3、コントロール、翻弄される私

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 さて、ウィニーは強い。だが環境的に負けることも有る。それは判った。ではその対極にあるデッキとは何か。
 ユニットにより場を制圧するウィニーの反対といえば、それ以外のカードで場を制圧する「コントロール系」
と呼ばれるデッキ群がそれに当たるだろう。

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 ウィニーが1枚1枚のカードを低コストによるカード効率を極限にまで求めたデッキであるのに対し、コント
ロール系はカード効率を求める点では同じだが、コストは効果に従い制限しないと言う点が異なる。
 つまり、より効果の大きいカードであればコストが少々かかっても良いという考え方だ。

 簡単な例で説明しよう。黒のカードに「核の衝撃」というカードが存在するがこのコストは2・5・3と5国
力と「重い」上に、資源が3点とこのゲームの中では多い方だ。しかし、このカードの効果を考えてみて見ると
別の評価が出来ると思う。
 「(自軍攻撃ステップ):全てのユニットを破壊する。」
ユニットはこのゲームの中で最も重要なダメージ源だこれをすべて除去できるのだ。例えば、相手のユニットが
次のターン以降に3点以上のダメージを与えつづけるのであれば、このカードは「効果に見合わない安いカード
」と言う評価が出来るのでは無いだろうか。

 このように1枚で状況を一変できたり、自分の有利を演出できるカードで構成されたデッキをコントロール系
と呼ぶ。上記の核の衝撃だけでなく、「作戦の看破」や「ハマーンの嘲笑」のような「看破系」カードで相手を
制限するのもコントロールであるし、「制圧作戦」や「黒い覇道」で相手のGを破壊してカード利用に制限を与
えるのもコントロールである。

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 つまり、ゴリ押しが基本のウィニーに対して、コントロール系とは自分の都合の良い形を作り出すのが目的と
いえる。自分の都合の良い形を作った上で勝ち手段を行使するのがコントロール系の勝ち筋だ。

 コントロール系は自分のコントロール手段が確実に相手に効かなければ勝利は不可能だ。例えばG破壊をコン
トロール手段として選択した場合、トーナメントにおいて主となるデッキタイプがウィニーばかりであれば、G
破壊による自分への有利は演出できないであろう。逆にウィニーばかりの環境にサイコミュデッキを持ち込めば
勝利の可能性は通常のトーナメントに比べ格段と上昇するはずだ。
 コントロールするにはまずコントロールする相手を知らねばならぬ。どのように相手を操作すれば自分の有利
に持ち込めるのかを十分熟知しなければならない。その点がコントロール系は「上級者向け」といわれる所以だ
ろう。

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 さて、短くは無いガンダムウォー(以下GW)の歴史の中、どれだけのコントロールデッキが有ったのだろう
か。いくつか流れを追って検討してみよう。

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 始まりはカンジオ

 まず、最初に現れたコントロール系はやはり赤黒コントロールであろう。現在の赤黒で利用される、コントロ
ール系のカードはほぼ初弾で発表されているものかその上位互換となる。赤のサラサ再臨、密約、内部調査の三
種の神器で必要なカードをそろえ、黒の混戦、核の衝撃で相手の動きを止める。最後に大型ユニット、一般的に
はジ・オで相手に止めをさす。何か相手が邪魔してきたときは作戦の看破で防ぐ。デッキの中に2種類以上のコ
ントロール要素を持ち、全てのカードが相互に扶助しあい、強力なデッキであった。
 また、カウンター(作戦の看破など)(*1)とジ・オを利用する点から「カウンタージオ(略してカンジ
オ)」と呼ばれた。
 しかしこれには最大の弱点が有った。ウィニーに一方的な展開を強いられた場合の逆転が不可能だった。混戦
が4ターン目に貼れるがそれまでに優秀なウィニーであれば15点以上のダメージを叩き出す。当時の環境では
ギリギリのダメージ量であり、そこから勝ちにつなげるには難しかった。結果、カウンタージオは優秀では有る
がそこまでの安定度があったわけでは無いのだ。

