となる12°以上の側面X線の椎体回旋と斜方射は高齢者で極めて頻度が高く70歳以上では全例で腰椎のX線写真に1個以上の計測不適の椎体が存在した。水平、矢状方向に偏位2°以内でポインティング計測が可能な厳密な意味の正中射椎体は全椎体の2%以下であった。通常の読影には支障ないがc/p比を求めるには全例再撮影を要する結果であった。
[考按]
 X線撮影された椎体における斜方射、前後傾、水平回旋の有無を知ることは椎体骨折判断やDXA測定の誤差の減少に重要である。しかし現在はその頻度の報告も無く殆ど注意が払われていない。透視勢い補正なしではX線計測を行うには除外すべき椎体が多く椎体骨折統計解析は困難である。特に70歳以上では殆ど計測不能であった。