●どうして起こるの?先行する急性中耳炎や急性上気道炎(要するにカゼ)が誘因になると考えられています。小さい子供さんは免疫が未熟な事や、耳と鼻とをつなぐ管(耳管といいます)の機能が十分でない事などが大きな原因になっています。また治りにくいタイプには、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の合併しているものが多い様です。
●どんな症状なの?痛くないことがほとんどで、子供さん本人は症状を訴えない場合が多いので要注意です。難聴が主な症状で、程度は様々です。集中力の低下やイライラ、テレビを前で見る、後ろから呼んでも返事をしない等の兆候があれば専門医の診察を受けましょう。
●どんな治療をするの?
まずは保存的治療(手術などしない治療です)を試みます。具体的には鼻の奥にある耳管の入口付近の正常化をはかるために、点鼻やネブライザー(薬液を霧状にして噴霧する器械です)を行います。その前に、鼻汁が多い時は十分な吸引を行い、可能なら鼻洗浄を行っても良いでしょう。次に鼻の状態が良ければ、耳管を経由して空気を耳に送り、奥にひっこんでいる鼓膜を膨らませたり、たまっている液体と空気を入れ替える事を試みます。また耳や鼻の状態を良くする為に、アレルギーの薬や抗生物質、液体を流れやすくする薬等を使いますが、長引く症例や重症の場合は次の鼓膜切開を行います。
●鼓膜切開は必要なの?保存的な治療で改善しにくい場合は、我々耳鼻科医は積極的に鼓膜切開を行います。以下に鼓膜切開の長所と短所をまとめてみました
長所:1.聴力が短期間に改善し、子供さんが明るくなります。
2.急性化で穿孔を起こす場合に比べ、鋭利なメスによる
切開創の方が治りがきれい。
3.治りが早い。
短所:1.小さい子供さんの場合、暴れてかなりむつかしい。
2.耳鼻科医や白衣に対して恐怖心を与えてしまう事がある。
3.切開という内容に理解を示さない母親が比較的多い。
短所は我々の努力で改善できるものと考えています。現在は顕微鏡を使って、明視下に鼓膜の安全な場所のみを切開するので、合併症はほとんどありません。切開した傷はだいたい1週間もすればきれいに閉鎖します。
●鼓膜チューブとはどんなもの?難治性の滲出性中耳炎では、鼓膜切開を何回行っても、すぐに切開創が閉鎖し、また症状が悪化する場合があります。この様な例では鼓膜にチューブを留置し、しばらく中耳の換気を行うと非常に良い結果を得る事が出来ます。聴力は良い状態を維持出来ますし、急性化を起こしにくくなりますので、患者さんにとっての生活が向上します。期間は出来るだけ長い方が好ましいと思われます。プールは耳栓の使用で可能です。所用時間は鼓膜切開に慣れた子供さんの場合、鼓膜切開に要する時間プラス数分です。当院では2才の子供さんでも局所麻酔で行った経験があります。しかし理解を示さない子供さんは小学生でも局所麻酔では不可能です。