「関節リウマチの画期的な製剤」


生物学的製剤

  関節リウマチの関節組織にはサイトカインという蛋白物質が深く関与しています。分子量2〜5万の糖質修飾を受けたポリペプチドです。このサイトカンの活性を抑制する治療法、すなわち、抗サイトカイン療法が開発され約10年になります。
  サイトカインの一種であるTNF-α(Tumor Necrosis Factor α:腫瘍壊死因子)は腫瘍の壊死を引き起こす物質であり、また、炎症性サイトカインとして、種々の炎症性疾患に関与していることから、抗サイトカイン療法として生物学的製剤が次々に開発されました。その代表は抗TNF-α抗体であります。すなわち、インフリキシマブ(商品名レミケード)エタネルセプト(商品名エンブレル)アダリムマブ(商品名ヒュミラ)、ゴリムマブ(商品名シンポニー)です。
  抗サイトカイン療法としてはサイトカインの制御をめざした治療法であり、標的となるサイトカインとしてはTNF-α、インターロイキン(主にリンパ球から生産されるサイトカイン)などがあります。これら炎症性サイトカインを打ち落とすミサイルのようなものの一種が生物学的製剤です。インターロイキン6を阻外するトシリズマブ(商品名アクテムラ)。その効果、リウマチによる炎症が著明に消退していることが実証されています。
  近年TNF-αはインターロイキンなどの他の抗炎症性サイトカインを調節していることが明らかとなり、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどによりTNF-αを抑えれば、関節リウマチの炎症が消退することになります。その結果、劇的な除痛効果が得られ、さらに軟骨・骨破壊の進行を阻止することから関節リウマチの画期的治療法として評価されています。また、これらの機序とは異なる生物学的製剤としてT細胞選択的共刺激調節剤すなわち、
アバタセプト(商品名オレンシア)があります。この薬剤は免疫をつかさどるTリンパ球の働きを抑えてサイトカインが過剰に作られなくなり、リウマチによる関節の病変を抑えることができます。また、最近では新しい抗TNF-α製剤「シムシア」皮下注が発売されています。これで関節リウマチでは7種類の生物学的製剤が使用できるので、患者様にとっては選択肢が増えたことになります。さらに、平成25年8月には最新の関節リウマチ治療薬として低分子の分子標的にした経口投与のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤が認可されました。これは特定の使用成績調査(全例調査3年間)が義務づけられていますのでリウマチ専門医による処方となります。
  しかし、これらの生物学的製剤により、関節リウマチが完治するわけではなく、継続しなければならないことが短所といえます。