 *1 カウンター
 ガンダムウォーも手本としたMtgにおける無効化のカードの通称。CounterSpell(対抗呪文)という基本的
なカードが存在する。テキストはGW風に書けば「CounterSpellはカードのプレイを無効化し廃棄する」となる。

Sample 赤黒コントロール
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 陽の目を見るサイコミュ

 環境がウィニーにシフトし、ジオンウィニー全盛になった頃、サイコミュのルールが変更されそれまで「交戦
中のユニットにしか打てなかった」サイコミュが「配備エリアから、出撃できるエリアに打てる」サイコミュに
変更された。また、茶色のカードが追加され序盤のダメージも逆に資源として利用できるようになった。それが
「赤茶サイコミュ」デッキの登場だ。当時のサイコミュユニットで優秀なもので、国力帯は4国力。結果3ター
ン目まで生き延びれば4ターン目以降は2点(普通、3点)の砲台が出来上がり、当時のウィニーでは突破しき
れない形が演出できた。
 また、当時、追加されたばかりの茶のドロー操作系を活用したのもこのデッキが先駆け。「発掘作業」により
本国を引き切る事無く、勝利を手にすることが出来た。

Sample 赤茶サイコミュ
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 三日天下カウンタードーベン

 当時のGT予選では確かに赤茶サイコミュが猛威を振るった。しかし、そのサイコミュをメタ対象としたデッ
キが現れた。それがカウンタードーベンで有る。基本は赤茶の構成なのだが主力ユニットに「ドーベン・ウルフ
(ラカン・ダカラン専用)」を利用し、発掘道具と捕獲兵器により攻撃してきたユニットを一網打尽にする構成に
なっていた。同じ様なデッキ構成で有るのに片方がより大型のユニットを準備している場合、それは大型ユニッ
トを利用している方が有利なことは疑いようが無い。必要なキャラクターを看破し、ユニットは捕獲ドーベンで
除去され、プレイされたドーベン・ウルフに蹂躙されるのだ。
 結局、決勝トーナメントはカウンタードーベンが優勝したのだが、それは決勝トーナメントの多くのデッキが
サイコミュデッキで有ったからであり、それ以外のデッキでは逆に勝ちにくいと言う事だ。それ以後カウンター
ドーベンはトーナメントシーンでは現れなくなる。

Sample 赤茶コントロール
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 三色の時代 帰ってきたカンジオ

 三色のコントロールの最高形として上げられていたのが赤黒茶のカウンタージオだ。当初のカンジオに茶の発
掘道具、発掘作業、宝物没収を追加しドロー能力とドローアウト回避能力を得た。また、核の衝撃の後、発掘道
具から捕獲兵器のコンボも内蔵した。
 言ってしまえばカンジオとカウンタードーベンの合いの子なのだが、環境に即した強さを誇っていた。しかし
ドラマチックブースターが発売されると仮想敵であるジオンウィニーに3国力帯の軽中量級のユニットが追加さ
れ、サイドボードのジオン掃討作戦と核の衝撃だけでは対処できなくなり環境から淘汰されてしまった。

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 G破壊 ≠ 焼きイルス

 ドラマチックブースター以降、三色のコントロールデッキが現れた。赤、茶のドロー操作を使い緑や赤のコン
トロールカードを絶え間なく補充できる形を作り、当時唯一と言って良いリロールインのユニットであるケンプ
ファー、除去能力、ダメージ量が素晴らしいアプサラス2を投入したデッキである。
 コントロールの手段として看破系を用いるか、G破壊を用いるかで微妙にデッキ構成は異なったが当時として
は最高形のコントロールの一つで有った。
 またダギイルスを利用し相手動きを封じるパターンもあり、こちらは緑の火力でコントロールすることが多か
ったので「焼きイルス」と呼ばれた。

