よりよい教育と子ども・青年の未来をめざすとりくみの一部をご紹介します。
2023年度のとりくみ
私たちのための社会にしよう
主権者は私たち! 冬の高教組教研 菱山南帆子さんと生理革命委員会から学ぶ
高教組は1月28日(日)、おかやま西川原プラザで冬の高教組教研を開催し、全体会と分科会に組合員以外を含む38人が参加しました。 全体会では、総がかり行動実行委員会共同代表の菱山南帆子さんを講師に招き、「私たちのための社会にしよう。主権者は私たち」と題して講演を聴きました。菱山さんは、1989年東京八王子生まれで、小学校5年生の時に担任教師の障害者差別発言に対して授業ボイコットを組織した経験から声を上げることの大事さを知り、中学1年生の時にはイラク戦争反対運動に参加しました。講演では、現在が「新たな戦前」の情勢となっていること、より共感を広めていくためにはゆとり世代やZ世代など若者の感性や思考の特性を理解する必要があること、ジェンダー平等と命と暮らしが守られる社会を選択するべきであることが語られました。
子どもの権利条約分科会では、「岡山県内の公立高校のトイレにトイレットペーパーと同じように生理用品を設置する」という目標を掲げて活動する「生理革命委員会」の生徒2名(岡山後楽館高校)を招き、アンケートやクラウドファンディング、県議会への陳情などのとりくみについて学び、交流しました。
参加者感想 若い人たちの運動や選挙、政治への参加が少ないと思って、この数年(十数年?)これからの社会は大丈夫かと思うことが多いのですが、新しい参加の仕方なども現れているのかなと、今日の菱山さんのお話を聞いて思いました。弱い立場の人を排除しない、みんなで信頼して安心できる社会を作っていけるようにがんばりたいと改めて思いました。
冬の高教組教研 課題別・教科別分科会報告
数学分科会
内田康晴さん(岡山朝日)が「65才、あとの人に伝えられる精一杯のささやかなすべて」と題して、ベクトルの分点公式の奥行き、絶対値不等式の同値変形、相関係数はつまりアレ、一番やさしい特殊相対性理論、教科書の漸化式の節は要注意などについて報告し、参加者で感想を出し合いました。【岸本 幹雄さん/玉野】
平和分科会
赤座 匡さん(奈義町在住の退職教員)が「陸上自衛隊日本原駐屯地・演習場と過疎地奈義町」と題して報告し、質疑・討論を行いました。赤座さんは、奈義町は財政的にも地区活動の面からも駐屯地に依存せざるを得ない状況で、地元の住民の問題意識は決して高くないが、未来の奈義町を考えるためにも、まずはよく知り、学ぶ機会を持つことが求められると語りました。【市場 美雄/東備支援】
社会分科会
竹井久義さん(高梁城南・鴨方)が公共「政治参加」と世界史探究「ユダヤ教徒とキリスト教」について、土屋篤典さん(宇治)が「地理Aと小学校社会科(中学年)の交流から見えたこと」と題して、それぞれ授業実践を報告しました。新科目「公共」は以前の「現代社会」と比較して内容面が薄く道徳的な傾向を持つため、指導に当たる教員のあり方次第で、権利の主体としての生徒を育成できるかが問われそうです。【柴田 英範/倉敷古城池】
冬の発達保障講座
古澤弘之さん(岡山東支援)が「思いを伝える力の獲得を目指して」と題して、田邊愛果さん(岡山南支援)が「児童の『好き』から始める日常の支援」と題して、青山 敬さん(岡山南支援)が「つながりを紡ぐ授業づくり〜コミュニケーション力を伸ばすために」と題してそれぞれ報告しました。討論では、子どもの思いを大切にすることの重要性や、子どもの変化や心を見極める力の大切さを指摘する意見が多く出されました。【青山 敬/岡山南支援】
2022年度のとりくみ
ウクライナから平和を 校則から生活指導を考える−冬の高教組教研
高教組は1月29日、おかやま西川原プラザで冬の高教組教研を開催し、全体会と分科会に組合員以外を含む49人が参加しました。
