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教室で行う参観日版
 車いすの授業
 
  福山市立水呑小学校
  教諭  粟 村 啓 史
 
 この日は日曜参観の日であった。
 5年生、男子15名、女子16名のクラスである。
 前日までに、「病気じゃないんだけどなぁ」という教材を使って、障害者への理解を促す授業をしていた。「次は、積極的に障害者の方々のお手伝いができる自分達になることを目指した学習をしていこう。」ということで次時につないだ。
 「ジュニアボランティア教育」と「ジュニア・ボランティア・テキスト」の中から必要なページをコピーし、この日の授業に使用する演習テキストを作った。

 *ジュニアボランティア教育・創刊号 → P.0〜P.1,P.32〜P.39
 *ジュニアボランティア教育・呼びかけ号 → P.16〜P.17
 *ジュニア・ボランティア・テキスト → P.21,22,23,25
 
 
  教室には車いすを5台(学区内の老人保健施設から貸して頂いた)と、跳び箱の踏切版を2枚用意していた。
 下図のように、コの字形になるように児童の席を配置した。
  
 



(指示1) 指示があるまではテキストを開かないで下さい。
 

 と言って、テキストを配布し、次のように本時の学習の趣旨を説明した。



(説明1) 今日は、車いすに乗っていらっしゃる方々のお手伝いが正しくできる自分
      達になることを目指して学習します。
 
 
 続いて本時の学習に入る。
 まず5人の子どもを車いすの後ろに立たせ、こう発問した。



(発問1) この車いすをたたんで自動車で運ぶとします。20秒以内にこの車いすをた
      たんでご覧なさい。用意、始め!!
 

 「始め!!」と同時にストップウォッチを押した。
 子ども達は、「あれー」「どうすんのー」「わかんないよー」などと言いながら、結局何もできないまま、20秒はアッという間に過ぎてしまった。
 今度は別の5人に同じことをさせた。同じ反応で路頭に迷う子が多い中、一人だけはアッという間にたたんでしまった。参観している大人達からは歓声が上がり、子ども達からも「すごいなー」という声が聞こえた。その後私が説明しながら、子ども達の前でやって見せた。



(発問2) この閉じている車いすを開いて下さい。
 
 
 3人の子にやってもらった。完全には開かない。私はやり方を説明しながら、子ども達の前でやって見せた。



(説明2) やり方を知っていれば2秒とかからないようなことでも、やり方を知らなけれ
      ば20秒たってもできないのです。車いすに乗っていらっしゃる方々のお手
      伝いができる自分達になるためには、まず正しいお手伝いの仕方を学ば
      なくてはなりません。
 

 そこで、テキストの最初の1枚を開くように指示した。



(問題) 車いすの方が困っている場面に出会いました。その時、まず何をしますか。

(選択) (1)すぐに介助する。
    (2)「手伝いましょうか。」と声をかける。
    (3)おせっかいになってはいけないので、じっと見守る。
 

 (3)の文には子ども達からクスクスという笑いが起こった。
 「用意」と言って、全員の右手をグーにして上に挙げさせた。「せーの、パッ」と言うと、子ども達は指で反応を示す。つまり、(1)と思う子は指を1本、(2)と思う子は指を2本開くのである。このときは31人全員が(2)を示した。
 そして、テキストの次の1枚を開くように指示した。



(説明3) 答えは(2)です。
 

 と言って、左右両方のページを読みながら、「介護者のエチケット」について説明を加えていった。
 そして次に、テキストの設問を考えさせながら進めていった。



(設問) @現在、身体に障害を持つ人の割合は、日本の国民総数で見ると、およそ何
       人に一人ぐらいになるでしょうか。次の三つの中から選んでください。
        (1)五十人に一人
        (2)百人に一人
        (3)五百人に一人

    A身体障害になる原因には、どんなことがあるでしょうか。
   
    B車いすを必要とする人は、どんな人達でしょうか。

    C車いすに乗って外出するとき、困ることはどんなことでしょうか。
   
    D車いすの人が、段差のある所で困っています。あなたが介助することになり
      ました。段差を上がるとき、段差を下りるとき、どんなことに注意をすればよ
      いでしょうか。
 
 
 テキストのページの作り方の都合で、@とA、BとC、Dというふうに進めていった。自分の考えをかかせた後、その考えを発表させ、ページをめくり説明を加える、という進め方である。
 
【子ども達の反応】

@では、約半数の子が「(1)五十人に一人」を選んでいた。
Aでは、「病気」と「事故」を挙げていた。私は、「遺伝」という項目は最初から省いて
  考えていた。「遺伝」を取り上げるには、人権的によほどの指導が必要だと判断し
  たからである。だからこの日は初めから削除していた。
Bでは、「足の悪い人」「足が動かない人」「けがをした人」「事故にあった人」などで
  ある。説明の「歩行を禁止されている人」という所では、「なるほど」といった感じで
  あった。
Cでは、「階段などの段差がある所」「坂になっている所」「砂利道」「でこぼこの道」な
  どを挙げていた。
Dでは、「車いすの人が危なくないようにする」「衝撃やショックがないようにゆっくりす
  る」「ていねいにする」などが出された。その後、踏切版を使って、私がやって見せ
  た。キャスターの上げ下ろしには、必ず「上げますよ」「下げますよ」と声をかけるこ
  と、下り道も含め、下りるときには必ず後ろ向きの状態で下ろすこと、を指導した。
  また、エチケットとして、目の高さを同じにして話すことの大切さにも言及しておい
  た。
 
 
 その後、ブレーキの位置を確認し、
   ・乗り降りの際には、ブレーキがかかっていることを必ず確認すること。
   ・車いすを押すときには、必要以上に強い力からでは押さないこと。
を指導し、児童全員に児童全員に車いすを体験させた。非常に短い距離ではあったが、乗り手と押し手の両方を体験することができた。(2人1組で、児童席配置図のAから出発し、Bで乗り手と押し手を交代させた。約半周ずつの体験である。この教室は、廊下の幅分だけ普通の教室より広い構造になっている。)
 
 私は、次の言葉で授業の締めくくりをした。



障害を持っている人達を哀れみの目で見るのは間違っています。障害者は決して不幸なのではありません。ただ不自由なだけなのです。
不自由な所をお手伝いするという気持ちで、正しいお手伝いの仕方をしましょう。
 


 子どもの感想

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