アレルギーは免疫の一つのかたちで、人間にとって都合の悪いものをこう呼ぶのだと理解されても差し支えないかと思います。具体的には、例えばバイ菌やウイルス、あるいは身体にとって都合の悪い物質などが身体に入って来たとき、戦いが起こるのですが、免疫はこの戦いのシステムの実行部隊でもあり、総司令官でもあるのです。このシステムでは現在の敵をやっつけると同時にその敵を覚えておいて次回に少しでもその敵が進入しようとすると、たちどころにやっつけてしまいます。このシステムのおかげで、人間は健康な生活をおくる事が出来るのですが、たいして害がないと思われる異物(ホコリや花粉など)も敵とみなしてしまい、人間にとって都合の良くない反応を起こす事があります。まあこれがアレルギーと言った表現をされる訳です。
●どんな治療をするの?基本的には体質なので、本当の意味での完治はやはり難しいと言わざるを得ません。ただ色々な治療を組み合わせる事で、症状をコントロールすることは可能です。いわゆる慢性疾患と呼ばれるものは、みなそうしたものなのです。以下に代表的な治療法を述べます。
1.まず原因となる物質(抗原)に接触しない。
花粉症におけるスギ花粉や、家のホコリ等原因がはっきりしているものについては、出来るだけ接触を避ける努力が必要です。これを怠って、いきなり強引に薬の力や医者に頼るのは問題です。子供さんのアレルギー鼻炎の大半は家のホコリ(ハウスダスト)なのですが、家のなかで走り回ったり、ふとんで遊んだりする事をまず気をつけてみては如何でしょうか?
もちろん掃除を完璧にやればかなり効果的でしょうが、子供さんにさせるとそれだけで悪化してしまいます。2.減感作療法もなかなかのもんですよ
アレルギーの子供さんをお持ちのお母さんなら、一度は聞いた事があると思います。そうです、例の注射です。昔からのことわざに、毒をもって毒を制す。という表現がありますが、原因となっている物質をうすめたものを少しずつ身体に注射して、抵抗力を作ってやるものと理解されても宜しいかと思います。ただ根気がいる方法ですので、几帳面な人(特に母親が)でないとまず脱落してしまいますが、一年中症状がでるハウスダスト等のアレルギーには非常に効果的で優れた方法と考えられます。唯一根本的な治療に近いと言えるでしょう。小学時代は通院もしやすいので、私は積極的にすすめています。
3.一般的なのは、やはり薬かな?のみ薬
大きく分けて、<今の症状をとにかくおさえたらいい>といった薬と、<少しは効果が持続してくれないかな>といった薬の2種類があり、効果の強さもいろいろありますので、個人とその症状に合わせて適宜使い分けます。いわゆるサジ加減というやつで、自分にあった薬をみつけると、本当に幸運ですよ。(院長もアレルギー性鼻炎ですからよくわかります)
- さし薬
上記と同じで、一時的にでも強力に症状をとるか、すぐには効かないが徐々に効果が出始め比較的持続するといったタイプに分類しても良いと思います。普通はこれを組み合わせて使います。ただ、強力な薬の中には血管を収縮させて、鼻粘膜のはれをとるタイプがありますが、使った直後は本当に壮快ですが、すぐに反動がきてクセになり、鼻に悪影響を与える薬もありますので、要注意です(使い方が大事です)。4.手術もありますよ
最後の手段はこれです。とにかくアレルギー性鼻炎で患者さんを悩ませ、最も治療が難しいのは、鼻づまりなのです。程度のひどいものは、のみ薬ではあまり効果は期待できず、さし薬では副作用のこわい強力型が一時的に少し効く位なのです。となると、はれた粘膜を少し小さくしてやらなければなりません。あまり痛くなく、外来でも行え、短時間で効果があがるものは、現在はレーザーで粘膜を蒸発や凝固させる方法か、針電極を利用し高周波電流で粘膜の下の組織を凝固させる方法が良い様です。1回でもかなり鼻づまりがとれる人もいますが、普通は数回行います。これを行うとアレルギーの反応場所も減るために鼻水も減るといったメリットもあります。
●いつまで通院したらいいの?
耳鼻科の先生で、この質問に的確に答えられる先生はあまりおられないのではないでしょうか? 最初に説明したように、基本的には体質ですので、本当の意味での完治は難しいでしょう。しかし一般的には、子供さんの場合でしたら、10才を越えるあたりから、自覚症状が良くなってくる事が多い様に思います。しかし滲出性中耳炎や副鼻腔炎を伴っている様な重症例はひとまず小学生のあいだはずっと治療を続けたほうが良いでしょう。
基本的には、軽症や中等症の場合、症状の強い時は通院したり薬を使ったりし、軽い時はお休みするといったスタンスで良いのではないでしょうか?