コロナ禍のため、一昨年は分科会のみの開催となり、昨年は中止を余儀なくされましたが、久しぶりに本格的な教研を行うことができました。
全体会では守田敏也さんを講師に招き、「核の問題から解き明かすウクライナの今、世界の今、私たちの今」と題して講演を聴きました。守田さんは京都市在住のジャーナリストで、宇沢弘文さんのもとで社会的共通資本について学び、核問題を中心に研究を進めています。
守田さんは、ドイツの医師団とベラルーシを訪問した経験があり、ベラルーシもウクライナも、1986年のチェルノブイリ原発事故の影響を強く受けていることを紹介しました。また、ウクライナは歴史上、ロシアだけでなくポーランドやドイツなどの周辺諸国やユダヤ人との深いかかわりがあり、単純にロシアと英米との関係だけで問題をとらえることはできないと語りました。 守田さんは、ロシアの侵攻は許されないが、NATOも国際法違反の存在であることを指摘し、ウクライナに戦車などの武器を送るのではなく、即時停戦を求めるべきであると述べました。また、国家と民衆を区別するべきであることも強調されました。
参加者感想
ロシアとウクライナの問題は決して他人事ではない。中国と台湾、チベットなど近隣諸国にも戦争の火種は多くある。その中で、核抑止論が崩壊した今、子ども(生徒)たちに戦争のおろかさや平和の尊さを伝えていかなくてはならない。日本を守る=軍事費を増やすことではない。再生可能エネルギーの開発、食料自給率の改善などやるべきことは山積みだ。岸田政権には、新しい視点を持ってもらいたい。
【藤井 崇哉さん/早島支援】
課題別・教科別分科会の報告
生活指導分科会
吉田優子さん(株式会社アッテミー代表)の録画によるミニ講演「今どきの高校生の身だしなみと校則について」を視聴した後、井上ゆみさん(興陽高校生徒課長)の特別報告「興陽高校の校則改定のとりくみ」を聴きました。井上さんは、生徒会が生徒と企業に対して、頭髪など身だしなみに関する校則についてのアンケートをとり、その結果をふまえて問題点を整理して校則の改定案をつくり、教員との意見交換会を経て改定していったというとりくみを報告しました。分科会参加者は、吉田さんを含めて14名でした。 【岸本 幹雄さん/玉野】
平和分科会
竹井久義さん(高梁城南)から「今の日本はどのように戦争に備えているか」と題して、「現代社会」での日本国憲法の平和主義、憲法第9条、日米安保条約についての授業実践の報告がありました。また、全体会で講演された守田敏也さんも交えて、ロシアとウクライナの戦争をどうとらえるか、憲法第9条や国際紛争をどう取り扱うか、参加者で議論しました。分科会参加者は7名でした。
【土屋 篤典さん/宇治】
国語&図書館分科会
国語分科会では、中山美加さん(岡山城東)から『「言語文化」言語活動試案』というテーマで1年次の古典学習の実践報告がありました。『伊勢物語』をベースに複数教材を組み合わせたり、クラスルームで課題を送ったりしながら、作品の歴史的背景、文化的背景への理解を深めながら、古典の世界へ深く親しんでいく様子が伝わる報告でした。
図書館分科会では、田中麻依子さん(山陽学園司書)から、図書委員会の探究活動について2年越しの報告をしていただくことができました。ビブリオバトルなどの校内行事、漱石研究、石井十次研究、桃太郎研究など、校外へのフィールドワークをふまえたテーマ研究で大きな成果を上げておられました。分科会参加者は12名でした。 【平松 玲子さん/倉敷南】
社会分科会
鈴木祐子さん(岡山後楽館)が「高校生によるSDGs出前授業」と題して、現代社会の重要な問題について高校生による中学生への出前授業を行い、SDGsの実現を中心に考えさせる実践を報告しました。また、藤原 真さん(倉敷南)が「近況報告、実力テストと教科通信」と題して、「世界史B」の実力テスト問題と教科通信を紹介し、進学校における社会科の位置づけや授業における苦労話などを報告しました。分科会参加者は7名でした。 【土屋 篤典さん/宇治】
