第四話

一緒に行こう!!


中編

(作者注・{}は手話の会話)


レイの突然の車酔いも、アスカの手厚い(^^;)看護のかいあってあってどうやら収まった。初めは心配そうにしていた周防もレイの顔色が元に戻ったのを見ると、安心していつものにこやかな表情に戻っていた。

「さあ!レイも元気になったし出発よ!」

「そうだね、じゃあ行こうか。{周防さん、行きましょう}。」

シンジは周防に手話で出発を告げるとポケットから車のキーを取り出して一足先に車に向かった。続いてアスカ、その後に周防と続きレイは最後尾をトコトコとついてきた。
そして4人を乗せた車はサービスエリアを後にして再び高速道路へと進入した。


道は九州道から福岡新都市高速へとかわり、インターチェンジを降りるとそこは九州最大の都市、めざすキャナルUはもうすぐである。20世紀の終わりに鳴り物入りで登場したキャナルシティ博多、セカンドインパクトにより一度はその姿を失ったものの、その後『キャナルU』としてさらに巨大な複合アミューズメント施設として誕生した。地元の人に言わせると『キャナルに無い物は無い』そうだ。

新博多駅前のロータリーをまわって左手を見ると、目指すキャナルUがその姿をあらわした。この建物の設計者が一番苦心したのは、巨大な建物をいかに違和感無く街の中に溶け込ませるか?ということらしいがその設計意図は余すとこなく反映されている。
車は正面のゲートをくぐり、最上階にあるパーキングエリアへとスロープを上がっていく。約5分ほどで駐車場に着くと4人は車を降りた。

「うーん・・・やっと着いたわねー。シーンジっ!ごくろうさん。」

アスカは大きく背伸びをするとシンジのとなりに行き、レイ達に気づかれないようにそっとシンジに耳打ちした。

『いい?作戦A−25、行動開始よ・・・。』

『初号機了解・・・。』

シンジもそっとそれに呼応した。



最上階から3フロア下、ここは総合アミューズメントゾーン。様々なギミックを凝らしたバーチャルリアリティエリアや各種ゲームコーナーを抜けて一番奥にあるのがきょうのメイン、シネマゾーンである。
ここは大人数を収容できる大きな2つの映画館のほかに、レトロな作品やB級作品を専門に上映しているいわゆる名画座のような小劇場がいくつかある。
4人はその入り口にやってきた。

アスカはレイの方を振り向くと、

「さあ、ここからさきはレイ達の時間だからね。」

キョトンとした顔で思わず聞き返すレイ、

「え?みんなで見るんじゃないの????」

「あのねえ、今日の主役が誰なのかアンタ解ってる?」

「??周防さんじゃないの?」

はぁぁぁぁ・・・・

「ちょっとレイ、こっちきて。」

アスカはレイの手を引っ張っていくと、

「その主役の周防さんが名指しでご指名になったのは、どこのどなた様でしたっけ?」

「えっと・・・綾波レイ・・・よね・・・やっぱり。」

「わかってんじゃない。」

「そうよね・・・せっかく周防さんがさそってくれたんだものね・・・。でもやっぱり自信ない・・・。」

するとアスカは優しい顔で、

「ねえ、レイ。べつに周防さんとすぐに恋人同士になれとかそういう事を言ってるんじゃないの。ただね、アンタはいまだに優等生なのよ。もちろん昔と意味は違うけど。不真面目になれってわけじゃないけど、たまには男の人とふたりで休日を過ごすことがあってもいいんじゃない?
アンタには・・・・・もっといろんな事を経験してもらいたいから・・・・・。レイの過去を知っているから・・・・・。」

それはアスカがシンジとふたりで話合って決めた事・・・・

レイにはもう言葉が無かった。

「アスカ・・・・・」

「ほらっ!そんな顔してると初日でフラれるぞ!」

「うん!・・・」

ふたたび彼女たちはシンジと周防のもとへ帰っていった。



{それじゃあアタシとシンジはせっかくだからキャナルUを探検してきますね。}

これはアスカ。

{いま11時だから・・・3時に駐車場でおちあいましょう。}

とシンジ。

{すまないね、二人とも。でもお昼ご飯は一緒に食べない?僕がおごるよ。}

{なーに言ってるんですかぁ。映画を見てそのあとふたりでゆっくり食事するのがデートの定番でしょ。お昼はレイとふたりでごゆっくりどーぞ。}

{ははっ。アスカちゃんには敵わないな。わかった、じゃあそうさせてもらうよ。レイちゃんもそれでいいかい?}

レイはアスカの顔をチラッとみると周防にコクンとうなずいた。

{じゃあ決まりね。ほらっ、シンジいくわよっ。}

「あ、待てよアスカ。じゃあ綾波、あとでね。{周防さんもあとで!}」

シンジは慌ててアスカの後を追っていった。





二人がいってしまった後、周防はレイに言った。

{良い友達だね、二人とも。}

{はい。}

どうやらレイもふっきれたのか、周防との会話は普通に出来るようになった。

{さてと、何の映画を見ようか?}

{何のって・・・決めてなかったんですか?}

{まあね、レイちゃんを誘うことに一生懸命だったから。}

そういうと周防は照れくさそうに人差し指で鼻の頭をかいた。

{レイちゃんはどんな映画が好きなんだい?}

これはレイも少し困ってしまった。

{すみません・・・・映画ってほとんど見たことないんです・・・。}

{ええっ!そりゃあこまったなぁ!じゃあ、どんなジャンルが好きなのかな?SFとか、ラブロマンスとか・・・。}

レイには答えられなかった・・・。エヴァンゲリオン、人類補完計画という鎖から解き放たれてから、レイは見違えるほど感情ゆたかになった。それはレイ自身の努力はもちろんだが、シンジやアスカそして彼らの友人たちの洞木ヒカリ、鈴原トウジ、相田ケンスケらの協力があったからだ。彼らはごく自然にレイと接していった。しかし同世代の女の子のように映画の主人公と自分を置き換えて夢想にふけったり、とっぴな夢物語の世界にトリップしたりすることはいまだに苦手だった。

もちろん周防はそんなレイの過去の事は知る由も無い。だからレイを誘ったわけで、それは当然彼の責任ではない。それだけに彼女は周防に対して申し訳なく思ってしまい、沈んだ気持ちになってしまった。レイにも責任はないのだけれど・・・・・・。

すると突然周防がレイに言った。

{よし!じゃあ今日はぼくについておいで!}



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あとがき

作者妄想暴走中!!だれか止めてくで〜!(爆)


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