Sample 赤緑コントロール
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 コントロールの塊、バビ混

 6弾において2つの強力なカードが追加された。それがコスモ・バビロンでありサイコガンダムMk2だ。
 サイコガンダムMk2は合計国力こそ多いが、一度出てしまえば場を制圧する力が有る。またサイコを配備す
る迄のつなぎとして、混戦というチョイスはサイコとの相性は最高であった。サイコ、混戦、核の衝撃、バビロ
ンと、GWの中でもトップクラスの強力なカードを組み合わせることがで出来たのがバビ混である。
 一般的にはコントロールとして使うよりも戦線の拡大や死の商人との組み合わせでドローアウトを狙う方が有
名の様だが、確実に勝ちをねらうならコントロール型の方を選択するべきであろう。

Sample 赤黒コントロール
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 時代の寵児 ボルジャーノン破滅

 7弾においてユニットの平均国力が3〜4になってきた。決戦前夜、コスモバビロンのおかげでその様な中速
域、低速域でも勝負できるようになったからだ。逆にウィニーはその突破力を失い失速していた。
 そこで再び評価されるのがボルジャーノンデッキ。ウィニーほど早くは無いがクルセイド系のカードを内包し
、リアニメート能力を持つユニットさえ居る。またそれぞれのユニットが強化系の能力を持ち、ウィニーサイズ
で有りながら中速域に対抗できる唯一のデッキであった。

 遅くなった環境にそれよりも少し早いデッキを持ち込むのは常套手段で有るが、ボルジャーノンの評価を高め
たのは、その色が茶色であるが故に「破滅の終幕」を利用できるからだ。環境が遅くなっている以上、世の中の
デッキは5ターン目を目処に戦略を練っている。しかしその時点でリセットカードを打ち、双方同等の立場に持
ち込めばどうなるか。それはウィニーの土俵であって中低速の土俵では無いのだ、再びウィニーの動きを始める
事が出来るボルジャーノンの勝利は想像に難くない。

Sample 茶単ボルジャーノン
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 デザイナー推奨のコントロール ラフレシア

 8弾で等々デザイナーたちは自分たちでデッキを作らせる準備を始めた。それがラフレシアとその関連カード
らだ。ラフレシアによるバグの半無限供給と、ラフレシア・プロジェクトによるユニット・コインの製造システ
ムにより半永久のブロッカー製造システム。バグとラフレシアの範囲兵器、強襲能力による突破力の強さ。赤の
最高除去カード、転向とラフレシア・プロジェクトの相性。

 数種類のカードによってユニット戦闘による圧倒的な有利を持つ一連のカード、看破系とコスモ・バビロンを
有する赤に追加した事で赤単によるコントロールデッキが作成可能になった。弱点は存在するが幾らでも補うこ
とが出来るのだ。

 また、ギレンの野望のパーフェクト・ジオングの追加によって、より強力なデッキに生まれ変わった。

Sample 赤単ラフレシア
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 サイコミュ復権 戦士再び・・・・

 9弾も6弾以降続く環境の変化がまた起きた。「戦士再び・・・」によりサイコミュデッキのスピードが格段
に増加し、またキュベレイMk2(エルピー・プル機)がリメイクされてサイコミュの最大値が急激に伸びた。
 これらの条件によってこれまでは落とせなかったサイズのユニットまで対処できるようになり、メタシーンに
復帰してきたのだ。
 これにより単なるビートという選択が不可能になってきた。結果、色々なギミックを持つビートが生き残りウ
ィニーが復活し、さらにサイコミュがそれを駆逐する。と言う三すくみを生み出すと思われる。

Sample 赤単サイコミュ
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 時代を追う毎に環境は変わる。しかし、今までの歴史はそれらが繰り返されることを証明している。今まで有
ったデッキが古いデッキとは限らないのだ。もう一度、自分の環境を見直すことがコントロールデッキを司るかなめで有って、すべてである。

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