インフリキシマブ(商品名レミケード)

  関節リウマチの関節の炎症は、TNF-αを含むサイトカインを中心とした免疫学的異常のため、炎症が長期間持続し、骨・関節が破壊されるのが原因と考えられています。インフリキシマブが抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体(遺伝子組換え)です。インフリキシマブの作用の特徴は速効性であり、炎症を短時間に鎮静化させることができます。

  しかし、血中濃度は徐々に低下し、4〜8週間後には効果は消失します。インフリキシマブを関節リウマチ患者さんに投与したら、炎症所見の著明な改善を認めたものの、再投与を反復することによって中和抗体が出現し、インフリキシマブの効果が減弱することが判明しました。そこでメトトレキサート(MTX)とインフリキシマブを併用することによって中和抗体を抑制して、充分な効果があることが実証されています。したがって、インフリキシマブはMTXとの併用としてのみ、使用されることになっています。

  インフリキシマブはキメラ抗体(遺伝子操作により2つ以上の異種の蛋白質を結合させて作った抗体)であることから、点滴静注後2時間以内にアナフラキシー様症状(呼吸困難、気管支痙攣、血圧低下、血管浮腫、チアノーゼ、蕁麻疹など)が発現することがあると報告されているので、緊急時の対応が充分にできる医療施設において実施すべきです。

  また、インフリキシマブ投与後3日以上経過したあとに、重篤な遅効性過敏症(筋肉痛、発疹、発熱、そう痒、浮腫、蕁麻疹など)も発現しているので注意を要します。たいへん重要な副作用として、感染症があります。重篤な感染症としては、敗血症、真菌感染症を含む日和見感染症(感染抵抗力が低下したときに、平素は無害の弱毒菌による感染が起こった状態)などが報告されています。さらに肺結核、粟粒性結核、肺外結核(髄膜、胸膜、リンパ節など)も報告されています。結核の既往のある患者さんに対してインフリキシマブを使用することは、結核を再熱する可能性があります。

  インフリキシマブに劇的な効果がありますが、重篤な副作用があることからハイリスク・ハイリターン(経済用語で、一般に利益が大きければそれに伴う危険性も大きいという原則)的薬剤といえそうです。加えて、非常に高価な薬剤であるため、投与は従来の抗リウマチ薬では効果が不十分で骨・関節の破壊が進行する可能性が高い患者さんに限られると思われます。

 以上のことから、インフリキシマブが発売されて以来、リウマチ専門医は副作用発現に充分に注意し、肺疾患などをもつハイリスク患者さんには、使用を避けることにより、重篤な副作用報告は比較的少ないように思われます。

 2009年7月にはレミケードの効能・効果追加が承認され、関節リウマチ用法・用量が変更可能になりました。このことは臨床試験により、既存治療で効果不十分な患者さんに対して、投与間隔の短縮又は投与量の増量が認められました。