ネルフの本部関連施設で唯一被害がなかったアスカ曰く『ネルフの病院』こと病棟
 その中でチルドレンの2人は身体検査を受けていた。
 
 シンジは記憶の断片を補正するために精神科へまわされ、入院が決まった。身体的な支障は特にない。
 
 それに比べてアスカはもっと簡単な検査で済む筈だった。
 が、シンジの事ばかりで彼女は自分自身のことは構っていなかった。
 結果的に彼女も精神科へ送られた
 
 不安が、恐怖が、嫉妬が、自己嫌悪が重なって爆発したから・・・
 
 
 シンジの病室で爆ぜた。ミサトと共にシンジの病室まで行った迄は良かった。
 中に入ってからおかしくなっていった。急にキョロキョロとし出したかと思うと天井を見上げた瞬間に急に叫んだ。
 
 「ィ、ィャ、イヤ、イヤッ・・イヤァァァァァァァァァ」
 
 病室の医療器具や棚をなぎ倒し、不幸にも飛んできた器具に当たった医師は少し違う世界へ旅立ちかけた。蛍光灯は割れ、非常灯だけがともる中で抑えようとする男ならばけっ飛ばし、女ならミサトさえも逃げて避けてアスカは暴れた。
 
 だが、後ろからシンジがおなかの方に手をまわして抱き抑えると、両手が空いているのにシンジを攻撃せず、逆にに大人しくなった。
 
 
 君と僕があるために
 第2話 不安と恐怖の交差点
 
 
 「む〜ん・・・」
 ミサトは右手でこめかみを押さえた
 最初にアスカを見たときは大丈夫だと思っていた、がそれは誤算だった。
 シンジの病室をチェックしなかった自分のミス
 303号室にアスカを入れてしまった自分のミス
 アスカの心理状態を甘く見てた保護者としてのミス
 
 
 「やっぱり保護者失格ね・・・アタシは・・・」
 自嘲気味にポツリと漏らしたミサト
 それが聞こえていた冬月と日向は苦い顔をした。
 
 
 結局、アスカはまた復活前の放心状態へと戻ってしまった。
 
 虚ろな、視点が定まっていない蒼い瞳
 まるで精巧な人形のような少女が
 ベットに横たわっている
 
 
 その様子をシンジはどこか悲しそうな目で見ていた。
 
 シンジは入院している、といってもカウセリングや脳波の検査などでそれ以外の時間はそれほど束縛されなかった。
 だから暇な時間はアスカの病室まで来ていた。
 
 
 目を開いたときに間の前にいた少女
 
 色々な事を教えてくれた少女
 
 自分の過去を知っている少女
 
 僕に『アスカ』と呼ばせた少女
 
 
 「アスカはとても苦しんでるんだね・・・
 今までずっと苦しんできた、でもそれを他人には見せないで・・・
 我慢しようとしているから・・・・
 無理してるから・・・・」
 
 
 アスカの頬を右手で撫でながらシンジはアスカに向けて喋る
 
 『僕は無力』
 
 と痛感し、そして思う
 
 『アスカという少女に元気になって欲しい』
 
 
 アスカの病室の外にはミサトが立ちつくしていた
 そして突然泣き崩れた
 
 『記憶がないのにシンジ君はアスカのことを・・・・』
 
 自分は頼られない存在、子供達の間では蚊帳の外の存在
 そう思うと涙が溢れ、止まらない
 
 だが、一人の男がミサトに声をかけた
 「せっかくの美人が、泣いたら台無しだぞ・・・葛城。」
 聞き覚えのある言葉に顔を向ける。
 その先にいたのは
 無精ヒゲと後ろに束ねた髪でお馴染みの加持リョウジだった。
 「か、加持君?」
 「よっ、久しぶり」
 「バカァ、あんた、本当にバカよ・・・・」
 涙を流したままへたり込むミサト
 「済まなかったな、連絡できなくて。」
 「このぶぁか・・・・・」
 「約束通り、八年前に言えなかった言葉を言うよ・・・・」
 「へっ?」
 「・・・・結婚しよう」
 「・・・・・・・アンタ卑怯よ・・・・・・」
 「誉め言葉として受け取っておくよ。返事は今じゃなくてもいいさ。」
 「バカ・・・・断るわけないでしょ・・・」
 