数学分科会
石井 治さん(総社南)が「新教育課程の現状」と題して、新旧教育課程の変更点や大学入学共通テストの出題分野の変更点などを報告しました。これを受けて、参加者全員で、それぞれの学校の状況について交流しました。分科会参加者は7名でした。 【岸本 幹雄さん/玉野】
冬の発達保障講座
杉谷綾子さん(岡山南支援)が「一人一人の生徒のやる気を導く指導について〜ICTを利用して」と題して、iPadのアプリを手軽に利用できる環境を作るとりくみについて報告しました。また、古澤弘之さん(岡山東支援)は「主体的に人や物に働き掛けながら活動するために〜音楽や生活・自立活動などの実践から〜」と題して、生徒が主体的に動けるようにICTを活用するとりくみについて報告しました。分科会参加者は7名でした。 【青山 敬さん/岡山南支援】
リアルな「夏」復活
−夏の高教組教研と教育のつどい2022in高知−
夏の高教組教研は、コロナ禍のため2020年、21年と2年続けて開催できない状況が続いていましたが、今年は、8月6日(土)に国語分科会が開催され6名が参加しました。8月11日(木)には社会・平和・子どもの権利条約合同分科会が開催され、7名が参加して高校新科目について考えました。
国語分科会は、一昨年度まで岡山後楽館高校にご勤務されていた熊代一紀先生にこれまでの教師生活をふりかえるご発表をしていただきました。熊代先生は、かねてより教育相談に関する造詣が深く、在職中に兵庫教育大学大学院でカール・ロジャースの教育論をご研究なさり、ご退職後はスクールカウンセラー等多方面でご活躍していらっしゃいます。国語の授業にも教育相談の観点を生かしておられ、この日も「国語科教育と教育相談―理解と尊重のためのツール」と題してお話しして下さいました。
初めに、「無条件の肯定的配慮・共感的理解・自己一致」が大切だと示されました。先生が「生徒に甘く、何でも許す(受け容れる)のではない。共感的理解とは、この学習が学習者にどう見え感じられているかを、学習者の内面から理解するということ」とおっしゃったのがとても新鮮で、「受容と傾聴重視」という教育相談のイメージがあっけなく崩されました。これまで、いかに授業を生徒に理解させるか、ということにばかり意識がいっており、学習自体がどう見えているのかなどと考えたことがありませんでした。これまで生徒に授業アンケートをすると「私の理解に応じて進めてくれている」という項目が一番悪かった理由がわかったような気がしました。
具体的な取り組みとしては、学習契約書を作成させる「プロジェクト・アプローチ」という提案が大変魅力的で、特に自己評価用紙については質問も相次ぎました。生徒それぞれが好きなことに取り組んでいるようなので、到達度や評価が心配になりましたが、しっかり話し合い教師と生徒の双方が納得しながら進めていくことで、主体性が育まれ、見通しを持って学べるそうです。
本来は1月の冬の教研でお願いしていたのですが、コロナ禍のため延期となっていました。参加者は少人数でしたが、若手からの熱心な質問もあり、熊代先生のご実践が次の世代に伝わったと感じることができ、みんなで考える有意義な夏の一日となりました。
【平松 玲子さん/倉敷南】
また、みんなで21世紀の未来をひらく「教育のつどい」教育研究全国集会2022in高知が、8月18日(木)〜21日(日)、オンライン併用で3年ぶりに現地開催されました。法政大学前総長の田中優子さんによる講演「多様性を包み込む社会へ」をはじめ開会全体集会は、9月30日までYouTubeで見逃し配信されていますので、ぜひご覧ください。 https://youtu.be/8rU7CIpu4mg →