 加持リョウジ、生還
 そのためにミサトは喜びのあまり重要なことを忘れていた。
 
 加持も大事なことを忘れていた
 ミサトが家事は全然ダメなことを
 
 その頃、部屋の中でシンジはアスカの横の椅子で寝ていた。
 
 
 ミサトが加持と共に発令所に戻ると、加持を知る者は驚きを隠せなかった。
 冬月は加持を笑顔で迎えた
 「加持君、よく戻ってきてくれたよ。」
 「いえ、お世話になりました副指令、お陰で何とか生きて帰ってこれました。」
 「そんなことはいいさ。それに碇のお陰で今は司令代行だよ。こう云うのは私にはあわんよ。君がやってくれんかね?」
 「悪い冗談を。」
 ミサトは会話を聞き驚愕
 「ちょっと、司令代行は知ってたのですか?」
 「ああ、君には悪いことをしたと思っている・・・済まなかった。」
 
 ミサトのわめく声が響く中、冬月司令代行は考えていた。
 『現存するエヴァシリーズは4体、残りの5体は・・・・』
 十字架の姿をして芦ノ湖に突き刺さったエヴァシリーズは4体だった。
 だが、残り五体はどこであるか?
 新たに結成された諜報部は頑張ってるはいるが
 そのことが彼の心配の種であった
 更にチルドレンの二人が精神的障害に陥っている
 だが、冬月には切り札があった
 
 そんな司令代行の悩みを知ってか知らずしてか、ミサトは火を噴くように暴れ、日向は加持の出現を泣いていた。
 
 シンジは目が覚めると自分の病室へ戻った
 
 
 翌日、ネルフは正式に国連の組織として再発足した
 主な活動は第3新東京市の復興作業とエヴァの管理、MAGIシステムの管理と運用、そして平和維持活動のためのエヴァの運用だった。
 これによって国連は、行方不明の碇ゲンドウを解職し司令代理の冬月コウゾウは正式にネルフの総司令に任命した。MAGIシステムの運用に関しては伊吹二尉が赤木博士の後を引き継いで担当することになった。
 冬月は本部に戻るなり加持リョウジを呼び出し、副指令に任命した
 
 2015年11月、ネルフは一部変化した
 
 
 瓦礫の山だった街は各国家や企業の協力により片づいてきており、復興のめども立ってきている。
 更にフォース・インパクトの影響により地軸が戻りつつあると気象庁から発表された
 
 だが、問題も山のようにあった
 特に大きな問題はチルドレンのことだった
 フォースチルドレン・鈴原トウジを復帰させる事は決まったが
 彼も万全ではない
 それでも問題の山はいっこうに減らない
 良いニュースといえば拾ったエヴァシリーズの運用のめどが立ったぐらい
 
 シンジといえば、毎日アスカの病室へ通っていた
 だが、幸か不幸かシンジとアスカは知らない
 
 今の自分がどれだけ大きな問題なのかを
 
 
 アスカは心の殻に閉じこもっていた。
 必要とされない、誰も見てくれないという不安と恐怖
 そこから逃げるために
 心を閉じた
 
 『ここにいれば怖くない
 でも寂しい
 どうして
 誰もいないから?
 アタシしかいないから
 シンジが、ミサトが、加持さんが、みんながいないから』
 
 一人でいることの恐怖
 
 『でもみんなが怖い
 捨てられるのが怖い
 誰からも見て貰えないのが怖い
 誰からも認められないのが怖い』
 
 
 彼女の思考はループ状から抜け出せないでいた
 
 
 続く
     

あとがき

緒方です。何か詰まってきました。ちょっちヤバイです。
連載は初なんで戸惑ってます。
なんというかボキャブラリー不足と経験不足を痛感します。
まだまだこの作品は続きます。
オリキャラもいつかは出します。(良いのかそんなこと書いて>俺
まず、勝手に加持を復活させました。
加持は好きなキャラなんでどうしてもです
後、勝手に設定を11月にしてしまいました。
更に地軸を戻してしまいました。
まぁ、悪い終わり方にはしません。
ハッピーを目指して前進あるのみです。(本当に良いのかそんなこと書いて>俺
書きながらHB2000は優秀だと思いました。
ATOK12は暴走してます。


創さんより

緒方さんから一気に第2話・第3話をいただきました。

すぐに第3話にいくべし!

緒方さんへのメールはこちら

緒方さんのHP「RIDE on AIR」

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